怒涛の連戦を前に 〜J2リーグ第8節 vsV・ファーレン長崎 第9節 vsヴァンフォーレ甲府 備忘録〜

個人的な都合により8節の長崎戦を更新することなく9節の甲府戦が行われてしまいましたので、今回は2試合分を一気に振り返りたいと思います。


チームとしての意思統一が気になった長崎戦でのワンプレー

まず29日水曜日に行われた長崎戦についてです。この試合は1-2での敗戦となりました。首位の長崎相手にイウリが退場になりながらも河野のゴールで追いつくなど健闘を見せました。ただ、試合の入りとセットプレーでの失点により勝ち点を逃したのではないかと感じています。

そんな長崎戦でこれだけは残しておきたいというプレーがありました。今回取り上げるプレーは前の試合からも気になっている部分であります。チームとしてそのプレーが許されているのかどうかが非常に重要だと思っていまして、今回取り上げます。

そのプレーは54分のピンチの場面です。ペナルティエリア内からの玉田のクロスを山田のセーブで防いだ場面で、中継の中でも山田のビックセーブと言及されていました。一見ピンチの場面を山田の好プレーで防いだように見えるかもしれませんが、私としては自らが招いた必然のピンチで、2点目を奪われ試合を壊しかねない場面だったと見ています。ですからただ単に山田のビックセーブで終わらせてはいけないと思います。ではなぜそのように考えるのかを述べていきます。

まずこの場面は試合時間53分30秒付近のへニキがヘディングでパスしたボールを山田がキャッチしたところから始まります。山田が菊地に預け、山口は佐藤が左サイドに下り、高がアンカーの位置に立つ3-1ビルドアップの形を取りました。

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(54分40秒の場面です。長崎の最終ラインのところは画面外なので想像でしかありませんが、おそらくこんな感じでしょう。ここでのポイントは中盤の佐藤が左サイドに下りて行ったということです。)

その後、菊地からへニキに渡ったところで正面に立つ澤田のプレスを受け、へニキがキーパーの山田にボールを下げます。

はい!ここが大事なところになります。キーパーの山田がボールを持ったところ54分58秒で止めてみましょう。以下の通りになっています。

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長崎陣の状況は全く分からないので見逃してください。大事なのは最終ラインの3人が広がっていて、特に佐藤が左の大外にいるということです。山田としては近いところへのパスコースを見出せない状況になっています。それを察してか中盤の高や画面外の吉濱が山田を助けようと下りる動きを見せます。

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高と吉濱はそれぞれ矢印の方向に動きます。2人のこの動きから、近いところでパスをつないでこの状況を打開しようという意思を感じることができます。ただ、山田が迷った挙句選択したプレーは小松へのロングボールでした。これが私が気になった選択です。なぜなら、選手たちのそれぞれの動きと山田が選択したプレーに整合性が見出せないからです。そもそも最初の段階で中盤の佐藤がサイドに開き、長崎の2トップの脇から進入しようという意思があります。ただそれが封じられキーパーに下げざるを得なくなりました。今度は高と吉濱が下りてここでもつないでいこうという意思を見せます。それなのに山田は前線の小松へ直線的なロングボールを蹴るのです。さらにそのキックの方向は高と吉濱が動いた丁度逆向きです。これは、小松と二見が競った後のこぼれ球を拾う人が誰もいないということを意味しています。

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小松が二見と競り合っている地点の周りにいるのは長崎の加藤とカイオ、そして玉田と澤田です。山口としては佐藤がサイドに流れていて不在、高と吉濱は矢印が逆を向いていたという状況になっています。そこに来てボールは直線的に低い軌道で飛んできているので小松が横のイウリや川井に落とすのは至難の技です。状況的に見て100%長崎が有利な局面が完成しています。

こうなってしまったのであれば、意思を貫いて高か吉濱にパスをつけるか、畑に寄せられる前に左の佐藤や橋本のところに持っていくしかないかと思います。現実的なのは左に持っていく方ですかね。仮に相手にパスカットされたとしてもサイドなのでダメージが少なくて済むのと、パスがずれて相手のスローインになったとしてもまた構えて守備を始めれば良いだけです。

ただ、結果的に最も危険な真ん中にボールを送ってしまいました。この後こぼれ球をカイオが拾い名倉に渡ったところで畑が斜めに走りヘニキを引きつけます。そこにできたスペースに玉田が走り込んでペナルティエリアに進入となりました。

