石川 聖(Ishikawa Satoshi)

保育者/園長/講師。略歴:仙台市内の幼稚園で 9年勤務した後、 2017 年に保育士起…

石川 聖(Ishikawa Satoshi)

保育者/園長/講師。略歴:仙台市内の幼稚園で 9年勤務した後、 2017 年に保育士起業家として独立。保育アドバイザーとして現場の課題解決に取り組む。保育園の新規開園準備期間に子育て支援事業「とびだす保育園」、保育者の学ぶ場づくり「Hoiku Studio.」 などの事業を展開。

マガジン

  • 保育は人生そのものだ!

    私にとっての「保育」という存在にも向き合っていきたい。子どもにとっての「保育」も、保護者や社会にとっての「保育」も考えていきたい。その営みも生活の一部であり、自分らしい人生の一部なように感じています。 主に、保育におけるさまざまなことを探究する視点を軸に書いていきます。 【探究|物事の本質やあり方を探り、その物事を明らかにしようとする営み】

  • 保育スタジオ-Hoiku Studio-

    • 8本

    2019年7月にスタートした「ほいくスタジオ」。 子どもと関わる大人の学ぶ場づくりをしています。

  • BOOK LIST

    保育者におすすめしたい本のリスト。自分にとってもメモがわりにマガジンにまとめています。

最近の記事

  • 固定された記事

「ごめんね」「いいよ」をルールにしない。

「ごめんね」 「いいよ」 このやりとりで納得できることもあれば、大人が子どもの想いや事実の橋渡し役となることで、自然とこの言葉が出てくることもあるでしょう。 しかし、大人が形式的に言わせたやりとりでは、‟仲直りさせた風”の包み紙にくるまれているだけで、肝心の中身は ‟当事者の子どもたちが納得していない” というケースに出会うことがあります。 また、そうさせることが先生のスキルのように扱われている環境にいて、モヤモヤを抱えている方もいるでしょう。 スムーズに解決したそ

    • #61 ひとことの厚みで保育に違いが生まれる

      たったひとつの単語にある、人それぞれの背景や物語。 ひとつの言葉が語るのは、ひとつのことではなく、まだ語られていない、そして語られることのない背景がある。 「ひとつの言葉」に、こんなにも幅や厚みがあるんだと実感できた体験は、他者の言葉の聴き方に違いをつくります。  これは私たち保育者にとって大切な感覚であり、スキルでもあります。 そして、相手の背景に触れる感度や深さは、自分自身の背景に触れた経験があるか、その感性が開くようなことをたまにしているか、そんなことが問われる

      • Hoiku Studio連続講座 【保育研修講師クラス】開講!

        00.はじめに2019年7月に「ほいくスタジオ」が始まりました。もうすぐ5年が経つ節目に新たなチャレンジを始めます。 研修で学んだことが自分の現場で活かしにくい。 20代の頃、そう感じることがよくありました。そもそも活かそうともせず、斜に構えた保育士に出会うこともあり、モヤモヤしていた時期もあります。 そんな経験を経て、私はこれまで講師として500回以上の学びの場づくりをしてきました。 保育士向けの講座、 保育学生への講義、 自園他園問わずの園内研修、 企業向けに社

        • #60 「適当」〜いい加減と、ふさわしい加減〜

          6月29日。土曜の午後。 午前中の仕事終え、梅雨の晴れ間にちょっとそわそわしながら定禅寺通りを足早に抜けて、仙台メディアテークへ向かっていました。 2ヶ月前から楽しみにしていた「ドートクの時間」 「対話の可能性」(「序」)に出会って衝撃を受けて、著書を読み込んできた鷲田清一さんと、「手の倫理(講談社選書メチエ)」と「目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)」を読んで影響を受けた伊藤亜紗さんとの対話を首を長くして待っていました。 「適当」をテーマに、【もの

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        「ごめんね」「いいよ」をルールにしない。

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        • 保育は人生そのものだ!
          ¥168 / 月
        • 保育スタジオ-Hoiku Studio-
          8本
        • BOOK LIST
          5本
        • 倉橋惣三に学ぶ
          30本

