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本間文子@小説【桜の園】光文社より発売中!
2023年7月26日 22:13
■くらげの花やけに明るい満月の夜だ。アルバイト先のカラオケ店からの帰り、奏(かな)はさらりと晴れた夜の円山町を、ダリアのコサージュのついたサンダルで歩いていた。足元から顔の高さまで、くらげの花がふわふわと風に舞う。くらげの花は、月光を背負って上空を泳ぐイワシの群れに反射して、鳥肌が立つほど美しい。西日や朝日もまばゆくていいが、鮮明な月光ほどくらげの影を確かに描くものはない。サメが泳いでい