#241 柔軟剤・洗剤、など匂いのこと(苦しんでいる人が減ることを願い、全文無料投稿とします)
好きな日に連絡なしで働くエビ工場、パプアニューギニア海産代表の武藤北斗です。
今回はいつか書きたいと思っていた洗剤や柔軟剤のことです。1年以上かけ試行錯誤というか、悩み・もがいていました。最終的には強引な収束を迎えそうではありますが、経過と現状をひとまず報告します。
洗剤や柔軟剤の匂いを気にし始めたのは、今思うと5年以上前になると思います。まだ茨木市の北部市場内で営業していた頃です。当時は何人かの従業員のことを『洗剤を変えたのかな?』と思う程度ではありましたが、印象に残っているので少しは問題意識をもっていたようにも思います。
それから数年。匂いが強くなったと感じる人が増えはじめました。徐々に変わるのではなく一気に変わる印象なので、洗剤を変えたり柔軟剤を使い始めることがきっかけではと思っています。
最初は個別に『柔軟剤の匂いがちょっと強いので気をつけてください』程度だったように記憶しています。しかし従業員数が増えたこともあり、匂いがする人は増え、しかもどんどん強くなっていきました。
こうなると全体で共有する必要があると感じミーティングでも話すようにしましたが、一時は弱まるけども次第に強くなり、またミーティングで注意するの繰り返しでした。
これでは何の解決にもなっていないと感じ始めた頃、次第に従業員からも匂いに関しての指摘があり、1年ほど前から組織全体の問題として捉える必要があるなと考えました。
問題だと考えている事はいくつかあります。
まず一つは商品の品質に影響するということです。エビを選別する際にエビの匂いも鮮度を判断する基準にしています。しかし洗剤や柔軟剤の匂いが強い人が出社すると判断がしにくいのです。
2つ目は気分が悪くなるという人が出始めたことです。私自身も気分が悪くなったり鼻がムズムズしたりとかなりストレスを感じるようにもなりました。自分を含め、誰かが体調を崩すようなことを心配しました。
そして3つ目が移香に関して。これは今年になって問題を感じ始めましたことです。柔軟剤などの匂いが商品にうつり、それがお客様のもとまで届いてしまうことを知ったのです。うちは工場の全てを無添加石けんで洗浄する等、エビに関しては徹底した品質管理しているのに最後のつめが甘かったと反省しています。
マイクロプラスチックの問題も含め、天然エビを販売している私達は環境のことや体のことをもっともっと真剣に考えていかなければと思います。
さて、それではどのように注意喚起してきたかも少しお話したいと思います。これから匂いに関して対応する組織の参考になればと思います。
匂いを指摘するというのは本当に嫌なものです。言われる方も嫌だとは思いますが、言う方も本当に心底嫌な気持ちになります。
特に洗剤や柔軟剤の匂いというのは使っている本人にはほぼ自覚がありません。基本的には家族も含めて着ているもの全てからその匂いがしていますから、感じなくなって当然だとは思いますが、自覚が少ない人に注意することは本当に辛い作業なのです。
思い切って会社で洗濯しようかとも思いましたが、白衣だけ無臭でもその下に着ている衣服の匂いが強ければ意味がないのでやめました。
最初はとにかくミーティングで注意をしたり、個別に注意したりの繰り返し。直後は少しよくなる人もいるけれど、どんどん元に戻っていきます。きっとすすぎの回数や洗剤の量などを調整するのだと思いますが、根本的な解決にはなっていないなと感じていました。
しかしこの注意の連続というのは関係性を悪くしていきます。私自身も匂いのする従業員に対して悪い感情をもち始めていることに懸念を感じていました。そして何より注意する前のあの嫌な気持ちを繰り返すことに心底嫌気がさしてしまい、これまであえて避けていたことを試すことにしました。
それは口頭ではなくメールで端的に注意するということです。
私は対話をとても大事に考えています。伝えるのが嫌だと思うことほど顔をみて直接と思ってきました。ですからメールで伝えることには抵抗があったのですが、匂いに関しての注意の繰り返しにはあてはまらないような気がしたのです。
やはり自覚がない人とのやり取りでは対話自体が成立せず、ただただ結果を伝えるためにお互いが嫌な思いをするだけの場になってしまい、対話をする場をも破壊しているように感じたのです。
そして対応策を提案するのもやめました。
以前は例えば「柔軟剤は使っていません」と言われたら、「洗剤はどうしてますか?」とか「すすぎはどうやってますか?」と話をしていたのですが、これだと私にやらされている感じが強すぎてよけいに関係がぎくしゃくしますし、かなりプライベートなことを聞く必要がありセクハラ・パワハラの類に当てはまりそうな危険性も感じていました。
ですから今年に入ってからは「匂いが強いので何か対応してください」と、それだけをお願いするようにしました。ようするに対処法は自分で考えて下さいということです。冷たいように思われるかもしれませんが、やはり自分事として考えなければ問題の本質を理解できないとも思います。
