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情景05.「朝、鏡の前に立つ男」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「朝、鏡の前に立つ男」です。

この小話は、掌編小説集『あなたが見た情景』において、もっとも文字が少ない掌編小説です。
もはや詩。
101文字の掌編小説。

作中の彼に名前はありません。

それだけでなく、年齢不詳で、職業も定めておらず、髪型も色も示しておらず、寝起きなのか起きていくらか経っているのかも判別つかず、寝間着なのかスーツなのかもわかりません。

決まっている情景の要素は、「鏡の前に立ってヘンな顔をした」ということのみ。
当時の私が101文字で示せた情景はこれが精一杯です。
有り体にいえば、「人物」について何も決まっていません。

それなのに、読むことで想像が膨らみ、頭の中で作中の舞台を補完し、ひとつの景色が作れてしまう。
これが情景小説の面白いところです。

小説の情景描写とは、書いて削ってを繰り返して磨いていくもの。
情景の要素を足して足して、そこから削る。まだ削れる、まだ削る。

そうして出来上がったこの101文字です。

あなたが見た情景』は、意識的に人物の設定面の描写を省いています。
読んでくださったあなたが頭の中でつくりあげた(見た)景色こそが真実だろうという、その過程で人物に関する細かい設定は余分なカロリーだと思い、人を舞台の要素に収めようとしています。

まァ、それは細かい話です。もしご興味ありましたら以下のエッセイをご覧ください。

内情はともあれ。
眼前の情景を突き詰めてみた小さなお話。

101文字で織られた情景。
お楽しみください。


あなたが見た情景』は、目の前の景色を眺めるように情景を思い描ける、ちょっとしたお話のあつまりです。

どこからでも何話からでも好きなところから読みはじめて大丈夫。
気になったタイトルをひらいてみてください。



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