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疑常辞書

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常識を、疑え。日常を、疑え。「常態」は「死」である。
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記事一覧

やみはやさしい

やみは やさしい つよくも よわくもならない やみは やさしい さしたり あたったりしない やみは やさしい いつだって、めをとじれば。 ずっと、きみのそばにいる。 やみがあるから ひかりがみえる

舞台制作者と芸術と傷と

noteを週に一回更新するのだと、10月の頭に高らかに宣言してみたはいいものの、既に二週間ほど経過してしまった。 鈴木の意思は弱いし、そもそも人間は弱い。 この数年間、制作として、アートを通した連帯、社会の繋がりのようなものをどうやったら作ることができるのかを探ってきたのだけれど、連帯の道を進んでいくと、結局、みんなでカレーを食べるというところに落ち着かざるをえないのではないかと思ってしまう。 連帯とは逆のベクトル、社会の中で隠蔽された傷を可視化し、社会の固定された構造にカ

風の谷のナウシカ

 私が幼稚園に通うようになった頃、金曜ロードショーで風の谷のナウシカを見たときの衝撃は今でも忘れられません。ろくに言葉も考えも持たない私が、画面にくぎ付けになりました。よくわからないけど、感動したのです。なにがすごいのかわかりませんでしたが、なぜか全てが理解できたようにも思えました。  虫が好きでしたし、森が好きでした。巨神兵という大きな人間が世界を焼き尽くす絵が怖くて、それが骨になって転がっていることに不思議と美しさのような寂しさに似たものを感じました。ナウシカはかっこよく

「思考や記憶、精神の正体」という話

カエルとフランケンシュタインとヒト フランケンシュタイン。一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。電気で動く人造人間です。フランケンシュタインをただのオカルト小説と思っている人も多いかも知れませんが違います。フランケンシュタインは、とても科学的な小説です。フランケンシュタインという小説は何故生まれたのか、そのきっかけになったと言われている実験があります。その実験は、ルイージ・ガルヴァー二という物理学者が行った実験です。実験の内容は、死んだカエルの足の筋肉に電気を

¥300

社会的ルールからの逸脱の是非。なぜ冒険するのか

社会はルール(規範)によって動いている。ルールにも種類がある。一つは法律。法律とは、いま生きている人間が現在と未来のために、自分たちの都合によって適宜修正させながら、社会を円滑に動かしていくもの。 もう一つは憲法というものもある。憲法とは、今を生きている人々ではない、過去の人々が長く未来に亘っても変えるべきではないと思われる、基本的なルールとして定めたもの。例えば「表現の自由」や「基本的人権」など、いま生きている人、特に為政者の都合によって簡単に変えてはいけないものを憲法と

「笑い」と「恥」の境界線をずらせ!

"異文化を知れば、人生がほんの少し軽くなる。" 侮辱とジョーク。羞恥とお笑い。 これらは皆、紙一重である。 そしてその境界は、文化によってガラッと違う。 あなたが無意識に引いているその境界、グラつかせませんか? -- 日本とアメリカは、どちらも、「平等」を愛する国だ。 そういうと、すぐに双方から反論されるだろう。 日「あんな、貧富の差の激しい、不平等な国が?」 米「あんな、上下関係の厳しい、不平等な国が?」 そう、平等の定義は違うのだ。 アメリカ=生まれながらに平等。よ

【狂う】まともになろうとすること、またはその結果

【読書】立派な人間になることを諦める行為 【本】薬物の一種。摂取しすぎると死ぬ。ダメ、ゼッタイ。 -- 【日常】①この世で最も恐ろしいもの。②あらゆる事象を呑み込んで、ひたすら続けていくもの。 【孤独】欲望を貫き通した先にあるもの。それでも貫かずにはいられない。 -- 【自然体・自由】得ようとするほど失われていくもの。 【男女関係】最も近く、最も遠い関係。 【結婚】サスペンスドラマのオープニング。 【親子】互いの過去と未来を映し合う鏡。羨み、恨み合う関係。 【子供】残酷でタフ

