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小麦の味を知っているか

パンを買った
なにを急にそんな話をと思うかもしれないがパンを買ったのだ
というのも普段買わないようなパンを買ったのである
といっても特別なパンではない
むしろ逆で普遍的と言っていいかも知れない

それがこのパンである

最寄りのパン屋で購入

パンよりもパンらしい佇まい
ジブリでみるようなパンだ
喩えでジブリを出すやつは大体うすっペラい、つまり俺はその程度の知識だ
とにかくパン オブ ザ パンという感じのパンだが、こういうパンは買ったことがなかった

だってなんか味しなさそうだし
もっとクリームとかウインナーとか乗ってるパンのほうが美味しそうじゃん

しかし何故か買った。そして初めて食べた
すると妙に気持ちが高ぶった、その気持ちを美味しかったと形容しても良い
それが割と、いやかなり衝撃的だった
何故これが美味いのか分からなかったからだ
だってクリームもウインナーも乗っていない、よくわからん塊だ
でも味がした、ちゃんと何かの味がした
そして俺は気づいた

『これが、小麦の味か……!』

小麦粉なんて日常的に口にしているはずだが、それらは大抵の場合は脇役としての域を出ず、主役になり得ることは少ない
焼く前の肉にまぶしたりするが小麦を感じたことはないし、お好み焼きなんてつなぎの役目くらいなものだ
「なんか便利な白い粉」
それが俺の中での小麦粉の評価だった
しかしこのパンは美味しかった

つまり、小麦は美味しかった

調べてみたところ、このパンは「カンパーニュ」と呼ばれるようだ。覚えにくい。ニュの部分が特に。カンパーニョって言ってしまう
間違えるとニワカ丸出しで恥ずかしいので絶対言い間違えたくないぞ。カンパーニュ!!ニュ!!!!ニュ!!!!
ともかく、フランスの田舎臭いパンという感じらしい
田舎らしく精製度の高くない小麦粉を使うことが多いのが特徴的だそうだ
精製度が高くない、というのは表皮や胚芽?とか辺りを取り除いていないって感じらしい。
詳しいことはわからないけど、それを使って作られたパンということで、要するに田舎そばみたいなものか。田舎パンだし。そういう認識で俺はいく
つまり何が言いたいかというと、田舎そばがそうであるように、田舎パンは小麦の味が濃く、風味を感じやすいパンということになるのだろう
このパンだからこそ小麦の味に気づけたのも頷けるというわけである

この出来事で俄然パンに興味が湧いたのであった
パンと言ってもクリームもウインナーも載っていない田舎パンだ!
田舎パンをもっと食べたい!
というわけでインスタとツイでオヌヌメのパン屋を伺ったところ、識者にお店を教えて頂けたので伺ってみることに
どうやら場所は江古田なようだ 
パンなら朝に買うべきだろうと思い、土曜日の朝に向かった

────


江古田は緩やかなカーブが多い気がした

江古田に来るのは初だったが、閑静な住宅街という印象をもった
非常に感覚的な表現になってしまうが、フルネームの表札が多そうな街だった(実際に多いわけではない)


バレエ教室の看板

手狭でアットホームな雰囲気なので一見して庶民的な街なように見えるが、たまにすれ違う人の身なりや住宅からは高級な雰囲気を感じたりなど、節々にハイソが醸し出されていたように思う
この街に住んでいる子供はクラシックバレエを習っていそう、そう思った
後に知ったことではあるが、江古田には芸術系の大学が多く存在するようなので、そういった雰囲気がそう思わせたのかもしれない


いい感じのイタリアンのお店

住宅の合間合間に、お洒落なお店が点在する
オシャレではなくお洒落と表記したくなる、そういう類のお店ばかりだった
ディープな雰囲気、と言い換えてもいいかもしれない。先述した芸術系の学生が通っていそうだ
こういう湿度の高いお店に憧れはするけれど緊張して俺は二の足を踏んでしまうので、「俺もこういうお店に入りてぇ!」と思いながら横目で通り過ぎる
そもそも俺はパン屋に行くんだ 目的を見失うな


