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敵陣でのボール奪取率が最高となった試合:いまさらマッチレビュー 川崎フロンターレ対ヴィッセル神戸(9月29日)

 ビデオは見直しているのだけれど、レビューが大量に溜まっている。今日は9月29日の川崎フロンターレ対ヴィッセル神戸戦の「いまさらマッチレビュー」

 この試合、フォーメーションや戦術云々と言うより、個の力の対決が面白いと思えた試合だった。ジェジエウ対大迫でジェジエウが劣勢に立たされるなど、これまで個の力でも優位に立ってきたフロンターレが苦しむ局面が数多くあり、その中でも3対1で勝った試合。

 いまさら試合展開を振り返っても仕方ないので、自分のレビューで取り続けているスタッツだけまとめておくレビューにする。

フロンターレの敵陣ボール奪取率、56.7% 

 と言うことでフロンターレのボール奪取マップ。まずは全体。

 ここでいうボール奪取は、文字通り相手からのボールを奪うこと。ただし、そのままタッチに蹴り出したり、アバウトなクリアは対象とはしない。キーパーがペナルティエリア内でボールを処理した場合も含まない。青字はボール奪取がシュートにつながったもの。その下にカッコ付で表示されている数字はシュートまでのパスの数。赤字は得点に至ったボール奪取。

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 ボール奪取数合計60、うち敵陣が50%を超える34(56.7%)、シュートにつながったものが8(13.3%)。

 ボール奪取数はほぼ平均。シュートにつながったボール奪取もだいたい平均。しかし敵陣奪取率は今シーズン最高の数字だ。

 特に、敵陣ペナルティエリアやや外、ちょうどアタッキングサードに入る当たりと、ハーフラインからやや敵陣に入ったあたりでのボール奪取が多い。これは「即時奪回」がきちんと機能していたことを表している。

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後半の敵陣ボール奪取率、64%!

 前後半に分けてみてみよう。前半はヴィッセルに先制を許し0-1のビハインド。後半は3点を取り返して3-0だ。

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 興味深いのは、3点取った後半の方がボール奪取数が少ないこと。合計で25となり、41.7%にとどまる。

 しかし驚くべきは内容。うち16回が敵陣で、なんと64%に達する。実際、そこから2点取っている。もう1点はPKで、これも敵陣でのボール奪取からの攻撃でのハンドだったから、この試合について言えばハイプレスが非常に良く効いていたことがわかる。

ヴィッセルは、自陣ペナルティエリア内からシュートにつないだのが3本もある

 では相手のヴィッセルを見てみよう。

 まずは全体。

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 ボール奪取数は合計58。フロンターレとほぼ同じ。ただし敵陣でのボール奪取は19(32.8%)にとどまる。少ないは少ないが、フロンターレの対戦相手の数字としてはほぼ平均的。シュートにつながったボール奪取は8で、絶対数でフロンターレと同じ、比率ではわずかに上回り13.8。

 ただし、敵陣でのボール奪取からのシュートは3にとどまる。面白いのは、自陣ペナルティエリアのボール奪取からシュートまでつなぎきったのが3回もあること。

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 これは非常にユニークな数字だ。「ボールを奪って素早くトランジションし、早い攻撃を仕掛ける」という現代サッカーのトレンドとはやや異なる方向性であるように思われる。

 ただ、ペナルティエリアからシュートまでつなぎきると言うのも難しいもの。このあたり、イニエスタの存在や他にもタレントをそろえていると言うヴィッセルの特徴が現れていると考えるべきだろう。

 ここから言えることは、フロンターレの攻め方とヴィッセルの攻め方は対極的だと言うことだ。このあたりが、ヴィッセルの「バルサ化」の蹉跌と言うことだろうし、試合を見ていて、なんとなくすっきりしない感覚を持つことの理由なのだろう。

進境著しい橘田

次に、個人別にフロンターレのボール奪取を見てみる。

 橘田:11
 旗手:10
 登里:10
 ジェジエウ:8
 谷口:5
 山根:4
 脇坂:4
 家長:2
 宮城:2
 ダミアン:1
 ソンリョン:1
 マルシーニョ:1
 山村:1

 最多はアンカーとして進境著しい橘田。素早い戻りでのディフェンスと相まって、この日非常にいいプレーを見せた。

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 また、インサイドハーフの旗手が10個ボール奪取していることは、それだけ「即時奪回」が機能していたことの表れでもある。ここに来て、脇坂と合わせた中盤の3人の出来は出色だが、その兆候が9月末のこのヴィッセル戦のあたりから見えてきていたと言うことでもある。

 その代わりセンターバックの2人のジェジエウと谷口が合計で13にとどまる。これは大迫からボールを奪えなかったこともある。

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 だが、その前で中盤がきっちりフィルターをかけていて、攻め込んだあとカウンターを受け、センターバックの2人がなんとか防ぎきると言う、鋭いカウンターを武器にするチーム相手に頻発する局面がほとんどなかったことにもよっている。


 もう1ヶ月以上前の試合なので、この試合の振り返りはここまでにする。橘田の好調の兆候が見えるのが面白いが、何よりも、ボール奪取マップを見ていると、ヴィッセルのサッカーが妙な形になっているように思えるのは、タレントをそろえているだけに気になる。ある意味、伸びしろがあると言うことのようにも見えるから。