【第27話】リーダーへのヒアリング③
その日の午後、おやつを食べ終わった5歳児は、園庭に出て遊んでいた。
さくら保育園の園庭には、大きな鉄製の遊具がある。これはさくら保育園の開園当初からあった。他には、すべり台やブランコもあり、体力のある5歳児は、いつも午後は園庭に出てこれらの遊具で遊んでいた。
体の大きな5歳児がいるため、乳児クラスはいつも午後は園庭を使わない。
乳児クラスの保育者から、午後に園庭に出て遊ばせたいという意見が出てくることはあったが、いつの間にか「乳児クラスは、午後は室内で過ごす」というルールができていた。
秋晴れの心地よい風の中で、子どもたちは自分のやりたい遊びができる場所で遊んでいた。
運動会の後ということもあり、園庭の真ん中では5歳児がリレーをしていた。年長の担任でもある飛田がスタートラインに立っている。
子どもたちは3列になって並んでいる。列の先頭の子どもは蛍光色のバトンを持ち、スタートの合図を今か今かと待っている。
「よーい、どん!」の掛け声で一斉に子どもたちは駆け出した。列に並んでいる子どもたちは「がんばれー」「はやくはやく」など、先頭で走っている子に思い思いの言葉をかける。10mほど先に置いてある三角コーンを周り、戻ってくる。
その様子を見守りながら、飛田は子どもたちの成長を実感していた。今やっているリレーでは、飛田の役割はスタートの合図を出すことと、ゴール後に順位の判定をすることだ。
飛田は子どもたちが始めたリレー遊びを、最初は遠くから見守っていた。しかし、何度かやっているうちに、トラブルが起きるようになり、この役割を担うこととなった。
トラブルの原因は、スタートの合図をする前にフライングをしてしまう子がいることと、接戦の場合に、どちらが先にゴールをしたのか、勝ち負けについてチーム間で言い合いになってしまうというこだった。
言い合いになっていることを飛田は気づいていたが、あえてしばらくは見守ることにした。それは子どもたちだけで解決してほしいという願いがあったためだけではない。
飛田はいつも子どもたちと話し合うことを大切にしてきた。子どもたち同士でトラブルがあったときも、子どもたち同士で話し合う機会を必ず設けるようにしてきたのだ。だから、ただ願っているだけではなく、子どもたちだけで解決できるという確信もあったのだ。
予想通り、子どもたちは集まってこの問題をどう解決するか話し合いを始めた。年長で周りを引っ張っていくタイプの元気な男の子である太陽(たいよう)が、みんなの意見をまとめているようであった。
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https://note.com/hoikufa/m/mdab778217cb1
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