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古今東西のFマウント(Nikon)の50mm F/1.4(標準単焦点レンズ)の情報18本分をまとめる

「標準レンズ」と呼ばれるほどポピュラーであり、一眼レフを手にしたなら一度は通る道と言っても過言ではない「50mm F/1.4」というレンズスペック。
個人的にはデジタル化に踏み切る際に、勢いで手放してしまって手元に無いという状態になってしまって久しい。
またどうしても欲しくなってなんとなくクリスタルなので、情報を調べてみるとこれまた散逸していて探しづらい。で、まとめてみました。

沼の入り口であり深淵でもある50mm F/1.4

ここでは、50mm F/1.8とか58mm F/1.4とか、45mmや40mm、50mm F/1.2あるいは55mm マクロなどは脇道と捉え、あくまで「50mm F/1.4」にテーマを絞ります。
ただ、AFに限らずMFも含めたので対象が多過ぎて調べるのに時間がかかってしまった。
しかし調べれば調べるほど、その深みにはまっていくのでした。。。

まずはNikon純正の系譜

50mm F/1.4はNikon以外にもさまざまなメーカーから発売されていますが、まずはNikkor(Nikon製)のレンズたちの系譜をまとめます。

1962〜95までに9種類のレンズが発売されている。
左から発売年月、名称、最短撮影距離、最小絞り、重量の順。

1962/3 Nikkor S Auto 50mm F1.4 0.6m f/16 325g
1972/7 Nikkor S C Auto 50mm F1.4 0.6m f/16 325g 
1974/11 NEW Nikkor 50mm F1.4 0.45m f/16 325g
1976/4 NEW Nikkor S 50mm F1.4 0.45m f/16 260g
1977/3 Ai Nikkor 50mm F1.4 0.45m f/16 255g
1981/9 Ai Nikkor S 50mm F1.4 0.45m f/16 250g
1986/7 Ai/AF Nikkor S 50mm F1.4 0.45m f/16 255g
1991/6 Ai/AF Nikkor S(NEW) 50mm F1.4 0.45m f/16 255g
1995/4 Ai/AF Nikkor D 50mm F1.4 0.45m f/16 255g

初代は、1960年発売の58mm ニッコールSオート F1.4の後継として、レンズ構成は5群7枚に変更されて50mm化されて1962年に登場している。
その後、74年のNEWニッコールで6群7枚に設計が変更されている。

その後、77年にはAi対応、86年にAF対応し、95年にDタイプが出た。という流れ。

Ai対応以前(非Ai)のレンズは、フィルムカメラならF、F2、F3、F4とFEやニコマートFT3やFM系の一部、デジタルではDfでしか使えません。
これは、ボディ側の露出計連動レバーが干渉してしまうためで、F3やF4やDfはこれを倒して非Aiのレンズを装着することができるのです。※

ちなみに、筆者がうっかり手放しちゃったのは、1974年のNEWニッコールをAi改造した代物でした。Df以外のデジタル一眼で使えるレンズとしては、そのAi改のレンズは一番古いモデルに相当するものなので、オールドレンズ志向としてはちょっともったいなかった…
でもすでに最短撮影距離は0.45mの6群7枚構成のレンズになっていて、そこまでクラシカルな写りではありませんでした(という記憶)。

1995年のDタイプ以降はWikipedia によれば、AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G (2008年12月5日発売) - 7群8枚。最短撮影距離0.45m。280g。口径が大きくなりアタッチメントはφ58mmP=0.75ねじ込み。
これが2020年3月時点の現行品ということになります。

「Nikonの標準レンズ」の評価を高めたレンズについては、NikonのWebサイトにいいコンテンツがありました。

アイキャッチのf/1.4の絞りリングは、ニコンF用初のf/1.4レンズ「Nikkor-S Auto 5.8cm F1.4」のもので、上の記事によれば「ニコンにとって必ずしも満足すべきレンズとはいえなかった」とのこと。むしろそのほうが面白みはあるかもしれないけど、おそらくコマ収差とフレアが出まくるんでしょうね。

サードパーティーの単焦点

まずは、顔なじみのメーカー、タムロン、シグマ、トキナーとヨーロッパ以外のレンズを調べてみます。
理由はなんというかホラ、値段とか価格とか高級感的な曖昧な理由です。
でも最近の製品はお値段もなかなか高騰してるので(品質も比例してるはず)侮れません。

タムロンは50mm f/1.4を作っていた形跡がない。
そのかわり、35mmや45mmで勝負しているようです。

シグマ(SIGMA)

旧型のものは、「50mm F1.4 EX DG HSM」これですが既に円形絞りを採用しているあたりが憎い。中古なら2万円台ぐらい。
https://www.sigma-global.com/jp/lenses/discontinued/standard/50_14/

最新のものは、「50mm F1.4 DG HSM」というArtラインの一本。
https://www.sigma-global.com/jp/lenses/cas/product/art/a_50_14/

