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一風変わったスイスのビールフォンデュ(レシピ付き)

世界各国に暮らす物書き仲間で、リレーエッセイをやっています。
その名も『日本にいないエッセイストクラブ』。
カタールに拠点を置くフクシマタケシさんよりバトンを受け継ぎ、
スイス在住・アリサが第4周目のリレーお題
お腹が空く話」の内容でお届けします。

文末に、前回走者と次回走者の紹介があります。
また過去のラインナップは、随時まとめてあるマガジンをご覧ください。


わたしたち日本人にとってのおでんは、スイス人にとってのチーズフォンデュだ。日照時間が短くなり、冷たい空気が肌に触れると、スイス人は眠たい棚からCaquelon (ガクロン:チーズフォンデュ用の鍋)を引っ張り出しては、かぶった昨シーズンの埃を振り払い始める。

このスイス伝統料理は、チーズを溶かし、パンを細かく切っただけで完成するわけではない。実は想像以上に奥深い一品で、チーズ、アルコール、パン、そして追加したい材料次第でバリエーションはぐんと広がるのだ。一般的なレシピでは白ワインを用いるのだが、少々クリエティブなこの国民は、あえてビールで作ることもある。

スイス人であるわたしの夫は、その作り方を彼の父から教わった。彼の父も「父に教わった」と言い、おそらくその祖父も彼の父から学んだことだろう ー スイスにおいてチーズフォンデュは、母から教わる肉じゃがの作り方のように、代々伝わる秘かな料理なのかもしれない。家庭によって味が少々異なったり、ちょっとした隠し味が込められていたりするのだ。

ビール好き、チーズ愛好家、はたまた好奇心旺盛なグルメな人でも堪能できるビールフォンデュ。今回は、アレンジが効いたこのビールフォンデュのレシピを紹介いたします。夫から教わったこのレシピを辿れば、単調な味に飽きやすいこの一品にも変化を加えられることでしょう!

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スイスで定番のAppenzeller Bier(アッペンツェラー・ビール)を使って調理


材料(2人分)
・チーズミックス* 400g
・ビール** 200ml
・にんにく 2片(にんにく好きは好みによって+1片)
・コーンスターチ 小さじ1
・チーズフォンデュ・スパイス・ミックス*** 大さじ1

*当料理の味を独占しないマイルドな風味を持つグリュイエールは、チーズフォンデュのベーズとして最適なチーズ。その他に、アルペン・チーズ、アッペンツェル・チーズ、ティルジッターをサブとして加えるのがベスト。グリュイエールとその他チーズの比率は1:1がおすすめ。

**どのビールを選ぶべきかの正解はないが、チーズとアルコールの程よい風味のバランスを保つため、軽くあっさりとしたビールを用いるのがおすすめ。このレシピでは、モルツとホップが香る濁りのあるビールAppenzeller Naturperle(アッペンツェラー・ナトゥールペーレ)を使用。

***黒こしょう、白こしょう、ナツメグからなるこのスパイスミックスは、スイスのスーパーで購入可能。自身で作るのももちろんできます ー 同分量のこの3スパイスを混ぜるだけで完成です。

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(1) にんにくを半分に切る。切った断面をCaquelonの底にまんべんなく擦りつける。

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(2) コーンスターチをチーズ全体に行き渡るようにまぶす。この工程は大きなボールで行うか、写真のように紙袋で行うようにしよう。

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(3) チーズ、にんにく、ビールをCaquelonに加える。

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(4) 中火にし、チーズを優しく混ぜる。底が焦げつかないよう、休むことなく、8の字を描くようにゆっくりと混ぜるようにする。

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(5) チーズが溶け始め、滑らかになったら、チーズフォンデュ・スパイス・ミックスを加える。

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(6) チーズがぶくぶくと泡を作り、重みのある粘り気が出始めるまで、休むことなく、8の字を描くようにゆっくりと混ぜる。所要時間はだいたい10−15分ほど。

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(7) チーズフォンデュ用の燃料に火をつけ、ビールフォンデュが入ったCaquelonをスタンドに立てる。

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(8) 一口大に切ったパンと、追加のチーズフォンデュ・スパイス・ミックス、口直しとしてのピクルスやきのこのマリネを添える。我が家では、自家製のキムチも一緒に添えています。

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これでビールフォンデュの完成です! 白ワインをベースにしたものと比べ、ビールの渋みがチーズの塩気を絶妙に引き立て、さらに濃い味付けに仕上がった一品となります。好みによって、重めのビールや黒ビールを使用することも可能です。

チーズフォンデュを食すにあたって、スイスではある暗黙のルールがある。それは、「チーズの海にパンを失くすと、全裸になり、自宅周辺を4周走る」という、惨めになるしかないような苦行だ。この国の秋冬はかなり厳しいので、髄まで凍えるお仕置きを喰らいたくなければ、秩序のあるマナーを守り、この伝統的な一品で心底温まるようにしましょう。

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前回走者、カタール在住の
フクシマタケシさんの記事はこちら。

わたし自身ベジタリアンなのですが、実はと言うとお肉の味が大好きです。カタール(とその周辺のアラブ諸国)で振舞われるこのマチュブースは、ディズニー映画の大晩餐会で出てきそうなほど大掛かりだが、いやはや美味しそう。わたしの胃も嘘つくことなく、お腹がグーグーと鳴り止まないです……。

次回の走者は、ベルリン酒場探検隊です。
ビールのお供が、わたしたちのお腹をどう空かせてくれるのでしょうか?
お楽しみに!

基本的にすべての記事は無料でご覧いただけます。もし有益だと思っていただけたらサポートしていただけると大変嬉しいです。物価の高いスイスでも、クロワッサン一つを買うことができるようになるので……。