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なぜ玉田がこんなにフリーなのかと思われるかもしれませんが、川井はそもそもこの直前に高い位置をとっていて戻れるわけがないのです。そこでヘニキが畑の動きに釣れてしまったことにより玉田がフリーという状況が生まれたのでした。

ここまで一連のプレーを振り返ってきましたが、チームとしての一貫した意思が感じられず招いたピンチだったと言えるでしょう。このロングボールを蹴った後どうするか問題はずっと気になっているところであります。私の振り返りでも磐田戦で言及しましたし、北九州戦でも31分の高が蹴ったフリーキックのところが同様の理由で気になっています。

チームとしての基準がどのようになっているのかを意識しながら今後も見ていきたいのですが、ここは即大ピンチに繋がりかねないプレーだと思うので改善を期待したいと思います。


山口らしさが見えた甲府との一戦

さて、ここからは甲府戦を振り返りたいと思います。前半から良い形で相手ゴールに迫る形を作り先制点を挙げたものの、後半にまたもやコーナーキックから失点し1-1のドローとなりました。

この試合は山口らしい相手ゴールに矢印を向けるサッカーが披露できていたと思いますが、そこにはチームとして共有されていただろう形があったかと思います。サイドにボールが出た時に、裏へ抜ける選手や手前に下りる選手へワンタッチでパスが出ていました。この辺りから山口がイメージしていた通りにボールを運べていたのではないかと考えます。

ただ、同時にこの試合で良い形が作れたのは甲府という相手だったからこそだという側面を忘れてはいけないと思います。それは甲府のスタンスによるもので単純に甲府が強い弱いということではありません。甲府はボール非保持の際、自陣にブロックを引き待ち構えるスタンスを取っていました。度々中盤の武田が前に出てくるものの本格的に敵陣でボールを奪ってやろうというプレスではなかったと思います。

ですから、山口は比較的簡単にハーフウェイラインを越え甲府陣内に進入することができていました。つまり、この試合ではこれまで課題であると考えられるビルドアップで相手のファーストラインを越え、良い形で敵陣に進入するということが問題にならなかったのです。もちろん内容的に良い試合ではあったと思うのですが、この課題が解決されたわけではないのでほっとするわけにもいかないと感じています。前から強めのプレスをかけてくる相手と当たった時にどうなるかはまた別の問題だと思うので、その時はその時でまた注目したいです。


交代選手に求められているプレーと私の思い

そして最後に残しておきたいのが交代選手の活躍についてです。今シーズンは過密日程ということもあり、5枚使える交代枠が勝敗を左右するキーポイントになることは一定間違い無いと思います。交代によってギアを上げられるかどうかは重要です。

この試合で霜田監督は交代枠を4枚使用し62分に高井、71分に森、87分にヘナンと清永を投入しました。ただこれらの選手たちがチームのギアを上げるためのプレーをしていたかというと少々疑問が残ります。特に早い時間に投入された2選手にはより高いパフォーマンスを期待していました。

監督のコメントを見ても、交代で入った選手に求められていることは「点を取ること」です。ですから、チームを助ける積極的な守備はそれほど行いません。私個人としてはそれを行っても良いのではないかという気持ちはあるのですが、そう決めているなら良いと思います。

そうした時の私の思いは、攻め残りOKと決めているのであれば、試合を決めるプレーを期待したいのです。80分のクロスを何とか小松に合わせてほしい、角度はなかったですが、79分のシュートを決めてほしい、もっとチャンスを作ってほしいと思ってしまいます。

誤解がないように申し上げておくと、私の考えは攻め残りだけではなく、もう少し戻っても良いのではないかということが先にきます。守備の際、チームの助けとなるようにエネルギーを使っても良いのではとの考えです。先ほど言及した決めてほしいという思いはその次にきます。あくまでも、攻め残りを求められているのなら決めてということに過ぎません。

このようなことは、スタメンで出場した浮田や吉濱のプレーを見ていたからこそより強く思ったのかもしれません。

栃木戦からは怒涛の連戦に突入します。今まで以上にチームの総合力が試される局面に突入します。その中で誰がチームを引っ張るプレーを見せるのか、そういった選手たちの数がどれだけたくさん増えていくのかを楽しみに試合を見たいと思います。


*文中敬称略

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