写真中央 丸太が鹿にみえた

しかしパン屋へ向かい歩いていくうちに、俺はすっかり街のお洒落な雰囲気に飲まれてしまっていた
どのくらい飲まれていたかというと落ちていた丸太が鹿に見えたぐらいだ。お洒落な街なんだから鹿ぐらいいてもおかしくない
表参道のような煌びやかで解りやすいオシャレシティの方が、いっそ歩きやすかった、人混みに紛れられるから
けれどもこの街では、「お前の個性を示せ」「お前はこの街を歩くのに相応しいか?」と芸術的な存在価値を問われているような被害妄想をしてしまい、足取りが重くなっていた
実際のところ相応しいとは思えないので、早くパンを買って帰ろうと思った
そして、ついにパン屋へと辿り着いた


写真を撮ってなかったので再現イラストで失礼する

イラストでは伝わりにくいが、店の外まで、この空間だけ凄い人だかりだった(なぜ写真を撮っていないのかは後に説明をする)

住宅街に人だかり、それは俺にとって異様な光景だった

15人くらいはいただろうか
列が形成されているようだが、何故か列が2つあって、さらには列に並ばずに待っている人もいて、状況がよくわからなかった
とにかく店の前に人がいっぱいだった 
そもそもパン屋に行列という光景が俺には初めてで、完全に画面外からの攻撃だった

その攻撃に完全にやられてしまい、俺は立ち止まることなく店を通り過ぎた

そう、通り過ぎた
最初は普通に列に並ぼうと思ったのだけれど、既に凄い人数なので俺が並ぶと明らかに隣の住宅にまで列が伸びてしまい、迷惑だろうと思い、止めた
…………いや、そんな他人への迷惑を考えて配慮をした良い人ムーブで言い訳するのはやめよう
先述していた通り、俺は場違い感が否めなかった
そもそも不慣れな環境に怖じ気づいていた身に、よくわからない状況という追い打ちをかけられて心が折れた形だった
写真を撮っていないのは撮るための精神的余裕すらなかったからだ

結果的に、俺は店には入らず家に帰った

状況がわからないなら、並んでいる人に喋りかけて「これって入店を待つ列ですか?」って聞いて並べばいいだけの話だというのは分かる
でも最後尾札を持っていない見知らぬ人に喋りかけるなんて常人ムーブが俺にはできなかった
俺は店の前を3往復して悩みに悩んだ挙句(それすらも勇気が必要だった)、結局入れずにすごすごと駅へ戻って帰宅した


自分が陰キャであることを思い出した。そういう出来事だった
最近は自己肯定力が高まった気になっていたけれど、それはコロナ禍で人と接することがなくなって比較する機会が減っただけで、実際俺は何も変わっていないことを身につまされた
これからは身の丈に合わせて慎ましく生きます
庶民的なお店のクリームの乗ったパンだって美味いからさ……


──
───


数日後

って終われるかぁ~~~~~
こんなんで記事にできるかああああああ


うおおおおおおおお

江古田に再訪してリベンジうおおおおおおお


お店着いたああああああああああ
列はなかったあああああああああああ
それも当然平日の午後16時いいいいいいい
一番人がいない時間んんんんんんんんんんんん


カンパーニュ買えたああああああああああ


即帰宅

食べる前から美味いいいいいいいいい


食べても美味いいいいいいいいい




ハッピーエンド

だけど購入するときカンパーニョくださいって間違えて言ってしまった

再訪時にわかったのですが列が2つあったのは持ち帰り列とイートイン列だったぽい、多分。並ばずに待っていた人は持ち帰り客の付き添いだと思う。
パンのおいしさは言わずもがなで、店員さんもとても愛想のよい
の素敵なお店でした。また行きたいです。


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