クローズアップ三笘薫:川崎フロンターレ対ベガルタ仙台(5月12日)<3>
5月12日、2-2の引き分けとなった川崎フロンターレ対ベガルタ仙台戦。
二週間前の試合だがレビューの最後に三笘薫のプレーを。
普段より高い位置だった三笘のボールタッチ
まずは三笘マップを見てみよう。
前にも一度触れたが、この試合の三笘のボールタッチの特徴はペナルティエリア角の高い位置に集中していること。それだけ全体として押し込んでいたことを表している。
ベガルタのディフェンスはポジションを守りながらスペースを埋めることを重視していたので、サイドのプレッシャーはそれほど強くなかった。
ただ、三笘がボールを持ったら、ディフェンダーは無理にチャレンジするのではなく、中に突破されないようなポジショニングを取っていた。
それはドリブルを含めたマップを見ると明らかになる。
この試合、三笘は高い位置でボールを受けている代わりに、ドリブルの距離が全体として短い。
それだけベガルタが突破されないことを重視した守り方をしていたと言うことだろう。
シュート率が高かったプレー選択
とは言いながらこの試合のフロンターレの2得点はいずれも三笘が絡んだものだ。
次にこの日の三笘のプレー選択を見てみよう。敵陣でのボールタッチでのプレー選択をドリブル、パス、シュート、ボールタッチ時のボールロストに分けてみる。
ドリブル:14(35%)
パス:19(48%)
シュート:6(15%)
ロスト:1(3%)
合計ボールタッチ数は40。去年の平均よりは少ないが最近の傾向よりは多い。去年の平均で見るとドリブル:パス:シュートの比率は37:56:7。
この試合はパスが少なく、シュートが多い。これはボールタッチの位置が高かったためにシュート機会が多く、また周囲にディフェンダーが多かったのでパスがしにくかったことを反映しているだろう。
そしてそのうち1本がゴールになっている。そう見ると、結果的に、三笘に対するベガルタの守り方が功を奏していたとは言いがたい。
左利きのセンターバックの意味
最後にパスの出所を見てみよう
登里:15
車屋:7
旗手:6
ユアボール:3
知念:2
小林:2
スローイン:2
谷口:1
田中:1
塚川:1
遠野:1
家長:1
ダミアン:1
ジェジエウ:1
左サイドバックの登里が多いのはいつものこと。また左インサイドハーフの旗手とも多い。
注目は車屋からのパス7本。これまでも、試合展開によっては左センターバック(通常は谷口)からのパスが多いことはしばしばあったが、この試合は車屋が左利きであることを生かして車屋から早いタイミングでパスが入ってきている。中盤のベガルタディフェンスが堅かったこともあり、車屋から直接三笘にパスを入れることが多かったと言うことだ。
結局ベガルタのディフェンスはどう評価すべきか?
さて、この試合のベガルタディフェンス。最終的に有効だったと評価できるのだろうか。
答えはノーであると言うべきだと思う。
ベガルタは中盤のセンターを締め、田中碧からの素早いトランジションの攻撃を封じた。フロンターレは、中盤を避けてサイドからの攻撃や裏へのパスによる攻撃を図った。
そして1点目はフリーキックを起点とした三笘のドリブル突破から、二点目はショートパスによるビルドアップから左サイドを崩して三笘がゴールを奪った。
そう考えると、ベガルタのディフェンスに適応したフロンターレがきっちり点を取ったと評価すべきに思える。
ただ、これが三笘に依存していることは事実。三笘の突破力、キープ力と、それを背景とした「ディフェンダーを引きつける力」がなければ、フロンターレは2点を奪うことはできなかっただろう。
そう考えるならば、ベガルタはできることを全部したと言うことができるだろうし、三笘個人にフロンターレが頼りすぎていることの不安を指摘することもできる。
今週末はアントラーズ戦。開幕のマリノス戦、ゴールデンウィークのグランパス戦に並ぶ、今シーズンの行く末に大きく影響するであろう試合だ。
この試合、アントラーズは三笘にどう対応しようとするのか、フロンターレは三笘プラスアルファのどのような戦いを見せることができるのか。そのあたりが楽しみだ。