この辺になってくるともう旧型の純正レンズたちとは描写の具合が全然違ってくることでしょう。使ったことないけど。

トキナー(TOKINA)

旧型のものは見つけられませんでした。で、最新のものが「opera 50mm F1.4 FF」。いいお値段します。きっと性能も比例するはず。
https://www.kenko-tokina.co.jp/camera-lens/tokina/standard-lenses/opera_50mm_f14_ff/

サムヤン(SAMYANG)

こちらはトキナーが扱っているブランドから「50mm F1.4 AS UMC」。
https://www.kenko-tokina.co.jp/camera-lens/samyang/50mm_f14_as_umc.html

中古で見かける機会がなく、新品でも5万円以下で売られているようです。

ヨグノ(YONGNUO)

ヨンヌオ?のほうが読み方が正しいのかしら?こちら「YN50mm F1.4N E 単焦点レンズ ニコンFマウント」がラインナップしています。

http://www.yongnuo.jp/index.php?route=product/product&path=77&product_id=128
不思議なことに、価格表示が0円(2020年3月の執筆時点で)最小絞りがf/22というところが特徴。そのほか製品の特徴を読んでみると味わい深い。Amazon価格で2万円以下ながら、なぜか重さが572g。

カールツァイス(Carl Zeiss)

フィルム時代から高嶺の花の別格感があったのですが、今ではカールツァイスと提携しているコシナがそのブランド名を冠して恥じないFマウントの製品を供給してくれます。

その昔カールツァイスに憧れ、どうしてもテッサーを使ってみたくてコンタックスの167MTとセットで買ったのを思い出します。どこ行ったけな?あれ。

ということで、発売順に並べるとこうなります。

2006/2 Planar T*1.4/50 ZF 0.45m 330g
2010/1 Planar T* 1.4/50 ZF.2 0.45 m 330g
2016/2 Milvus 1.4/50 ZF.2 0.45 m 680g

当然、マニュアルフォーカスです。そして、重い。でも、憧れのプラナー。ZFなら中古で3万円台で入手できる様子。

なぜf/1.4にこだわるのか?

「被写界深度の浅さ」とか「背景のボケ」とか「明るさが」が、というフレーズが「f/1.4」の下の句として出てきがちですが、実際それがf/2とf/1.8とどれくらい違うかというと、「被写界深度」の深さに関しては最短撮影距離のほうが大きい影響があります。

・50mmで最短撮影距離が、0.45mだとf/1.4で、被写界深度は「0.004m」

・35mmで、最短撮影距離が、0.25mでf/2なら、被写界深度は「0.003m」

・60mmマクロで、最短撮影距離が0.185mでf/3.2なら、被写界深度は「0.001m」(レンズの解放はf/2.8だけど近づくと実効値としてf値が上がってしまう)

いずれにせよ、解放f値が小さい数字だからといって「被写界深度が浅い」とは言い切れず、撮影距離の影響を受けることはよく理解しておいた方がよいと思う。

例えば、1.5mという撮影距離の時、

50mmなら、

 f/1.4 0.047m
 f/2.0 0.066m
 f/2.8 0.093m
 f/4.0 0.132m
 f/5.6 0.187m

になります。

1.5m離れていると、横位置で水平方向:0.684m、垂直方向:0.455なので、
人物ならバストアップよりもタイトな寄りになります。

モデルがちょっとハスに構えたとして、手前の瞳にピントを合わせたとき、鼻梁より奥をボカしていきたいなら、f/1.4。

ちなみに、f/1.8だと0.059mということで、深さとして1.2cmの差。
「被写界深度」の一点に絞ると、その差をどう考えるかという話になります。

ま、あくまで計算上の話なんで、レンズにはそれぞれ個性があってそこだけじゃないのであるわけですが。。。

なんとなく、なんとなく今買うとなると1995年のDタイプで手を打ってしまいそうな気がするのです。軽いし、小さいし、安いし、キレとか味わいとかphotoshopさんやCapture Nx-dさんにお任せするとして…

ああ、悩ましい。

※AI方式露出計連動レバー可倒式はフィルムカメラでは、F4シリーズ・F3シリーズ・FE・FM・ニコマートFT3・F2フォトミックA/AS。デジタル一眼レフでは、Dfのみとのこと。


(参考ソース)

これまでに紹介した以外に参考にしたページは以下のサイトです。

ニッコールレンズ 諸元表(提供:前畑さん)

Wikipedia「ニコンFマウントレンズの一覧」

TAMRON「生産終了レンズ・交換マウント一覧表」

ところで、ピントにこだわる方のためにこんなの作りました。よろしくお願いします。

標準ズームレンズのまとめ記事はこちら

ちょっと量が多かったのでAF限定です。

もうちょっと広い画角(40mm)のレンズまとめ

「50mm標準」説を疑っている方に。


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