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8月の日記

ふと思い立った吉日が今日だったので、今夜は8月の振り返り等というものをしてみようと思う。

日記とは銘打ったものの、来月・再来月と継続していけるかは不明である。noteという文明に触れたばかりの若輩者のくせに身も蓋もないことを言わせてもらうと、何と私という女は三日坊主なのだ。生まれてこの方二十数年、三日坊主をやってきたから、もう結構堂に入っている筈。最悪の自己紹介である。

そも、31日間という決して短くはない日々をぎゅとひとまとめにしてしまおうというのだから、さもありなん。ずぼら此処に極まりという感じだな。

とはいえ、これもまたある種の愛嬌であると信じてもらえるならこれに越したことはない。ひとつの暇つぶしとして楽しんで頂ければ幸いです。



・はじめに 夏が暑すぎる


夏を思うこと。
今年の夏はどうだったかと振り返ること。
その瞬間、秋が始まっている気がする。ならば今は既に秋なのかと問われたならば、曖昧に笑むしかないのだが。

皆さん、今年の夏は如何でしたか? そうですね、うんざりするほど暑かったですね。湿気が酷くて平時沼地在籍中と言わんばかりだったし、日差しなぞは、まるで私を嬲っているのかと疑ってしまうほどぎらついていましたね。腹立たしさなんて疾うに通り越して、最早残されたのは虚無が一つ。嘘、駐車場に停めてあった愛車の運転席に乗り込む度に、羅刹の如くキレ散らかしていた覚えがある。何処のどなたが見ているとも知れぬから、ちょっとお上品ぶってみただけだ。多分冒頭の、三日坊主の件で、もうすでに終わっていると思うけれど。

この夏の不快さを思うに、人が正気を保って生きていけなくなる限界とやらは、多分もう結構ぎりぎりのラインまで迫っているんじゃないのかなと不安になる。よせばいいのにキンキンに冷えたお水を一気飲みしてお腹を痛くしたり、かき氷に齧り付いて頭を痛くしたりなんて、そういう我慢の利かなさが顕著になっている気がするからだ。(ちなみにこれはどちらも私のことである)

年々短くなる春秋に対して、夏冬の厳しさは増すばかり。トレンチコートが似合うおねいさんになりたいと思った、学生時代の私は何を思うだろう。目ぼしい品を探している内に、春も秋も過ぎ去ってしまうのだと言えば、そんなわけあるかと憤るだろうか。いいえ本当のことです。ほんの十年の間に、季節は二つばかり目減りしたのです。
二/四季、つまり二季というわけ。

だって、祖父母と過ごした幼年期の夏は、こんなじゃなかった。

ニュースともバラエティともつかないテレビ番組を見ながら食べた、冷やし中華の甘酸っぱさ。音量を絞った再放送のサスペンスドラマだけが流れる一室。お昼ご飯を食べて暫くした後は、決まってお昼寝の時間だった。祖父のいびきと、祖母の少しばかりしっとりとした肌の手触り。縁側からこぼれるはずの日差しは、ブラインドに遮られていた。ほのかに汗ばんだ体の火照りを、扇風機の穏やかな風が冷ましていく感覚。ひんやりと、仄暗い室内。あの日私は、あの場所を海の底のようだと思ったはずだった。

それがどうだ、今年の日本なんてものは底は底でも灼熱地獄の如き有様ではないか。懐古厨と笑うことなかれ。汗が吹き出し、服は貼り付き、メイクすら溶け出すのがデフォルトという惨状になれば、きっと誰もがそう思うはずである。

しがないOLをしている私の平日の居場所というのは、自社ビル二階、扉を入って突き当りの窓際なのだが、窓の外から見える日差しすら憎かった。クーラー効いてるんだから涼しいだろう、と思う人もいると思う。涼しいと言えば、涼しい。だがひとたび扉をくぐれば、地獄よこんにちは。ますますお外へ出向くのが億劫になるという次第である。

それでもこの夏は当社比よく動き回ったと思うので、以下はその記録とする。
よろしくね、私より。


・8/11(金/祝) ネイルに行った


爪が薄くてすぐに裂ける(ピンクの所と白い所の丁度間で、横方向にぺりと千切れる。痛くはないが見た目が悪いし、不便)ので補強・保護の意味合いもかねて、ここ数年は大体続けているのだが、最近お世話になっている担当さんがとても素敵だから自慢したい。

そもそもの前提として、ずっとお世話になっていた方(この人は私の中で殿堂入りの素晴らしさ。もし戻られた際は、是非お伺いしたいと思っている)がお休みに入られたので代わりの人を探していた、というのがある。だが、2・3人巡った辺りでストレスが凄かった。ネイリストさん探しというのは実力云々以前に、センスや好みの加減が大変ネックになってくるからだ。なんか違うなあ、というもやもやした気持ちで一ヶ月を過ごすのは、ちょっとだいぶ勘弁してほしい。

そんな時に出会ったのが、今の担当さんである。ピンクの髪が大変キュートなそのお姉さんは、本当に素晴らしかった。客層的にナチュラルかわいいのオーダーばかりが来るけど、自身が得意なのはバチバチに派手なサイバーネイルなんだよね、と言ったお姉さんは、私が「派手で可愛いお姉さんおすすめのやつ」をオーダーした時、本当に嬉しそうに笑った。そして、たくさんの道具を魔法みたいに使って、彼女曰く脳みそネイル(医療従事者の友人曰くリンパ)を施してくれたのだ。私はたちまちお姉さんの虜になった。

