中学校

私は、中学校に何も期待していなかった。

何も考えずに入った中学校は、地元でも有名な「荒れた学校」だった。

授業中は、おしゃべりの時間。

厳しい先生は説教を続け、大人しい先生はおしゃべりを無視して教科書の朗読を続けた。

休み時間は、ベランダからタバコの煙が上がり、上級生が下級生をいじめた。


分厚い生徒手帳には、時代錯誤の校則がずらりと並んでいた。

「男子生徒は丸刈り。髪が長い女子生徒は三つ編み」

「靴下は白のみ」

「制服、文房具は学校指定の物であること」

生徒達は制服を改造し、先生達はスカート丈をミリ単位で測った。

クラスでいじめらしいいじめはなかったけれど、

先生vs生徒、上級生vs下級生、のような抗争がいつも繰り広げられていた。


面倒なことが嫌いだった私は、中立を試みた。

目立たないように校則を守り、

先生にもクラスメイトにも、上級生にも下級生にも良い顔をした。

「普通」の私に、敵はいなかったけれど、味方もいなかった。

毎日くだらない話をして、争いごとに巻き込まれる前に逃げた。


いじめられていた小学校よりは、ましな学校生活だった。

でも、何も面白くなかった。

中学校は、アスファルトと高い塀に囲まれていた。

毎朝登校時間きっちりに、先生達が重い門を閉める。

遅刻をすれば、長い説教の後に入室を許される。

私達は説教を逃れようと、高い塀を登った。

無事入室できるとヒーローになれたが、

先生達に見つかると、説教の時間が増えた。

まるで監獄だった。


小学校よりも遠くなった都会の中学校まで、私は自転車で通った。

車の排気ガスを吸いながら、アスファルトの道を走った。

もう周りの景色や自然を見ることはなくなった。

制服を汚すと親に怒られるから、もう草むらで寝転ぶのはやめた。

両親の喧嘩の声が聞こえないように、ラジオを聴きながら、本を読むのが私の日課になった。

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