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都市伝説が、都市現実に⁉

近未来の食糧危機にそなえて、世界的に昆虫食が注目されている。
ここ日本でも、コオロギの粉を混ぜたパンを食べるか、食べないかでもめているのだが、イナゴザザムシを日常的に食している地方の人にとっては何を今さらという感じだろうか。
私もイナゴの佃煮なら食べたことがある。マッチ棒みたいな脚がちょっと気になったが、味と食感はワカサギの佃煮と変わらなかった。
セミアリも食べたとことはあるのだが、味は不明だ。
大学の釣りサークルの合宿で、先輩の作った闇鍋の中に釣りの餌やその辺で捕まえた様々な昆虫が入っていたようなのだが、他の具材と一緒くたになってしまうと何が何だかわからなかった。
合宿では恒例の虫闇鍋だったが、気味が悪いので私の代で廃止した。

コオロギについては、村西全裸監督の実家が大変な貧乏で、学校へもっていく弁当のおかずがコオロギだったそうだ。
あのNetflixで世界中に配信されるほどの人物も、コオロギを食べて大きくなった。
村西とおるさんのような立派なオトナに育つように、子供たちの学校給食にもぜひコオロギを、と考える人が出てきてもおかしくはない。

虫が気持ち悪いというが、見た目がヤバい食べものなんていくらでもある。
タコや、ナマコや、ホヤが、まるごとドンっと置かれていたら、(美味しそう……)と思う人はあまりいないだろうが、調理されていればなんてことはない。
話のタネに珍味として虫を食うというのは、全然アリだ。
だが、毎日の主食がウジ虫、おかずはコオロギと、クモと、ムカデになったら、どうだろうか。
昔読んだトラウマ級のホラー漫画、古賀新一こがしんいちの『妖虫ようちゅう』とか、楳図うめずかずおの諸作品にやっと現実が追いついてきたかと思うと、気味悪くも感慨深くもある。

いわゆる都市伝説の分野でも、ゲテモノ食いは人気の演目だ。
有名どころでは、「ミミズバーガー」とか「四本足のフライドチキン」、「手首ラーメン」などがある。
(お勧めはしませんが、興味がある方はググってみてください)
こんな話が、気味の悪い冗談で済んでいた時代が懐かしい。
今や、国を挙げて虫を食わせようとしているのだから。
いや、国民が昆虫食に嫌悪感を感じているのは今だけかもしれない。

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こんなふうに広告代理店がこれでもかと手を打って、そのうちみんな虫が好きになるのだろうか。
家庭菜園のように家庭虫園がブームになるとか。
自宅で家畜を育てるのは無理があるが、虫なら場所も取らないし簡単そうだ。

そうは、ならない気がする。
というか、この話はどこかで急に終わるはずだ。
たぶん人々に虫を食わせるのが本来の目的ではないからだ。
ここまで国民を煽っているのには、別の意図があると思ったほうがいい。
何か重大な問題から目をそらすためだろうか。
特に今それが必要な情勢とは思えないが。

他の何かを売り出すための戦略だろうか。
先に無理筋を出したあとに本命を出してくるのは、営業マンも詐欺師もよく使うテクニックである。
新書を何冊か出していて、著者紹介が大学と研究所の名前ですごいことになっている学者が「実は、コオロギの粉末よりシカの糞のエキスが安全でビタミン、ミネラルも豊富……」とか言い始めたら気をつけたほうがいいのだが、今のところそんな動きもない。

だとすると、これはある種の社会実験でコオロギ食は単なるネタかもしれない。

刺激的で極端な情報に対して、一般大衆や知識階級、影響力のある文化人、ミュージシャンなどはどう反応を示すか、80年代あたりからちょくちょくやられている非公式のマーケティングだ。
あなたがコオロギ食に反対でも賛成でも、ネットで下手につぶやくとデータサイエンスの餌食にされてしまう。
虫は無視する。これにつきる。

では、何のためにマーケティングかというと、こればかりは仕掛けた人に聞かないとわからない。
食に関するものだからといって、テーマが「食」とは限らないからだ。
文化や習慣はどこまで改変可能か、を探るための実験かもしれない。
まさかとは思うが、近い将来「興梠」とか「溝呂木」という名前の政治家か起業家を表舞台へ登場させるためのサブリミナル的な下準備かもしれない。

今回のコオロギ騒動と、特撮映画『シン・仮面ライダー』の公開時期が重なっている点は注目に値する。
仮面ライダーは、バッタの改造人間。
コオロギとよく似た昆虫である。
肉も魚も食べないことで有名な監督が、昆虫食の推進に関わっているとは到底思えない。
何か裏がある可能性は残るが、仕掛人にとって都合のいいタイミングで映画が公開されただけだと思いたい。(※1)