そしてこの日は「赤くてピカピカで艶々なやつにしてください」とかいう大層頭の悪そうなオーダーをした。近々参加予定のライブが、イメージカラー赤のボーカルだったからだ。お姉さんは頷くと、赤とか茶色とかのジェルと、ピカピカの粉をいくつか取り出した。そして出来上がったのは「赤くてピカピカでうるうるの艶々なやつ」だった。このお姉さんの好きな所は、いつだって私の予想の上をいってくれる所である。次回の予約もしたし、会計では金額も見ずにクレジットを切った。多分2,3000円くらいならぼられてても分かんないと思う。



・8/20(日) ライブに行った


ふとした気まぐれに突き動かされて、ライブのチケットなどを応募してみた。ら、物の見事に引き当てられたので、ライブに行ってきた。結論から言うが、最高だった。

流行り病のこともあって、実に数年ぶりの参戦となる。ライブハウスのあの熱気というか、熱病というか、浮かれポンチになる瞬間が結構好きなので、以前はよく行ったものだ。

この日は、私が学生時代からちまちま応援していた人のワンマンツアーだった。彼のライブに行くのは初めてだったので、ちゃんとした箱を埋められるだけの人気があったことに驚いた。侮っていたわけではない。画面の向こうにいる貴方は確かにとても素敵だったが、ファンの数が目に入るような場所に、私はいなかったというだけの話である。

似た趣味を持つ友人と二人、二階席から貴方を見ていた。月並みな言葉ではあるが、貴方は、本当に生き生きと輝いていたと思う。揺れる髪、翻った袖、跳ね上がった足。ギターに伸ばされた手は、想像していたよりもがっしりとしていた。

貴方って生きているのね。0と1でしか知ったことのない貴方が動く姿は、本当に素晴らしかった。昔聞いていた大好きだった曲も、ライブが決まってから慌てて覚えた最近の曲も、どれも格好良くて大好きだった。

疲れも、汗も気にせず、貴方を見ていた。
変わらないものなんてないけど、あの日の私は多分幼い頃のままだった。



・8/27(日) すけべ怪談に救われた


すけべ怪談とは何ぞや、という人は少し待ってほしい。大丈夫、多分皆が思っていることだと思うから。あとで説明するから待ってほしい。

そも、この日は、昼前から嫌なことがあったのだ。些細なことだと人は言うが、私にとってはもうなんと言うか、またかようんざりだな、みたいな感じ。これが結構かなり辛くて、蔑ろにされた自分の気持ちをどう上向きにもっていけばいいのか分からず、ただモヤモヤとした不満ばかりが渦巻いていた。私は自分の機嫌を自分でとれる筈の大人なのだが、それがちょっと揺らいじゃうかもしれないというレベルだった。

そんな時、推しが私を助けてくれた。

こう言っては語弊があるか。助けられたと言うか、全てがどうでも良くなった。そう、全てはすけべ怪談のお陰である。

私の推しはたいそう様子のおかしなピエロなのだが、その男は毎年夏に『すけべ怪談』なるものを開催しているのだ。リスナーから、怪談の中に一縷のすけべさを滲ませたような体験談を集めては朗読するという、ちょっとだいぶ正気を疑う(これは褒め言葉です)催しなのだが、今年度は8/26夜半~8/27夜更けで開催されていた。そこにこう、私も何かしらのすけべ怪談を送りつけていたというわけだな。

そしてそれが選ばれた。

私は、自分の推しに自分のすけべ怪談を朗読させたのだ。しょぼくれている場合じゃないことはお分かり頂けただろう。嬉し恥ずかし初体験。喜べばいいのか恥じらえばいいのか、男の声を何度も聞き返し、「嗚呼やはりこれは私の書いた体験談だ」とする度、泣きたくなるような叫びたくなるような気持ちで一杯になった。そこに怒りや悲しみの付け入る余地はない。私は推し(が自分のすけべ怪談を朗読しているというシチュエーションの奇妙さ)に救われたのだ。


・8/31(木) 夏の終わり


夏の終わり。
推し2が、無期限の活動休止に入る。

私が彼らを好きになったきっかけというのは、「おじさんたちがローションカーリングをして腰を痛める」という動画が、YouTubeのおすすめに流れてきたことである。馬鹿みたいだし、実際あまりにも馬鹿馬鹿しかったが、最高に面白かった。そして多分、そのユーモアに愛おしさを覚えた辺りから詰んでいたんだと思う。

メイド服姿のエルフ(かなり濃いめのオネエ、後に変態女装おじさんと判明する)や、白スーツ姿のピエロ(後の推しである。メイクは正統派ピエロの白塗りだったが、睫毛が異様にばさばさだし髪色も派手だった。あと手足が長すぎてアメンボみたいな動きだなと思うなどして最初は普通に怖かった)が跋扈する中、一人だけシンプルな出で立ちをしたおじさんがいたのだ。どうやら主催らしいぞと見守ったその彼こそが、推し2だ。明日(9/1)から無期限休業に入るナイスガイである。

私は、年上のちょっと抜けたところのある男性に昔から惹かれるタイプの女なので、すぐに飛びついた。もうそれはそれはすぐに飛びついた。よくよく見ればエルフもピエロもみんな「年上のちょとっと抜けたところのある男性」だったし、他にも素敵なお兄さん・おじさんがたくさんいた。 は?聞いてませんけど、もっと早くお勧めしてよYouTube。

少しずつ彼らを知って、彼らを好きになった。子供っぽいところ、酸いも甘いも噛み分けた大人らしいところ。漫才みたいな掛け合い、頓痴気な会話、はっと目の覚めるような一言。全部が好きだった。

寂しくないと言えば嘘になる。夏の終わりはいつだって、物悲しいから。けれど、健やかにあってくれることこそが幸いなので、どうぞゆっくり休んでほしいという気持ちを抱えているのも、また本当のことなのだ。

舞元さん、ゆっくり休んでね。
有馬温泉とか良いと思うから。
私より。



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