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骨になっても反省するのみ。

長男…大和(仮)小学4年生…9歳
次男…晴樹(仮)小学2年生…7歳

私は、二人との母子家庭を終えた。
女の大厄と言われる年だった。

この年齢の男の子が
《 活発で 言うことを聞かない 》
それは、当たり前かもしれない。
うちの子は、そんなもんじゃなかった。
特に、長男。

幼稚園の年少で、早々に
《 立たされデビュー 》
幼稚園に行くと、担任の先生が
渋い表情で話し出す。
『 もう…大和くん、全然 言うことを
 聞いてくれなくて…。
 今日は、廊下に立たせてました 』
言うのが辛いことは、よく伝わった。

 ・先生の言うことを聞かない
 ・皆で鈴の練習中に、教室を走り回る
 ・勝手に教室から出る
先生の手に負えないとき、
大和は廊下に立たされ、常連となった。
平成でも立たされるって…(苦笑)

卒園式という場においても、
『 大和くん、何してるの! 』
『 大和くん、ちゃんとして!! 』
『 もぉー! 大和くーん!!! 』
3回も、先生に大声で名指され  注意。
《 穴があったら入りたい 》
あ~、こういう時に使うのか!
へんに納得してみたりした。

これは、まだ笑い話。

小学生となった大和は
パワーアップする。

ある日、私は思いつく。
『 3人で家族旅行に行こうね 』そう言って
500円貯金を始めだした。
百均ショップで売っていた
小さな缶の貯金箱を購入し、
私の背より高い 食器棚の上に置き、
地道に貯めていった。

ある程度の重量感を感じた頃には、
もう私は 満足したのか、
500円を貯金箱に入れることも減っていた。
もはや、その存在も忘れかけていた頃、
不思議と何故か ふと思い出す。

そして、愕然とする。
手を高く伸ばし 食器棚の上から
取った貯金箱を目にして
『 えーーー!? 』
もう、開いた口が塞がらない。
いや、缶の…。

缶の 硬貨投入口は
豪快なまでに 引き裂かれていた。
残された500円硬貨は数枚のみ。
『 やられた… 』

学童の先生か 担任かが調査した結果、
どうやら、学校帰りにコンビニに行き、
友達に大盤振る舞いしていたらしい。
来る日も  来る日も…。
( 友達にも あげたなら、まだマシかぁ~ )

ある日、私の友達を巻き込んで
今でいう テーマパークに行った時の話。
その帰り道…《 何かが…へん…?? 》
嫌な予感がしてならない。

イスに座ってる大和の手が、
ズボンのポケットにあるが、何か不自然。
ポケットの中で〈 もぞもぞ 〉と動く。
ん!?

目線を晴樹に向けてみる。
何故か、大和と同じ動きをしている。

これは、まさか…。
私の勘が鋭いのか、彼らの演技が下手なのか。
( コレは、上手くても困る )

『 二人とも、その手を出しなさい 』
二人は、困った顔でフリーズする。
『 早く 出しなさいって
 言ってるでしょーっ! 』
私は 大声で言いながら、強引に手を出した。
ポケットから出た 二人の手には
大事に 大事に
いくつかの キーホルダーが握られていた
『 ふざけるなーっ!!! 』
もはや、絶叫に近い。
後日、二人を連れ頭下げまわり、
代金を清算する。

恥ずかしかった。

そのテーマパークでの記憶は、
私たちが 頭を下げたことで
困り果てた定員さんの顔だけ。

こんな話は まだ他にもある。
昔で言う、校内暴力だとか 家庭内暴力の
類ではなっかたけれど、
当時の私には、自分の幼少期とは
あまりにも次元が 違い過ぎていた。

そして、日常的な子育てあるある。
朝、起きないことから始まり
片づけない、好き嫌いが多く ご飯を残す。
宿題をやらない…。

毎日のように注意し、怒り、怒鳴り。
そして、手が出るようになってしまった。

( これじゃ、あの親と同じ。
 いや、違う。私は素手。
 あの人は柄でやった。
 私は凶器は使ってない。)

自分に 言い訳をして正当化していた。

でも、ハッキリ覚えている。
私の手が 上に動くと
子供の手は 瞬時に自分の頭を覆う。
体を丸めて、私に背を向けて。
( おびえていた…私に。)

結局、連鎖していた。
一番 イヤだったのに。
一番 知ってたのに。

頭のどこかでは ダメだって理解していたはず。
でも、子供たちは 変わってくれなかった。
( 私が変わらないのだから、当たり前だ )
私も、変わっては いなかった。

日常化は していなくとも
その環境は、戻ることなく続いていた。

別れた旦那と、子供のことで
もめることもあった。

《 母子家庭だから 》って、
後ろ指をさされるのは 避けたかった。
「 ちゃんとしなきゃ 」
という思いでいっぱいだった。

そのうち…
  朝 起きると、子供たちがいない…
  わーわー泣き叫ぶ 私
そんな夢を 頻繁にみるようなった。

嫌な予感しかなかった。
以前にも3回、正夢をみたことがあったから。
不安で 不安で たまらなかった。
自分なりに、言動には注意していたつもり。
怖かったから…。

けれど、間もなく 現実となってしまった。
6月2日( 今日か…)
女の大厄、真っ只中。

あの日…私のどこかで、
崩れ去っていく自分を感じた。
自分の理性が、まるで水風船を
握りつぶされるような…
破壊寸前だった。

受話器を手に、
『 今すぐ、二人を迎えに来て 』
元旦那に お願いした。
混乱していた私は、他に何を
話していたかは覚えていない。

ただ覚えているのは、
子供たちに
『 母ちゃんは、おれら 
 いなくなって 寂しくないの? 』と
聞かれたこと。
( 淋しいに決まってるだろぉが(泣) )
声を出すことは出来なかった。
溢れ出そうな涙を、
堪えるだけで必死だったから。
( 自分が悪いのに… )

