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フォーメーションの駆け引き:川崎フロンターレ対浦和レッズ(9月5日)<1>

 9月5日のルヴァンカップ準決勝、川崎フロンターレ対浦和レッズ。速報レビューは書いたけれど、これまで通り何回かに分けてもう少し掘り下げてみる。

 今日は両軍のフォーメーション変化(へんげ)について、フィールド写真を織り交ぜながら見てみる。

 以下がスタメン。

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 かみ合わせるとこんなかたちになる。

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シミッチをタイトにマークしたレッズ

 ただし、レッズは守備時は4-4-2になって、小泉と江坂でシミッチをタイトにマークした。

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 現地写真で見るとこんな感じになる。

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狙われたフロンターレの右サイド

 また、速報でも書いたが、前半、レッズはフロンターレの右サイドを執拗に狙った。汰木が広めのポジションを取り、左サイドバックの明本も高い位置取りを維持する。

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 例えば下の写真。明本の位置は右サイドバックの宇賀神よりも高い。小林悠が汰木のマークにつきながら明本を気にしているのがわかる。

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 ここでもそうだ。宇賀神が最終ラインまで降りてパスの受け手になっているのに対し、明本は高めの位置取りを崩さない。

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 この場面なんかは最終ラインは3バックになり、小林悠と脇坂が汰木をマークしている中、明本はほぼウイングの位置に立っている。

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 明本の立ち位置だけでなく、フロンターレのビルドアップ時に、右サイドバックの橘田にボールが入ると非常に強度の高いプレッシングを仕掛けてきた。

 この試合、レッズはハイプレスを仕掛けてきたが、特に橘田を狙ったときの強度が高かった。橘田が本業の右サイドバックでないことを考えると、狙いとしては的確だろう。

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 この状況の中で、フロンターレはフォーメーションを4-4-2に変更する。こうすることで明本のマークに家長が付くことがはっきりして、右サイドが安定する。

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後半の両軍のフォーメーション修正

 前半の終盤は4-4-2に移行したフロンターレが優位を得たが、後半になってレッズは4-1-4-1に移行。小泉が広い範囲を動き回るようになり、状況はイーブンになる。

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 するとフロンターレは攻撃時にダミアンがトップしたに入る4-2-3-1へ。この形はこれまで見たことはないが、ダミアンのマークに付くのがショルツではなくアンカー1枚になる。ショルツ相手だとさすがのダミアンもフィジカルが互角になるため、この形の方がダミアンのフィジカルの強さを生かせるかたちだった。

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 これに対し、レッズもユンカー投入と合わせて4-2-3-1に移行する。

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このように、両軍のフォーメーションがめまぐるしく変わった90分だった。


長谷川竜也の復調と課題

 この試合、終盤になって長谷川竜也が投入された。動きのキレが素晴らしくよく、復調を感じさせたのがいいニュースだった。

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 ただ、4-2-3-1のため、長谷川が突破しても、ペナルティエリアのニアゾーンに走りこんでいる選手がいない状況が何度か発生した。そこに登里ないし脇坂が走りこめればいいのだが、やや距離があり、間に合ったときにはスペースが埋まってしまっている。

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 これはインサイドハーフがいない4-2-3-1ではしばしば起こる現象で、五輪代表でもA代表でもこの状況は時々見る。やはりサイドのドリブラーの力を引き出すには4-1-2-3の方が適しているということだろう。

(続く)