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【第23話】園内研修だけじゃだめなんですか⑥

「失礼します」

180cmほどある大柄な飛田は、職員室に入ってくるとなかなか迫力がある。

「どうしたの?」順子が問う。

「いえ、ホールの片付けが終わったことの報告と、一つ相談がありまして・・・。明日の午前中のことなので、打ち合わせ中だとは思ったのですが、今少しだけよろしいでしょうか?」

時計を見るとすでに午後9時近くになっていた。どうやら順子たち三人の話し合いが終わるのを待っていたようだ。順子と油井園長に促されて、飛田は話しだした。

「明日の午前中にさくら組でホールを使いたいと考えているのですが、よろしいでしょうか?」飛田は見かけ通り声が大きい。堂々としているように見えるが、保育には自信がなく、幼児リーダーとして指名された時も一度断っていた。
順子が話を聞くと、リーダーとして保育を変えていきたいという気持ちはあるが、自分にできるかどうか自信がないということだった。しかし経験年数なども考慮して他に適任者がいなかったため、油井園長からも再度お願いされてようやく折れた、という経緯があった。


順子にホールの使用を許可されると「わかりました」と言って、飛田は職員室を出ていった。

足音が遠ざかっていくと、栗田が口を開いた。

「先程のお願いですが、幼児リーダーと乳児リーダーのお二人を、これらの取り組みに参画させていただきたいのです」

「参画というのは?」油井園長が恐る恐る聞いた。どうやら油井園長は宿題が増えることを恐れているようだ。

「組織を変えていく時には、一部の管理者やリーダーだけではなく、なるべく多くの職員を巻き込むことが大切です。組織のメンバーが自分たちで自分たちの組織を変えていこうという前向きな姿勢がなければ、変化は起きません。なので、やり方はお二人に任せますが、どうしたら二人のリーダーが納得して参画してくれるか、アプローチを考えてみてください」

栗田は難しいことを簡単そうに言う。思わず油井園長と順子は顔を見合わせた。

「ストーリーで読むファシリテーション 保育リーダーの挑戦」一覧はこちら
https://note.com/hoikufa/m/mdab778217cb1

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