これは考えすぎかもしれないが、コオロギとキリギリスが漢字で書くと同じ「蟋蟀」であるのも少し気になる。
キリギリスと言えば、イソップ童話の『アリとキリギリス』。(※2)
意地の悪いマーケターが格差社会を皮肉るために、あえてコオロギを選んだとすれば気が利いている。
逆上して「貧乏人は虫を食えというのか!」と怒りをぶちまけている人を見て、しめしめと思っていることだろう。


それで本当の食糧危機が来たら、どうするのか?
人類が100億人を越えて、家畜も穀物も野菜の生産ももう限界、という時代が来るのは確実だ。
その時、人は何を食べるのだろうか?
本物と同じ味わいのヘルシーでサステナブルな培養肉や代替肉が開発されたとしても、値段が高くて庶民には手が届かないかもしれない。
虫を食べて生き残りたい人はそうすればいいが、大多数は別の道を選ぶだろう。

答は、草を食う、である。

コオロギにしろ、ウシやヒツジにしろ、植物を餌に育てるのだから、肉の生産をやめて人間自身が草を食べたほうが効率がいいのは明らかだ。
問題は人間の消化器官で植物のセルロースを分解できないことだが、これもやがて解決されるだろう。
草食動物のように植物細胞壁を消化できる腸内細菌が見つかるか、発明されるかするはずだ。
それを腸内に移植するかしないかで、人類はまたもめにもめることになる。
そこで広告代理店の登場である。

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毒草以外は全部食料になる。
これで200億人でも300億人でも大丈夫。
「貧乏人は草を食えというのか!」と言う人には、
「ソウです」と返すしかない。
草だけの食事なんて味気ない、となげくのは早計だ。
ミシュランガイドで最多の星の数を誇る、わが国の調理技術をもってすれば、道端の雑草もご馳走に早変わり!
至高の草、究極の草を味わうために世界中から観光客が押し寄せるかもしれない。
セレブを中心に流行しているヴィーガンというのは、人類草食化計画の第⓪段階(←今ココ)、というのが私の見立てである。



※1 仮面ライダーと言えば思い出されるのは「仮面ライダースナック」。
1970年代、付録の仮面ライダーカードを求めて子供たちが買いあさり、スナックのほうは捨てられて社会問題になった。
この時、販売元のカルビー製菓(今のカルビー)に商品化を働きかけていたのが、当時、奈良県立短期大学助教授の栗本慎一郎くりもとしんいちろうだった。
栗本は、変態する昆虫と人の変身願望を掛け合わせたような斬新なヒーローと、それとは何の関係もないスナック菓子を結びつけるという、当時としては画期的なマーケティングをやってのけた。
バッタのヒーローのデザインはカッコいいものの、敵の怪人はクモ、ハエ、ガ、ムカデ、ナメクジなど、どちらかと言えば食欲をなえさせるキャラクターが勢ぞろい。
そんな気味の悪い怪人のカードをスナック菓子につけて売るというのは、食品メーカーとしても冒険だっただろう。
しかし、カード集めに熱中する子供たちにとっては、スナック菓子などどうでもよかった。
超ロングセラー「かっぱえびせん」を生み出した老舗の菓子は、栗本慎一郎というハンチングをかぶった死神博士の手によって、キャラクター商品に改造され市場を席巻したのだった。
のちに著書『パンツをはいたサル』他で、人間は生存のためには不要な社会制度や科学技術を発展させ「過剰かじょう蕩尽とうじん」することによって快感を得て生きる道を選択した、と喝破した栗本。
サルは木から降りて、パンツをはき人間に変身した。
仮面ライダーやショッカーの怪人たちも、生存には必要のない改造手術で過剰にパワーアップされ、毎週のように死闘=生命の蕩尽を繰り広げる。
つまり、仮面ライダーの「仮面」とは、栗本流経済人類学で言うところの「パンツ」。
仮面ライダーパンツをはいたサルだったのだ。
なお、頭にパンツをかぶったヒーローが出てくる映画『HK/変態仮面』は、非常に興味深い設定ながら未見である。

※2 あまり知られていないが、同じイソップ童話に『ロバとコオロギ』という話もある。
コオロギの鳴く声に憧れたロバが、コオロギと同じ草のツユを飲めば声がよくなると思い、草のツユだけ飲んで栄養失調で死んでしまうという話である。
これも何かを示唆しているような気がしてならないが、切りがないのでやめておこう。

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