3つのボール奪取エリアと少ない手数でのシュート:川崎フロンターレ対大分トリニータ戦(4月3日)<2>
4月3日の川崎フロンターレ対大分トリニータ戦のレビュー2回目。今日はボール奪取マップを中心に見てみたい。
3つのボール奪取エリア
まず全体図。水色は奪取後にシュートまで行ったもの。赤色はシュートが決まったもの。
合計で46回。敵陣で19回、自陣で27回。敵陣でのボール奪取率は41%。
まず気づくのが、ボールを奪取するエリアが大きく3つに分かれていること。ちょうどアタッキングサードに入るあたりでのハイプレス、ハーフライン付近での最終ラインとシミッチを中心とするボール奪取、それと、ペナルティエリア付近での守備時のボール奪取だ。
これはこの試合のプレスのかけ方をよく表している分布だと思う。まずは前線でハイプレスをかけ、ボールを奪う。そこでも山根が2回、登里が2回、シミッチが1回だから必ずしも前線の選手だけではない。
そしてそこでボールを回収できなかったら、ハーフライン付近まで上がってきている最終ラインで回収する。このエリアではジェジエウが4回、谷口が3回ボールを確保している。
最終ラインの4人のボール奪取エリアだけを示したものがこの図。敵陣を含め、中盤でも頻繁にボール奪取していることがわかる。これはそれだけ最終ラインが高いラインを保持していたことを表している。
そして次のエリアはペナルティエリア付近。これはハーフライン付近でボールを奪えなかったらリトリートしてペナルティエリア付近で守ると言う戦い方だったことを表しているだろう。逆に言えば、2-0で敗れた大分も、敵陣に侵入できればペナルティエリア付近まで前進できていたことでもある。実際、大分のボール回しを取れない時間があったという印象があったが、それは中盤からアタッキングサードに前進する過程でのことだったと言うことだろう。
前半は前半は中盤が多く、後半は右サイドが多い
次に前半と後半を比較してみる。
まず前半。
合計22回。敵陣7回、自陣15回。
後半。
合計24回。敵陣12回、自陣12回。
実は後半の方がリードしたし、リトリートしている時間が長かった印象があるので、結果としてはやや意外。面白いのは、前半のボール奪取は中央に近いレーンが多いのに対し、後半は右サイドでの奪取が多いこと。
これは、前回見たように、前半はサイドを捨ててハーフスペースでの守備に重点を置いていたものが、後半の特に終盤(右サイドでのボール奪取は76分2回、81分、83分、94分と終盤が多い)は、トリニータも右サイドを使ってビルドアップすることが増え、それに対応して右サイドのディフェンスが強化されたことがうかがえる。
次に個人別のランキングを見てみる。
シミッチ:10
谷口:8
山根:7
ジェジエウ:5
登里:5
ダミアン:3
旗手:2
遠野:2
三笘:1
家長:1
脇坂:1
田中:1
このシミッチの10というのは凄い。
シミッチは守備が弱いと言われてなかったか?
よく見ると、3つに分けたボール奪取エリアの内、前線2つのエリアで奪ったものは5回ないし6回で、ペナルティエリア付近のものが4回。とするとやはりきちんと守備でも力を発揮したと評価できる。
続いて最終ラインの4人。合計で25回と全体の54%を占める。
もう1人前のシミッチも加えると、後ろの5人で35回、全体の76%のボールを奪っていることになる。なお、最終ラインとはいえ、25回中の10回が敵陣でのもの。
ただし、これはポジショニングが後ろに偏っていたわけではない。最終ラインの25回の内10回が敵陣、シミッチを加えた35回の内12回が敵陣であり、むしろラインの高さを表している。
前線では、三笘や家長のボール奪取数が少ないが、最終ラインのボール奪取エリアの分布の高さを考えると、上手く外へのパスコースを塞いで中盤にボールを誘導し、チーム全体が連携してボールを奪っていたといえる。
シュートまでの手数は少ない
最後に、ボール奪取後、どれくらいの手数(=パスの数)をかけてシュートに持ち込んでいるかを見てみる。
1分の登里の奪取から(自陣):3本
2分の山根の奪取から:2本
6分のジェジエウの奪取から(自陣):9本
16分のシミッチの奪取から(自陣):4本
41分のダミアンの奪取から:1本
47分のシミッチの奪取から(自陣):4本
64分の登里の奪取から:4本
65分の三笘の奪取から:0本(ゴール)
58分の旗手の奪取から(自陣):5本
ボール奪取からシュートに持ち込んだもの(スローインを含むセットプレーからのものはカウントされていないのでスタッツのシュート数とは異なる)が合計9本あるが、そのうち5本が自陣でのボール奪取によるもの(=55%)。
正直もっと敵陣でボールを奪ってシュートに持ち込んでいると思っていたのだが、自陣でのボール奪取を起点とするものの方が多かった。ただ、ボール奪取率で見ると自陣は59%だから、概ねその割合に沿った数字ではある。
自陣でのボール奪取からでもきちんとシュートに持って行っていることは、やはり、フロンターレの攻撃がショートパスを重ねたビルドアップを中心とするから、と言いたくなるが、この試合では6分を除いてパスの手数は少ない。
また、自陣であっても、ボール奪取エリアの真ん中、つまりハーフライン付近のものが3-4個となる。つまり、ハーフライン付近で奪って素早くトランジションし、相手のブロック形成より前に少ないパスで崩していると言うことが言える。
こうしてみると、「ボールをどこで奪うか」「奪ってからどう攻めるか」と言うことをきちんと準備した形で実行できていたことが見てとれる。その意味では、2-0の勝利は「計画通り」と言うことが言えるのだろう。
この試合のレビューはもう一回。次回はいつも通り三笘薫にフォーカスしてみる。
(続く)