何も持っていない自分でも、世の中を少しだけ良い場所にできるかも知れない
株式会社HOKUTOとは
医学情報の入手・保存・検索ができる医師向け臨床支援アプリHOKUTOを開発する医療系スタートアップです。2021年12月にシリーズAにて8.25億円の資金調達を実施し、累計調達額は11.25億円(2021年12月末日時点)となりました。
2022年3月時点でHOKUTOの医師ユーザーは4万人を突破し、全国の医師の約8人に1人に使われるアプリとなっています。
はじめに
医療IT領域では、輝かしい経歴を持った経営者が多く活躍しています。
医師を始め、トップファームや大手製薬メーカーの出身者など、高度な専門性と豊富な経験を備えた方が経営の舵を取り、医療業界に新たな価値を生み出し続けています。
HOKUTOは医療IT領域のスタートアップとして医学生と医師を対象とした2つのプロダクトを開発、医師会員数は4万人(全医師の約13%)を突破、この領域で一定の評価を頂けるようになりました。
一方、代表の五十嵐は私立文系卒の学生起業家でまだ20代の経営者です。この領域における多くの経営者と違い、医師でもなく、輝かしい経歴も豊富な経験も持っていません。
私たちは「より良いアウトカムを求める世界の医療従事者のために」というミッションを掲げていますが、もしかするとそれは何も持っていない若者の、身の程知らずの無謀なチャレンジと捉えられるかも知れません。
五十嵐自身は「自分の能力を全く信じていない」とよく口にします。自分の能力を信じずに何を信じるのか、どうやってミッションを達成するのか、そもそもなぜ医療IT領域で挑戦を始めたのか、といったことを伺いました。
株式会社HOKUTO 代表取締役 五十嵐北斗(いがらし ほくと)
1994年生まれ。北海道出身。医師の家系に育つ。中央大学商学部在学中の2016年に株式会社HOKUTOを設立。複数の事業をピボットしながら家業である医療領域に参入。
無謀だとしても、医療に貢献したいと思った
ーまず始めにお聞きしたいのが、なぜ医療IT領域で事業を始めたのか、についてです。この領域の経営者は医師であったりトップファーム出身者といった方が多い中、私立文系の学生起業家が事業を興すというのは無謀なチャレンジのようにも思われます。
五十嵐:自分自身が医療IT領域で事業を成したいということについて、「無謀だ」とか「無理だ」といった言葉は何度投げかけられたか分かりません。
この領域での私の最初のチャレンジは、医学部就活生と研修先病院との間にある情報の非対称性を無くすことでした。全国の医学部を行脚し、何百人もの医学生と会い続ける中で、自分よりも圧倒的に賢い人達から無理だと言われ続ける日々が続きました。
正直、心が折れそうになることは何度もありました。医学生の課題を解決したいと思ってはいるものの、自分自身は文系の私大生なので、当事者たり得ないと見なされることも多く、大きな隔たりを感じることもありました。
しかし、無謀だとしても、当事者でなかったとしても、「医療に貢献したい」という思いだけは持ち続けていました。
ーそう思えたのはなぜでしょうか?
五十嵐:前の事業に失敗して何もかも失ってしまったときに、自分が本当に貢献したい領域は何だろう、誰の役に立ちたいんだろうと深く考えました。その時に一番に浮かんだのが、医師である父の顔でした。何十年も医師として臨床現場に立ち続け、多くの患者さんを救ってきた父は身近な存在でありながら、憧憬の対象でもありました。また、叔父が医師で弟が医学生であったりと親戚に医療従事者が多く、自分が人生を賭けてでも貢献し続けたいテーマは医療しかないとそのとき強く思ったのです。
何も持っていない自分でも、できることがあるかも知れない
ーそんな背景があったんですね。とはいえ、具体的にどんな形で貢献していけば良いのか、という点については葛藤があったのではないでしょうか。
五十嵐:本当に自分にできるのかという葛藤はありました。しかし、多くの医学生に会う中で、どんなに頭の良い人でも、本当は解決したいのにそこまで労力を割けない問題があるということに気づいたのです。
先程の医学部就活生と研修先病院との間にある情報の非対称性の問題についてですが、自分は地道に全国の医学部を周り、直接研修病院の口コミを集めることで一つの解決策足りうるプロダクトを作ることができました。
スキルや経験がなくても、医師や医学生でなくても、地道な積み重ねを通して医療に貢献できるかも知れないと思ったのです。
そこで次は医師の役に立つプロダクトを作りたいと思い、臨床支援アプリHOKUTOの開発に着手しました。
自分の能力を信じず、優秀な仲間を信じる
左からHOKUTO取締役でプロダクト開発の責任者である山本、五十嵐、HOKUTO取締役で事業開発全般を担う現役医師の山下
ー口コミサイトから臨床支援アプリとなると、プロダクト作りのハードルがだいぶ上がった印象を受けますね。
五十嵐:そうですね。臨床支援アプリの提供を通して医療に貢献する、ということでミッションの難易度は数段上がったと思います。明らかに自分のキャパシティを超えているんですね。ではこのミッションを達成するために何が必要かというと、やはり重要なのは一緒にやってくれる優秀な仲間なんです。
私自身、自分の能力を全く信じていません。多くの医師や医学生、経営者や投資家といった優秀な方々と会う中で、自分より圧倒的に優秀な人は世の中に星の数程いるということに気づかされたんです。
であれば、優秀な人を見つけて仲間になってもらうことが代表としての自分の仕事だと思ったんです。
幸い、現役医師の山下が加わって事業開発全般を推し進めてくれたり、メルカリ創業メンバーの山本がプロダクト開発の責任者として加わってくれたりと、様々な幸運が重なって、今では本当に優秀な仲間に恵まれていると感じています。
今の自分のテーマは、社内での自分の意思決定の数を減らすことです。経営者として、自分の能力を信じることよりも、優秀な仲間を信じることの方が大事だと考えています。彼らが主体的に意思決定することができるように大胆に権限委譲しており、個々人が最大限パフォーマンスを発揮できるような組織作りに励んでいます。
自分にできることで、世の中を少しでも良い場所に
ーなるほど。医療領域というと特別なスキルや経験、専門知識などが必要になりますが、貢献という点では違うアプローチもあるのですね。
五十嵐:そうですね。もちろん自分自身常に知識のアップデートは行なっています。しかし、やはり医師といった専門家にはどうしても敵いません。臨床を通して患者さんを救うということも自分にはできません。
それでも、地道な積み重ねや仲間作りを通して事業を成長させ、医療に貢献することはできると考えています。自分たちの活動を通して医療業界に少しでも良い変化を作っていきたいですし、その結果世の中が少しでも良い場所になるよう微力ながら力を尽くしていきたいと思っています。
一緒に働く仲間を募集しています!
株式会社HOKUTOでは、「より良いアウトカムを求める世界の医療従事者のために」というビジョンに共感していただける仲間を募集しています。ご興味ある方は是非弊社採用ページをご覧ください。採用ページ:https://corp.hokuto.app/recruit
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