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『ROMA/ローマ』を観る前に知っておきたい10のこと

 アルフォンソ・キュアロン監督がNetflixと組んで制作した『ROMA/ローマ』が、第91回アカデミー賞で、監督賞、撮影賞、外国語映画賞を受賞しました。
 作品賞にもノミネートされていましたが、外国語の映画が作品賞にノミネートされたことは初めてのことで(本作で話される言語は主にスペイン語です)、もし作品賞の受賞となれば、とてもメモリアルなことでした。
 前評判では、作品賞の最有力作品でもあったので、作品賞を逃したのは『ROMA/ローマ』を応援していた身としては残念でもあったのですが、監督賞/撮影賞/外国語映画賞の3冠ということで、これから『ROMA/ローマ』を観ようという方も沢山いらっしゃると思います。そういう方のために、「『ROMA/ローマ』を観る前に知っておきたい10のこと」
「『ROMA/ローマ』を観た後に知っておきたい10のこと」
というテキストを準備したいと思います。

●『ROMA/ローマ』受賞歴
・ヴェネチア映画祭の最高賞の金獅子賞
・ゴールデングローブ賞の外国語映画賞と監督賞
・放送映画批評家協会賞の作品賞と監督賞
・英国アカデミー賞の作品賞と監督賞
・アカデミー賞の監督賞、撮影賞、外国語映画賞

●アルフォンソ・キュアロン監督 フィルモグラフィー
・最も危険な愛し方(1991年)
・リトル・プリンセス(1995年)
・大いなる遺産(1998年)
・天国の口、終りの楽園。(2001年)
・ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(2004年)
・トゥモロー・ワールド(2006年)
・ゼロ・グラビティ(2013年)
・ROMA/ローマ(2018年)

※アルフォンソ・キュアロンは、同じくメキシコ出身のギレルモ・デル・トロやアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥとは、「The Three Amigos of Cinema(映画業界の3人の親友)」とも呼ばれていて、共に映画製作にあたるなど精力的に活動する。

では、以下がこの記事の本編です。

■『ROMA/ローマ』を観る前に知っておきたい10のこと

①タイトルの「ローマ」は、イタリアの首都のローマのことじゃない
 映画タイトルの「ローマ」は、イタリアの首都のローマのことじゃないではなく、本作の舞台であるメキシコの首都メキシコシティにある地区のコロニア・ローマ地区のことです。家政婦を雇うことができることからもわかるように、ローマ地区はある程度の収入がないと住めない地区です。

②監督自身がカメラを持って撮影を担当
 アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』は、今年のアカデミー賞で、外国語映画賞、撮影賞、監督賞を受賞しました。よく見ると、監督賞だけじゃなく、撮影賞のところにも、アルフォンソ・キュアロンの名前が──本作は、キュアロン監督自身がカメラを回しました(※)。機動力のある最新の6K 65mmシネマカメラ「ARRI ALEXA 65」でカラーで撮影した映像を、モノクロにしています。撮影賞をとったくらいに美しい映像です。Netflixなので、スマホ画面でも観れますが、4Kクオリティーでも観れます。できるだけいい環境で観ることをオススメします。

※これまでタッグを組んできた名撮影監督エマニュエル・ルベツキと決別したわけではなく、ルベツキのスケジュールが合わず、監督自身が撮影することにしましたが、ルベツキと相談しながら撮影機材などを決めていったそうです。

③主役の家政婦クレオは、移民ではなくメキシコ先住民
 主役の家政婦クレオが移民だと思われているような感想もありますが、移民ではなくメキシコ先住民。ミシュテカという先住民出身です。劇中で、家政婦同士の会話は、ミシュテカ語でされています。

④主役は本作で初めて演技を経験
 主役クレオを演じたヤリッツァ・アパリシオは、オーディションで決まり、演技は今回が初めて。演技を学んだことはなく、本作の撮影前は、幼稚園教諭をしていました。

⑤脚本は撮影の日に渡された
 アルフォンソ・キュアロン監督は、撮影する日にその日の分の脚本を出演者たちに渡し、その日撮影することを毎日、別々に伝えていました。大半が演技経験のない出演者ですが、脚本を通じてキャラクターを出演者が分析し演じるのではなく、キュアロン監督の演出に日々従ったことで、この作品が日常を日常らしく描くことに成功しています。

⑥主役のモデルとなったのは監督の家族の家政婦だったリボリアさん
 現在74歳のリボリアさんに徹底的なインタビューと監督の記憶から脚本を作成しました。監督曰く「90%は事実」。

⑦子どもたちにはアルフォンソ・キュアロン監督自身の子ども時代が投影されている。
『ROMA/ローマ』は、アルフォンソ・キュアロン監督の半自伝的作品です。映画で描かれた一家には、男3人、女1人の兄妹がいますが、子どもたちにはアルフォンソ・キュアロン監督自身の子ども時代が投影されています。アルフォンソ・キュアロン監督は1961年生まれなので、この映画の舞台となっている1970年から71年にかけては、9才から10才ぐらい。 
 キュアロン監督の弟のカルロス・キュアロンも映画人で、1991年の監督デビュー作『最も危険な愛し方』と出世作の2001年『天国の口、終りの楽園。 』は、アルフォンソ・キュアロン監督とカルロス・キュアロンの共同脚本でした。カルロスとは今、ミステリー映画の新作を準備しているそうです。

⑧あえてわかりやすい説明は加えていない
 劇中で当時起こった実際の事件を背景とする展開もありますが、どんな事件だったのかということについて、わかりやすい説明は加えられていません。それは、当時のアルフォンソ・キュアロン少年も詳しいことはわかっていなかったからです。

⑨父親の車ギャラクシー
 一家の父親が乗る車はアメリカのフォード・モーター製セダン型のギャラクシー。一家の駐車スペースにはギリギリのサイズで…このギャラクシーはストーリーの中で、特に象徴的に扱われるので注目して観ておきたいです。

⑩場面の中にない音楽は流れない
 場面の中にない音楽は加えられていません。でも、家の中でラジオから流れる音楽、カーステから流れる音楽…として当時のメキシコの日常を象徴する音楽が沢山流れます。

それでは、アルフォンソ・キュアロン監督『ROMA/ローマ』をお楽しみ下さい!

(Netflixで観れます。『ROMA/ローマ』の1ファンで、Netflixの回し者ではありません)

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