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ボール奪取マップで明らかになったサガン鳥栖の優勢:サガン鳥栖対川崎フロンターレ(11月7日)<2>

 今日はW杯予選のベトナム代表戦があった。なかなか消化不良の試合だったが、気を取り直して週末のサガン戦のレビュー2回目。

 3-1でサガンか完勝した試合だが、これをボール奪取マップで見てみよう。(ボール奪取マップを作るためにビデオを見ていて、前回誤った記述をしていたことに気づいたので前回に訂正を入れています)

 ここでいうボール奪取は、文字通り相手からのボールを奪うこと。ただし、そのままタッチに蹴り出したり、アバウトなクリアは対象とはしない。キーパーがペナルティエリア内でボールを処理した場合も含まない。青字はボール奪取がシュートにつながったもの。その下にカッコ付で表示されている数字はシュートまでのパスの数。赤字は得点に至ったボール奪取。

フロンターレは全体のボール奪取数は多いが・・・

 まずはフロンターレから。

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 一瞥して密度が高いのがわかる。

 トータルで80回。これは今シーズンで2位の数字(これより多いのはホームアビスパ戦91。ホームアントラーズ戦は同じ80)。うち敵陣ボール奪取34で42.5%、シュートにつながったもの10で12.5%。

 いずれもフロンターレとしては標準的な数字。こうしてみると0-3と言うスコアほどには悪くなかったのではないか?とも考えられる。

 しかし試合経過を思い出して欲しい。3失点はいずれも前半。そして後半はスコアに余裕があるサガンがリトリートしてブロックを組んだため、フロンターレが一方的に攻め込んだ時間が長い。

 そこで前半と後半に分けてみてみよう。前半から。

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 マップを見ただけで、ボール奪取位置が後ろに偏っていることがわかる。合計ボール奪取が33で41.2%しかない。

 うち敵陣は12で36.4%でこれも90分より大きく少ない。それも山根が右サイドで奪った4つと、ハーフライン付近のもの。アタッキングサードでのボール奪取は全くない。シュートにつながったのは3つで9%。

 ボール奪取位置は、自陣の中央レーンと左ハーフスペースが中心で、左サイドを中心に押し込まれ気味だったことがわかる。

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 こうしたことから、前半は前戦からのプレスが機能していなかったこと。ビルドアップの阻止も有効にはできていなかったことがわかる。

 次に後半を見てみよう。

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 後半は高い位置でボールも取れているのが一見してわかる。ボール奪取合計47。うち敵陣21で44.7%。シュートにつながったものも6で12.8%となり、いずれも前半よりも大幅に改善されている。

 これは攻撃が改善されたこともあるが、何よりも3点をリードしたサガンが守備に重点を置いたことが大きな要因。と言うかどのチームでも3点リードして後半を迎えたらそうするだろう。

ボール奪取、最多は山村

 個人別ボール奪取も見てみよう。

  山村:16(シュートにつながったもの2)
  車屋:12(シュートにつながったもの3)
  橘田:11(シュートにつながったもの2)
  山根:11
  旗手:7
  大島:5(シュートにつながったもの1)
  登里:5(シュートにつながったもの1)
  家長:5(シュートにつながったもの1)
  ソンリョン:3
  ジェジエウ:2
  脇坂:1
  マルシーニョ:1
  小林:1

  この日、山村が最多の16。

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 PKを与えるハンドはあったが、いいプレーを見せていたと言ってもいいだろう。

 次がセンターバックコンビの車屋。

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この2人からシュートに5回つながっているのも特筆事項。

 そこに橘田、山根と続く。興味深いのは登里と家長。

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 2人とも後半からの出場なのに、5回のボール奪取を記録している。特に家長の5回などと言う数字はこれまで見たことがない。

圧倒した前半のサガン

 一方のサガン。まずは全体から。

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 合計ボール奪取64回。うち敵陣43.8%、シュートにつながったもの7(10.9%)。

 ボール奪取64回というのはフロンターレの対戦相手の概ね平均値。対戦相手の敵陣ボール奪取率は3割程度なので、43.8%というのは非常に高い。シュートにつながったボール奪取率が10%に乗ることはあまりないのだが、この10.9%と言う数字はホームFC東京戦の12.9%に次ぐ2番目の数字だ。

 こちらも前半と後半に分けてみてみよう。

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 前半は合計で36、うち敵陣がなんと半分を超える19(52.8%)。シュートにつながったもの6で16.7%という見たことがない数字。

 いかに前半のサガンがフロンターレに対して優位に立っていたかがわかる。これに対処するために3バックにしたのも致し方ない、と言うほどの優れた数字だ。

 次に後半。

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 合計で28。うち敵陣9で32.1%、シュートにつながったものが1で3.6%。全体的に後ろに寄っており、後半は守備の時間が長かったことがわかる。点差もあり、完全に戦い方を変えたことがよくわかる前半との対比だ。


まとめ:来年に向けた楽しみ

 このように、この試合は前半と後半とで様相を完全に異にしている。まあ、3点リードすれば当たり前だ。その3点をサガンが奪い取った前半、ボール奪取マップから見てもサガンの優勢は明らかに見てとれる。

 フロンターレは高い位置でボールを奪取できず、自陣深い位置でようやく奪うことができていた。一方サガンは、敵陣で全体の50%を超えるボールを奪取し、さらにそれを効率よくシュートに結びつけていた。やはりフロンターレ対策としての準備を非常に高いレベルで練り上げてきたのだろう。

 この試合、フロンターレはポストに直撃するような惜しいシュートが多かったが、こうしてみるとサガン鳥栖は勝つべくして勝ったように思える。フロックではなく、一桁順位にいるべくしていることがわかるサッカーだった。

 それでも、惜しいシュートが決まっていれば引き分けになっていてもおかしくなかった試合であったことも間違いはなく、フロンターレとしても、相手の出方に合わせた修正能力が一定のレベルに達していることを示した試合だった。

 サガン戦、去年のアウェイ戦もいい試合だったし、今年のホーム戦もいい試合だった。退場者が出ていなければどうなっていたかわからない。この、サガンが練り上げたフロンターレ対策にフロンターレはどう対処していくのか。来年にむけた楽しみが1つ増えた。

(終わり)