こんなことを続けてきたのですが、やはり最終的にはこれだけでは全てを改善することは難しく、体調を悪くしそうな人がでてきたこと、従業員間で隔たりができそうなことを重くとらえ、経営者として何か明確なラインを作るべきだと考えました。
しかし素人の私は何が具体的なラインになるかすら思いつかず、そこを探ることから始めました。
そこで、まずは従業員がどんな洗剤を使っているのか調査。
最初は『使っている洗剤をできれば教えてほしい』という文面で全員にメールをしたのですが、返ってきたメールを見ると明らかに洗剤と匂いに関連がありそうでした。
プライベートな問題かもと躊躇していた私でしたが、ここまで関係性が見えてくるのであればと今度は『使っている洗剤と強い匂いに関連性がありそうなので、全員使っている洗剤を教えてほしい』と話をしました。
すると、やはり関連性がはっきりしたのです。一番の発見は強い匂いがする人たちが同じメーカーの同じ商品を使っていたのです。しかし不思議なことに、匂いの感じでは同じ洗剤とは全く分かりませんでした。
正式な調査をしたわけではないのでメーカー名などは伏せますが、従業員のプライバシーを尊重したうえで少し気づいたことを紹介します。
まず9割以上の人は柔軟剤を使用していませんでした。そして匂いがする人も柔軟剤は使っていませんでした。私に繰り返し注意される中で、洗剤だけに変えてくれていたのです。このことはとても感謝しました。
ですからうちの場合は柔軟剤ではなく、洗剤が問題だったのです。
そして先ほども書きましたが匂いが強い人が使っている特定のメーカーと商品が一致しました。ですから誰が使っているなどの情報は伏せたうえで『アンケートの結果から、匂いが強いのは〇〇です。これは使うのをやめてください。』とハッキリお願いしました。
そして逆に匂いがしないであろう洗剤も候補が出てきましたので『匂わないのは△△です。匂いを注意されたことのある方はなるべくこれに変えてください』とこちらもお願いしました。
ところが、この△△の洗剤に変えた後も、匂いが続く人がいました。柔軟剤も使わないし、シャンプーなども変えてくれましたがそれでもまだ匂うのです、しかも強く。本人も家族も理由が分からず途方にくれてしまいました。
そこで私としては最終手段で、会社の掃除で使っている無添加石けん(シャボン玉石けん)さんの洗濯洗剤を少しお分けしました。するとすぐに匂いがなくなりました。
こうなると『匂わない△△』という前提が崩れたことになります。
そこで他の従業員さんに△△も絶対に匂いがしないというわけではないようだということをメールし、やはり匂いを注意され続ける人は無香料をうたっている商品に変えるしかなさそうだと伝えました。
何が原因で△△を使っても1人だけが強い匂いを発していたのか今だに理由が分かりません。ちなみに使用量もすすぎ量も注意してくれたそうですし、シャンプーや飼っている動物のあれこれも探ってくれたのにです。
その後も数人は注意を繰り返しながらではありますが、現在はほぼ匂いが無くなりました。とても作業がしやすくなりましたし、他の従業員も匂いに悩まされることがなくなりました。
そして勉強する中で洗濯にはコツがあるのだということに気づきました。こちらのtweetが分かりやすかったのでご紹介しておきます。
最後に今回のことでもう一つ重要なことに気づきました。
SNSで発信したり勉強する中で、柔軟剤や洗剤の匂いで苦しんでいる方が本当に沢山いるということです。これまで平穏に暮らしていた人も突然体調を崩されていることを考えれば、これは誰にとっても他人事ではありません。私は人を苦しめたくないし、自分も苦しくなりたくありません。であればやることは一つだと思います。
私達は添加物などを一切使用せず、天然エビでエビフライなどを作っており、工場の洗剤は無添加石けんのみを20年以上使用しています。遅ればせながらではありますが、気づいたからには匂いのことについて考え勉強し、問題に取り組んでいこうと思います。移香、香害、マイクロプラスチック、化学物質過敏症、様々な点から真摯に取り組んでいきます。
そして個人的な考えとしては、化学物質過敏症という言葉が分かりやすいのであえて取り上げますが、『過敏』という言葉が本当に適切なのだろうか?と思ったりもします。人として生きものとして正常な健康な感覚とはなんなのか。そこから考えていきたいと思っています。
パプアニューギニア海産
代表取締役工場長 武藤北斗
・水までこだわった天然エビフライ!!!!
・エビコロフライは一番人気!!
・『にんらじ』でもちょっと話したよ。この位気軽にいろいろ話していくことから始めるのも大切だと思う。
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争わない組織が答えだった
『フリースケジュール』『嫌いな仕事作業禁止』など新しい働き方を10年以上続けているパプアニューギニア海産。代表取締役であり工場長でもある武…
お小遣いは自分で稼ぐというのが武藤家流。サポート感謝です。