        記事

          保育日記|007|「そのままがいいんだね」

          年長児と繰り返し読んでいた絵本。 「自分で読む!」と、声を出しながら自分で読むことが多くなっていた時期に、この絵本は「園長先生に読んでほしい」と持ってくるのでした。 誰かと一緒にみることに意味があったのかもしれません。 くろねことしろねこの両親から生まれた「あかねこ」。 兄弟は、黒や白のねこ。自分だけが「あかねこ」。 きれいでかわいくて、自分にとっては好きな赤色。 しかし、両親や兄弟は、なんとか黒や白にしようとする。 絵本を読み進めていくと、一緒にみていた年長児のつ

          保育日記|007|「そのままがいいんだね」

          #59 「観察」で変わる保育の実践

          【観察】を保育方針の軸のひとつにして、開園前から実践を重ねて5年。 今年の3月に発売された「新時代の保育のキーワード(小学館)」という本で、汐見さんが真っ先に取り上げていたのも【観察】でした。 保育士養成校の講義では、その本にある【観察の四分類】を参考に、実際の保育中の動画を使って観察のワークに取り組んでいます。 学生の取った記録を見ていくと、いくつかの発見と仮説が生まれました。 ひとつは、その子自身のことだけでなく、保育士や友だちとの関係性も感じ取ろうとしていること

          #59 「観察」で変わる保育の実践

          「たくさんおしえてくれてありがとう」が嬉しかった保育士1年目

          昨年度に担任をしたのは4歳児クラス。 そのクラスで最後の日に、ある男の子から 「たくさんおしえてくれてありがとう」 という手紙をもらった。 その子の母親からは 「この子、もともと虫とか植物が好きだったけど、先生が沢山教えてくれたからか、この1年で『これはなに?』『調べてみたい!』って、もっと興味が増したように感じるんです。」 という、とても嬉しい言葉をもらった。 私は、2022年に千葉で保育補助として働きながら保育士資格を取得した。 2023年に熊本に引っ越しして3月

          「たくさんおしえてくれてありがとう」が嬉しかった保育士1年目

          「型」を活かして、子どもの声を聴く

          ある日のできごといつもの耳鼻科に行くことを何日か前から話をしていたが、当日になって用事ができてしまい、別の耳鼻科だったら行けるという日があった。 息子(4歳)は耳鼻科に行くとしばしば「耳垢で鼓膜が見えない」と耳掃除をされる。 ただ、耳掃除への抵抗感があり、突然することになると息子は大泣きして暴れてしまう。 でも、耳掃除が必要なことは理解できているので、事前に伝えておくと受け入れることができるようだ。だから耳鼻科に行くときは、数日前から話をして息子が心の準備をできるように

          「型」を活かして、子どもの声を聴く

          #58 保育における「自由」

          新年度が始まり、講師をしている保育士養成校にも新入生が入学しました。 学生たちは、さっそく保育士として必要な知識や技術を各科目で学んでいます。 しかし、ふだん子どもとの関わりがなかなか得られない人は、2年生になって実習が始まるまで実際に子どもと関わる機会が少なかったり、実習だけになると経験の量としては十分とは言えなかったりというのが養成段階の課題でもあります。(改善の一手としてはデュアル教育があります。) そうすると、実際の子どもの姿をうまく思い浮かべられなかったり、関

          #58 保育における「自由」

          #57 7年越しの卒園式

          保育園の立ち上げに向けて動き出した2017年。 保育園の立ち上げが始まった2018年。 保育園が開園した2021年。 そして、2024年3月、第一回 卒園式を迎えることができました。 7年かけてたどり着いた卒園式。 私の中にあった卒園式の「当たり前」が更新され続けた3月でした。 年長児は、3歳児クラスで入園した頃から自分たちが一番上の年齢でした。 年中の頃から、小学校へ期待を持っていた子たちです。 自分でランドセルを作ったり、学校ごっこ(自分が先生で、保育士が生徒