森鴎外の『当流比較言語学』が大好きな件について。コロナ禍の日本を見て書いたかのよう。

 『当流比較言語学』は、ドイツ語にはあるけど日本語にはない言葉を紹介しながら、日本人にない感情を指摘するという本です。  紹介されるドイツ語は3つで、構成はとてもシンプル。文字数も極めて少ないので、数分で読むことができます。  ただし、明治時代に書かれた文章である上に、紹介される言葉以外にもドイツ語が頻繁に出てくるので、ところどころ意味をとれないところがあります。しかし、分からない言葉を飛ばして読んでも、一番重要な部分は理解することができます。  私は『当流比較言語学』を、

【"大衆社会"が、"個人"に教えない不都合な真実②】 マジョリティ(みんな)とサイレントマジョリティー(大衆)の矛盾

"多数派として声を上げる者は、声を上げたことにより、すでに少数派になっている。" point①「みんな」と「大衆」の意思は違う。 世直し系のテレビ番組があったとします。 とっても人気で最高視聴率が30%だったそうです。 さあこれで、世の中は変わるか!? 残念ながら、変わりません。 なぜか? 答えは簡単、残りの7割は見ていないからです。 選挙をしたら当然3割の意見は大敗します。 同様に、ミリオンセラーや100万いいね!でも影響度合いは、全国民の1%。 残りの99%は、全然

誤「英語を話せる」→正「英国風に話せる」

"Englishというのを英語と訳すことは間違いだ。" 「日本語を話せます」は英語で「I can speak Japanese.」。 だけど「私は日本人です」は英語で「I‘m Japanese.」。 ならば、「I can speak Japanese.」は機械的に訳すと「私は日本人を話すことが可能です。」になってもおかしくなくない?? そう、「I can speak 〇〇.」=「〇〇を話せる」という訳はおかしい。 そもそもspeak は目的語不要の自動詞で、直後に名詞を取

知産知消:地産地消という虚しさ

語り得ぬものを語るほどに、無意識を意識するほどに、 不可能を可能にするほどに、未知なるものを知るほどに、 呵責を素直に受け入れるほどに、境界を越えるほどに、 善を改善し、悪を改悪するほどに、 言葉を言葉で否定するほどに、 過失を認め、故意を切に弁明するほどに、 世界は下らなくなる。 それはどうにも物足りない。 それはいかにもパッとしない。 いつも少しだけもの哀しい。 でも何のこっちゃない。 それでいいのだ。 知産知消 ――――――――――――――――

【"大衆社会"が、"個人"に教えない不都合な真実①】一般常識と現実の矛盾

「フリーランスは大変だぞ。サラリーマンの方が楽だよ」 そう言って脱サラを引き止めてくださる心配性な優しい上司に、同じ歳のタイトル画像のような2人の写真を(職業が分からないようにして)見せて、「どちらがくたびれていますか?疲れていますか?人生大変そうですか?」と聞くと、どう答えるでしょうか。 間違いなく、右側だと答えるでしょう。 一体全体、サラリーマンの何が楽なんでしょうか。全く謎です。 お金を手に入れる労力が少ないからでしょうか? 確かに、サラリーマンをしていれば、お金

お金の学校 (6) 経済=「大丈夫、きっとうまくいくよ」と自分に声をかけること

 画集の印税についてのお話いかがでしたか? 面白かったですか? こうやって僕はやってます。こうやって僕は生きてます。印税ゼロテクニック。一見、100万円という大事な印税、その身銭を切っているように見えるじゃないですが、でも、そう見せかけて結局550万円を獲得しているわけです。詐欺師みたいなもんですが、今のところどこからも苦情は殺到してません。なぜなら、誰も痛くも痒くもないからです。出版社は、著者に印税を払わないことで、印刷にお金をかけることができましたし、僕はとにかく自分自身

差別化の穴を覗いたら見えたもの

ビジネスとか商いの文脈で差別化大事だよねという話をよく聞く。この言葉そのものが嫌いな人もいるけど。 あらゆるモノやサービスがコモディティ化(同質化)つまり、どれもそれなりの高いレベルになってしまって逆にどれも大差ない。そんなフラットな時代になって随分たつ。 もはや最近はコモディティという言葉すらそんなに聞かなくなった。 昔だったらスマホで動画視聴できる! っていうだけで差別化だったのが、いまはそれだけでは差別化にも何もならないっていうやつ。 それでも生き残るにはなんと