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情景01.「白雲」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「白雲」です。

葉桜の緑が陽を透かすようになり、暖と涼を交互におぼえる過ごしやすい季節になりました。
ちょうどいいからこのタイミングで、はじまりの情景にふれたいと思います。

白雲。
241文字の掌編小説。

あなたが見た情景』は、日常にそった情景を書き連ねていくものでした。
文章に触れることであなたの中にある景色に触れてもらえるような、そんな小さなお話の集まりです。

その象徴のような最初の話です。
たったの241文字しかありません。400字原稿用紙の半分をかろうじて越えたか……くらいのもの。それでも、色んな方からご感想やお声をいただきました。本当にありがとうございます。

1話だけに、情景としてはとてもわかりやすいカタチになっているかと思います。
イメージしやすい晴れの日のことで、それをただ見上げているだけ。
ただ、それでもワクワクがこみあげてくるような。
そんな情景になればなと思って書いていたと記憶しています。

ほんの小さなお話なので、以下に直接掲載します。
どうか、眺めるようにするりとお読みくださいませ。

情景01【白雲】

 青天に浮かぶ白雲の流れていく様をじっと見つめているだけで、時が過ぎていく。
 そうして気ままに過ごすことの贅沢さに浸りながら、日だまりの草原に胡座して空を見上げていた。純白のシャツに陽光が跳ねる。風が下から空へと巻き上がった。

 このまま寝転がってしまおうか。
 それとも、立ち上がってふらりとどこかへ赴おもむこうか。

 ——どちらでもいい。本当に、好きな方を選んでしまえばいい。

 その間も雲は流れゆく。時はのびやかに先へと進んでいた。
 この場には、言葉も仕草も必要ない。
 ただ、思いひとつさえあればよかった。

『あなたが見た情景』情景01【白雲】

いかがでしたでしょうか。
もし、上の文章が少しでもあなたの思い出に触れることができたのであれば、ぜひ『あなたが見た情景』から気になるエピソードを覗いてみてください。

……さて!
今回は「白雲」のお話です。
雲を見上げるだけの情景。
他の創作でも、川べりに寝転がって日光浴とか、快晴の下で草原に立つとか、たまーにありますよね。この白雲のシーンも、そのひとつでした。

余談ながら、創作の中ではありがちだけど実際にはなかなかやらないことってある気がしませんか。この「白雲」にしてもそうです。

だって、正直、川べりだったり草原だったり、直に座ったりします?

子供のころは気兼ねなくやれましたが、大人になると、なかなかね。
やるとしても、場合を選びますよね。

でも、妙に馴染んでしまう。
定番だとすら思ってしまいますよね。自分ではあんまりやらないのに。
それでもいいんだと思います。
創作の不思議で、そういうこともあるんだと、情景に浸ることを楽しんでください。

ともあれ。
白いシャツで白雲を見上げてはじまる情景たちの小さなお話。
お楽しみください。


あなたが見た情景』は、目の前の景色を眺めるように情景を思い描ける、ちょっとしたお話のあつまりです。

どこからでも何話からでも好きなところから読みはじめて大丈夫。
気になったタイトルをひらいてみてください。



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