見出し画像

作ることについての話

感情はナマモノだから、新鮮なうちに書き留めておかなきゃすぐ忘れちゃうなあと常々思います。なので、何か思ったらすぐiPhoneのメモに書いておきます。本当にすぐ忘れちゃうので。この間メモを見返してみたら、今年の3月まで携わっていた卒展のSNSアカウントで掲載予定だったインタビューの文面が出てきました。

このインタビューでは、私が学生時代にどんな作品をどんな気持ちで作ってきたかが綴られています。作りまくってた時にじっくり内省して書いたものなので、なんだろう、ちょっと神経質で、かつ心の奥底ではいつでも戦闘態勢でメラメラした何かを感じる…ような気がします。そんなメラメラがにじみ出たこの文章を最後まで読んでもらえると嬉しいです。

____________________________

大学ではどのようなジャンルの作品を中心に制作してきましたか?

正直なところ「このジャンルです」と断言できないんです。

これまで、センサーを用いて童話を影絵で表現した作品、パンを素材にしたタイポグラフィ、消費行動を見直す為の展示計画、古典学習の為のARコンテンツ、食に関する知識を通して家族の時間を共有できるカレンダー、時間という概念をデザインした立体作品、人が起こす音をオノマトペ として描写し動きにリンクさせた映像作品などを制作してきました。

画像3


この通り、制作してきたものは本当にバラバラで、どのようなジャンルの作品を作ってきたか自分でもわかりません。


描画やプログラミングなど何か一つの分野が得意であることが強みというなら、私にはそれがありません。
ですが情報を伝達するにあたって、もちろんまだまだ探求の余地はありますが、適切なメディアを選択肢することはできるので、様々な表現方法で制作活動を行ってきました。


そのジャンルに興味を持ったのはなぜですか?

0から1を作ることにあまりあまりそそられない性格で、絵を描きたい、グラフィックを作りたい、映像を作りたいなど表現したいことは私自身の中にありません。

画像4

例えばアルファベットや社会問題など、もともとある情報をどうやったらうまく面白く何より適切に伝達できるか、そこを創造していきたいという欲求があります。

伝達するメディアを創造あるいは選択する段階が、制作するにあたって面白がってとりかかるところであり、何より重要なところであると思っています。
この考えが根付いているので、自ずと作品によって違った表現になりました。


作品全体に一貫しているテーマや方針のようなものはありますか?

『「つなげる」をおもしろく』というテーマを常に掲げて制作を行っています。
私が制作においてもっとも大切にしていることは「つなげる」を意識することです。

当たり前のことですが、届けたい情報と伝えたい相手の二つが存在しないとデザインは成り立たないと思います。
それを踏まえた上で、人と何かの情報をわかりやすく、かつ面白くつなげることが私の中の理想のデザインの役割だと考えています。
この役割を果たすには、伝えたい情報の特性や伝えたい相手がどのような人かなど、双方に配慮を払い、適切な表現で制作しなければならないと思います。
学生生活で幅広い表現を選択してきた意味を忘れずに、今後の制作でも形態にとらわれない新しい「つながりの形」を作っていきたいと思います。


卒業制作作品ではどんなことに注目して見てほしいですか?

展示のコピー

卒業制作では、銭湯においての温まることをテーマに映像と空間を制作しました。
この作品で伝えたいことは、私が銭湯に対して思っている二つのことです。

一つ目はインターネットで常に他者と繋がれる現代において、なかなか稀な一人でぼーっとできる場所であるということです。
意識しなければスマートフォンを手放せなくなっている今、本当の一人になっている時間は少なくなっていると感じます。
そんななか銭湯は、否が応でも電子機器と離れる場なので、必然的に他者とのつながりがなくなります。その為、ありのままの自分の輪郭が見える希少な場所であると私は考えています。

映像一部

二つ目は他者と繋がれるものと離れて独りになったとき、特に話もせずに混じり合う人々の存在が、ほのかに心を温かくさせるということです。
以前、一人で銭湯に行った際にお客さんはおろか番台さんすらいないことがあり、なんだか怖くて帰宅した経験がありました。そのときに、普段は気にも留めない”誰か”の存在が一人で入浴しに行く私に、心が温まる安心感を与えてくれるのだと気づきました。


この作品を通して、一人になることの心地よさと、独りではない、誰かしらが存在する空間の豊かさを感じていただけたらとても嬉しいです。


2020年2月24日

______________________________

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?