そして何故か、家を出る間際に
大和が おにぎりを作って、
私に差し出してくれた。
作ったこともないのに。
安い海苔に包まれ、塩気のない
小さく なんとなく丸いおにぎり。
始めて食べる、世界一の おにぎり。
ぐしゃぐしゃに泣きじゃくって食べた私。

あの時、あの子たちを守るには
もぉ、それしか思いつかなかった。
ほんの欠片しか残ってなかった理性が、
そぉ判断した。
その結果に後悔はない。
少なくとも、あの子たちを
危険から遠ざけることは出来た。
「 こんな私といたら、しあわせに
 なれるわけがない 」
どこか、それは 気づいていたから。

悔やむのは、
母親として…ダメだったこと。
人生 最大の後悔。

それから4年、私は泣き続けていた。

少しずつ子供たちのことで
泣くことも減ってきたころ、
私は 逆の立場におかれていた。

その時 付き合っていた彼にDVを受けていた。

悲惨で、哀れで、惨めだった。

彼は、気が向くと 餃子を作ることがあった。
餡を作り、皮まで自分で作っていた。
時間をかけ、大量に作る。

いざ食べると、あまりの量に
食べきることは出来ず、
『 ごめんね 』と謝る私に
『 なんで残すんだー! 』
彼は、叫びながら残った餃子を
ゴミ箱の中に 放り込む。
それでも気がおさまらず、
『 うぉーーーっ!!! 』
声にならない声で絶叫しながら
さっきのゴミ箱を、私の頭の上で
逆さにして振るい落とす。

ある時は、何かが気に入らずに
包丁を取り出しベッドまで行き
マットレスを切り裂く。

二人で飲みに行った帰り道、
また機嫌を損ねる。
私の髪を引っ張ったり、
腕を後ろに回し、ねじり上げたり、
腕をつかんで、引きずり回す。

《 痛い 》とか《 怖い 》といった感情はない。
「 またか… 」という程度。
どこか冷静なので、声も出る。
『 誰かー 』『 助けてー 』
叫んだところで誰も来ない。
「 そりゃ~、巻き込まれたくないよね 」
「 でもさ、110番通報ぐらい… 」
そんなことを考えながら、
「 終わるの 待つか 」と助けは諦めた。

おかげで 肘は、今でもヘンに曲がったまま。

彼とは、同じ飲食店で働いていた。
時に、お店の人からも電話もある。
ある日、携帯が鳴るが 名前が出ない。
電話に出ると、お店の人だった。
知り合いは、全て登録するので
違和感があった。
お店の人、男性と思われる名前は
誰であろうと全て削除されていた。
携帯をへし折られることもあった。
真っ二つになった携帯は、
着信があると、無音で ただ
ブルブルと小刻みに動く。
その動きが、どこか滑稽だった。

朝 出勤前、この時は彼のキレ具合が
とんでもなかった。
私は、部屋の片隅で 彼の腕に
締め上げられていた。
「 苦しい…と言うより、
 なんか呼吸がしずらいな~ 」と思っていた。
彼は、どんどん力を入れ締めてくる。
「 そろそろ、私も 終わりかな 。
 まっ、私なんか 生きてない方がいい 」
そぉ思ったあと、私は 落ちた。

おそらく、すぐに戻っていたと思う。
今度は、包丁を振り回しはじめた。
長引く状況にも嫌気がさし、
その後、隙を見て 家から逃げ出し、
110番通報した。
遠く後ろの方から、警察車両の
サイレンが小さく聞こえてくる。

これを機に、私は彼から逃れた。


この DV を受けた苦痛。
私は、責める立場にはない。
あの子たちは、同じか…
それ以上の苦しみを耐えていた。

どんなに辛かったか…
どんなに哀しかったか…
きっと、どこかに救いを
求めていたに違いない。

その時、
私は、あらためて痛感する。
子供たちの悲痛の叫びを。

そして、考える。
子供のことに限らない。
そう、暴力・圧力・権力…
力で人を抑え込んでは いけなかった。

私は、子供たちに よく話していたことがある。
『 男の子は、女の子に
 叩いたり、殴ったり…
 痛い思いをさせては いけないよ。
 男の子が、女の子より力が強いのはね、
 弱い女の子を守るために あるんだよ。』
私が やってちゃ、ダメじゃないか…。

私、本当に変わらなきゃダメだ!!

初心を忘れるな!!

誰一人として、
同じ思いをさせてはいけない!!

あれ以来、
人がもめている声を聞くのも嫌だし、
怒鳴り声を聞くと、胃が痛くなる。
だからこそ、忘れない。

でも、感情的になりそうなこともある。
その時は、一呼吸おく。
私の場合、自分を客観視できる
ところがあるので、なんとか冷静になれる。
ずっと、自分との闘い。

そのうち、心も思考も
穏やかになってくれる。
穏やかになると、
言葉も 和らいでくる。

幸いなことに…
私の息子たちは、彼らの父親の手で
立派な大人となった。
あんなダメな私を、一度も責めることもなく
フツーに親子でいてくれる。
有難すぎる。
彼らは、すでに 私より成長している。

ただ 未だに 私の夢の中では、
彼らは あの時のまま…
夢の中では、彼らは成長してくれない。
私が、一生…ずーっと忘れずに
罪を背負っていくかのように…。

今でも、虐待・DV・パワハラ…。
哀しいニュースを耳にする。
どうか気づいてほしい。
救いの手立てがあることを。

弱者が救われる世の中になってほしい。
心から願う。










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