桜咲く未来

「この公園の桜の開花宣言ね!」
ラジオ体操が始まる前のこと、
ウォーキングをしていたオバ様方が
ソメイヨシノを見上げて言った。

その言葉にすぐに反応してしまい、
ボクもまた桜の樹を見上げてしまう。
枝の先っちょに小さな花が咲いている。
まだ寒いので白い息が花へ上がっていく。

これからどれくらいで満開になるのか。
一週間か十日くらいはかかるかな。
この寒さならもっとかかるかもしれない。
今年は入学式に満開になるかもしれない。

暖冬暖冬と騒がれるようになって、
桜もどんどん早く咲くようになった。
ボクらのときは入学式が満開だったけど、
いまや卒業式に桜が満開となることが多い。

嬉しいけれどちょっと淋しい卒業式。
卒業証書を抱えている学生服の君に、
ハラハラと桜の花びらが舞い落ちる。
美しくも儚い未来を思ってしまう。

入学式に桜が満開だとそれが変わる。
美しく華やかな未来が待っているよう。
たとえ桜の花びらが舞い落ちたとしても、
儚い人生を思い浮かべることはない。
子供たちの将来が桜咲くと信じられるのだ。