          #57 7年越しの卒園式

          #56 イヤイヤするっていうことは…

          自我が芽生えてくると、「イヤ!」という表現を始めとして、大人にNOを突きつける主張が出てきます。 子どもの育ちにとっては大事、大人にとっては大変だったり、一筋縄ではいかない時期にも感じられたりしますね。 今回は、自我の芽生えとは何かをきっかけに、通称「イヤイヤ期」について書いていきます。 およそ1歳頃より、自我が芽生える時期になります。 自我が芽生えるというのは 「自分のやりたいことがわかる」自分に子どもがなっていく時期 とも言えます。 およそ1歳半頃か

          #56 イヤイヤするっていうことは…

          #55 「安心」と「信頼」と保育

          保育では、安心・安心感、信頼・信頼感・信頼関係という言葉がよく使われます。 それだけ大切で、必要だということですよね。 ところで、「安心」とは何か?「信頼」とは何か?と聞かれたらどのように答えるでしょうか? 感覚的には分かっていても、あらためて言葉にしようとすると、どんな表現になるでしょうか? 研修等で問いかけると、「安心」は【ほっとする、心が落ち着く、心地よい感じ】などが挙がります。 信頼の方はより感覚的な概念なようで【信じて頼る】など、あらためて言葉にしようとす

          #55 「安心」と「信頼」と保育

          保育者におすすめしたい本8選-2023年発行版-

          ここ数年は、年100冊ペースで読み進めていまして、今年もたくさんの本との出会いがありました。 このnoteでは、読んだことのある【2023年に発行された本】の中から、個人的に保育者へおすすめしたい本を8冊選びました。 1.『保育の中の子どもの声』10月20日に発行されて、もうボロボロになるほど読み込んでいます。 加藤繁美先生の書いた本をこれまで何冊も何度も読み返してきましたが、これまで書かれてきたことがぎゅっとまとまってさらに洗練されたような濃密な一冊でした。 この本

          保育者におすすめしたい本8選-2023年発行版-

          保育日記|006|他者からもらった肯定で自分を肯定することができる

          自己肯定は高ければいいというものでもないし、低いことが悪いわけではない。 大切なのは、自分の自己肯定の状態を許容したり許可を出したりすること。 「自己肯定を高めよう」として自分で上げようとするのは難しい。しかし、他者からもらった肯定は自分を肯定することにつながりやすい。 だからこそ、できるかできないか、やったかやらなかったかの視点ではなく、「一人一人ちがうその子だけの物語」をとらえていく営みが保育にはある。 この「一人一人ちがうその子だけの物語」には、他者との関わり、

          保育日記|006|他者からもらった肯定で自分を肯定することができる

          保育日記|005|子どもの権利を保障する対話的な保育実践

          子どもの権利を保障する。 子どもの主体を尊重する。 そのような保育の営みを支えるのは「対話」になることを対話的な保育実践に取り組んできて実感しています。 対話的な保育実践でまず求められるものは、保育者の対話能力です。 対話能力の中身の例としては、対話する技術と、それを扱う感性と身体性などが挙げられます。 〈対話に必要な技術・感性・身体性〉 機能する問いを扱う技術 「間」に持ち出す感性と身体性 判断保留の意識と身体性 「違いがある」を基盤にしたコミュニケーション

          保育日記|005|子どもの権利を保障する対話的な保育実践

          保育日記|004|「主体性」を取り扱う視点

          自分で考えて判断して行動しようとする態度ではなく、「関係の状態」主体性をみる。そうすると、どんなに未熟な赤ちゃんでも主体性を認めることができる。 主体性は「無」から「有」に向かうのではなく、最初から「ある」を起点にして発達していくもの。 人間の主体性の発達は、一見「受け身」のような姿から始まる。「他者からのはたらきかけ」を起点として、主体性の発達を描いていくことができ、「してもらう」主体性から「する・してあげる」主体性が統合されていき、「させてあげる」主体性へと発達してい

          保育日記|004|「主体性」を取り扱う視点