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縦走用の登山靴?(登山靴あれこれ⑩)

日本の登山の形態はバリエーション、アルパインクライミング、沢登り、トレイルランと多種に渡りますが、最もメジャーなのはトレッキングやバックパッキングとも言われる縦走登山ではないでしょうか
その縦走登山は行程に登樊要素は少なく、歩行がメインであり、一般登山道と言われるある程度整備された道を時に日帰り、時に山中に宿泊しルートを歩くといったものになります。
縦走登山は「歩行」がメインと述べましたが、昨今はいろいろな登山用の靴が縦走用として売られています。それを種類別にどこが縦走に向くのか、考えていきたいと思います

トレッキングシューズ(縦走用)

日本の一般登山道を縦走するのならこのシューズが最も向いていると思います。トレッキングシューズの中にも日帰り低山に向いたソフトなものからテント泊の荷物や長期間歩くための多く荷物を背負った登山に適したハードなシューズがあります。特に縦走に向くのはハードなタイプのトレッキングシューズです。
その利点・欠点については他に記事にした通り

最近はセミワンタッチアイゼンを付けれるタイプのトレッキングシューズも出ており、区分けがわかりにくくなっていますが、アルパインシューズに比べるとソールのフレックス(固さ)は柔らかくクッション性が高い点が大きな違いで、その部分はやはり「歩く」ための靴です

上のLOWAのティカムエボとスポルティバのトランゴテックはセミワンタッチアイゼンをつけるコバが備えられたトレッキングシューズ

キャラバンのGK85は縦走用トレッキングシューズの見本のような製品


アルパインシューズ

アルパインシューズは本来の用途はまさしくアルパイン、ヨーロッパアルプスを登るための靴です。ヨーロッパアルプスは時に垂直に登り、雪渓を通過し、岩場も歩く、といった内容で、シューズにはアイゼンを付けれる固さとクライミングができるような足裏感覚と足首の動きやすさ、岩場でグリップのよいソールが求められます
それは日本の縦走登山とは用途が違うのですが、そのソールの固さと足首の稼働の良さ、グリップの良いソールは特に北アルプスの穂高周辺を歩くには向いており、特にグリップの良さはとても頼りになるシューズです。
ソールの固さも凸凹した登山道では足の安定感をもたらし、重い荷物を背負ったとしても十分なサポートがあります。ハイカットであるため岩場でもしっかりと足を守ってくれます。また、アイゼンを付けれることから厳冬期を除くほぼオールシーズン使うことができるため汎用性も高いシューズです。(保温材入りのモデルは厳冬期対応)
ソールの薄さはクライミングに必要な足裏感覚をもたらす反面、歩くという場面においてはクッション性に劣る部分もあり、ソールの固さも歩きにくさに繋がります。また、クライミングするために足先はタイトな作りになっているため、人によっては指に痛みを感じてしまうかもしれません。
その部分を理解して使えば十分に縦走用として使うことのできるシューズです

上ふたつはアルパインシューズの中でも歩行性能を兼ね備えたモデル

アルパインシューズの新機軸、エクイリビウムはアルパインシューズながら大変歩きやすく、軽い。この靴ずるい

トレイルランニングシューズ

ロングトレイルで使う人も多く、UL勢には圧倒的に市民権を得ているトレランシューズ。「走る」ための靴なのでソールは剛性よりクッション重視、アウトソールは岩場より土道に向いたラグの大きいパターンが採用されています。重量は軽く、ソールは柔らかいため実に歩きやすい。蹴りだしやすいので走らないとしても早いペースで歩きたい人に向きます
難点としてはアウトソールは岩場でのグリップに劣る部分があり、ソール全体が柔らかいため脚力のない人が使うと足裏を含む足全体の筋力に負担が強くなります
逆に荷物と体重を余裕で支えれるぐらいの脚力があり、山に慣れた足を持つ人にとってはとても有効なシューズです
山岳レースのTJARの参加者は皆トレランシューズを使っているように、鍛え上げられた人がハイペースで進むには最適といえるでしょう。
ただ、先に述べたように脚力が足らない方が軽さや流行りを求めてトレランシューズを選ぶのは良い選択肢とはいえません。また、トレッキングシューズやアルパインシューズよりプロテクションは大きく劣るため山を歩き慣れない人では余分なケガの要因になるかもしれません。縦走という用途であれば使用者を選ぶ靴と言えます

アルトラはロングトレイルで使用する人が多い印象

アプローチシューズ

こちらも最近人気のあるカテゴリーのシューズ。もともとはクライミングで登攀を開始する場所まで歩くためのシューズです。そのため、重量は軽く、岩場でのグリップを重視したソールの設定になっています。
アルパインシューズと比べると、アプローチシューズは「歩く」ための靴であり、足先はワイドな作りになっていて比較的多くの人の足に合い、靴紐は足先から締めることができるため、トレッキングシューズより細かい調整が可能です。
ソールのフレックスは柔らかく、ソールの固さを生かして歩くというより、足裏全体でフリクションを使って歩くような靴となります。ローカットモデルからミッドカットまであり、特にミッドカットモデルはプロテクションが高く、より縦走に向いたモデルといえます。トレイルランニングシューズが土道を得意とするのに比べ、アプローチシューズは岩場を得意としており、特に北アルプス穂高周辺に相性が良いと感じます。実際、北アルプスでは多くの方が履いているのを目にしました。
難点としては、トレッキングシューズに比べソールが薄いため足裏への負担が大きいこと、グリップ重視のソールのため摩耗が早いことでしょうか。
トレイルランニングシューズと同様、使う人を選ぶカテゴリーの靴ですが、脚力があり、山に慣れた方からすればとても有益な靴です。
トレッキングシューズに寄せた作りのものもあり、そのタイプなら山に慣れていない方でも積極的に選んでも問題ないモデルも出ています

スポルティバのTX5はアプローチシューズカテゴリーの中ではトレッキングシューズ寄りのモデル。ソール張り替えができれば最高なのに、、、

流行りのせいか、キャラバンもアプローチシューズを手掛けている

個人的にこのモンチュラのヤルテクノはもって評価が上がってもよいと思う。私は北アルプスの難ルートを歩くならこれを選びたい



以上のように縦走用の登山靴の選択肢は多くあります。自分の用途、脚力、体力にあった靴を選択できるとよいですね!


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