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2024年の北海道視察で見えてきたもの
神戸の地下を飛び出して、6月2日〜4日まで北海道へ行ってきました。行き先はもちろん、お世話になっている羊飼いさんたちの牧場です。
「羊飼いさんって、本当に三者三様なんですよ。たとえば羊を食材として扱う方もいれば、羊に名前をつけていらっしゃるような方もいます。お仕事を応援したくなるような考え方やお人柄、もちろんおいしさの部分も含めて、総合的に判断してお取り引きをさせていただくようにしています。日本では行政の支援がない分、生業として羊を扱うというのは本当に大変なこと。僕たちが取引先をコロコロ変えると羊飼いさんの収入も不安定になるため、長いお付き合いがしたいという想いも強いですね」
先月のnoteでは、こんな想いもお伝えしました。今回の視察では、この「三者三様」がよりくっきりと浮き彫りになり、わたしたちにとってもなにか新しい気付きが生まれたように思います。
「三者三様」に、正解はない
佐呂間市の「めぇ〜めぇ〜牧場」さんからスタートして、知床市の「五味渕ひつじ農場」さん、占冠村のトマムにある「トマムシープファーム」さん、恵庭市の「えこりん村」さんを順に訪れた今回の視察。当店から4名でお邪魔させていただきました。
このnoteの取材をしたのが6月中旬。視察の余韻も冷めやらぬなか、「今回どうだった?」という問いかけにまず答えてくれたのが、スタッフの井上です。
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「視察を終えて私が改めて思ったのは、羊飼いさんによってやりがいも使命も違うということ。それぞれの信念に基づいた羊の育て方があって、正解はないんだということでした」
実は、五味渕ひつじ農場の五味渕さんが、こんなことを教えてくれたそうなんです。
“羊飼いは大きく分けると3パターンに分類されるんじゃないかと思うんです。一つは、北海道や羊ののどかな世界観やライフスタイルを大切にする人。もう一つは、環境やSDGsへの取り組みを大切にしたい人。最後は、食材としてとことん肉質と向き合いたい人です。”
「今回訪れた羊飼いさんもこの3パターンに分かれていて、提供するお肉にも明確に違いがあります。僕たちは一律で『こんなお肉が欲しい』とお願いしていたんですが、それはエゴだったんだなということにも気付きました。また、やはり行政の支援がないために苦労されている様子も伝わりました」と、視察の手応えを感じている様子の森保。
もう少し、話を深掘りして聞いてみましょう。
日本の未来を担う放牧羊
放牧されて牧草を食べて育つ羊と、畜舎で穀物を食べて育つ羊。羊の飼育の仕方はざっくりとこの二つに分かれます。
まず前者の放牧羊でいうと、あらゆる面で先駆け的存在なのが恵庭市の「えこりん村」さん。日本では珍しい牧草での飼育を実現するために、20年以上前からニュージーランドスタイルの持続可能な管理放牧を追求されています。
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効率の良い農業持続可能な農業として、日本の未来を見据えた取り組みをされています。
そして占冠村・トマムの「トマムシープファーム」さんの羊飼いさんは、えこりん村のご出身。
羊を自然に近い状態で飼育しながら、牧羊犬にも手伝ってもらうことで、羊飼いさんにかかるコストや手間をいかに最小限に抑えられるかを研究しているご夫婦の牧場です。毛刈りした羊の羊毛も無駄にせず販売する仕組みも作っておられます。
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「実は2年前に視察に行った時は放牧の飼育を見ることができず、今回が初めてでした。畜舎ベースとはまた違った羊の生活もいいなと感じられた経験でしたね」と話す佐茂。「トマムシープファームさんでは、牧羊犬が大活躍していることや、羊だけでなく羊飼いさんの雰囲気もどこかゆったりとしていることも印象的でした。牧羊犬を教育するための時期が大変だというお話も聞きました」。
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「広大な敷地に散らばっている羊を一箇所に羊を集めて体調を確認したりするんですけど、人力だけではやはり厳しい。牧羊犬がいかに大切かを実感しましたね」と、井上もうなずきます。
畜舎で育つ、こだわりの羊
畜舎で穀物を食べて育つ羊はどうでしょうか。
知床市の「五味渕ひつじ農場」の五味渕さんは、羊肉の味わいに情熱をかける研究者のような羊飼いさん。煮た大豆をすりつぶしたり、吸収力が良くなるよう小麦を粉にしたりと、半日分の餌を作るためになんと3時間ほどかかるのだとか。
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肉の味わいにかかわる羊の去勢をお手伝いするなど、貴重な体験もさせていただきました。
「行政が支援金を出して、たとえば製粉機を購入できればその手間も少しは減るかもしれません。全部人の力なので、負担が大きいですよね」と森保。
佐呂間市「めぇ〜めぇ〜牧場」の辻岡さんも肉質に非常にこだわる羊飼いさん。お一人で担っているため、寝る間も惜しんで大切に育てておられます。羊への愛情が人一倍強いからこその辛いお話も赤裸々に語ってくださいました。
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辻岡さんの羊への声かけは愛情に溢れています。
独自の飼育を間近で見学させていただき、おいしさの理由を再確認するような視察となりました。
「おいしい」の一歩先へ
それぞれの個性が際立つ羊業界。羊を扱いたいという飲食店は増えているそうですが、少人数で運営する牧場ではお断りするケースも多いそう。簡単に頭数を増やせばいいというわけではなく、何十頭単位で増やすためには畜舎を増築したりと、人の力以外に設備投資も必要になるからです。ニーズはあっても、増やすことに限界があるのが現状なのです。
「突き詰めるとやはり行政の支援が必要ですよね。消費者のみなさんに羊の魅力が伝わり普及していくことで、羊の産業としての可能性を感じられたら何かしらの支援が生まれると思うんです。それによって生産者の方が少し楽になる。現段階では、これを一つのモチベーションにしたいと思いました」と森保は話します。
羊本来のポテンシャルを発揮させるために放牧羊は旨みを凝縮させるエイジングの工程を加えてみるなど、店に立つ私たちの羊肉への扱いもこの視察を経て進化しています。
まずはお客さまに「おいしい」と実感していただくこと。そのために、最大限においしさを引き出すための扱いやひと手間をかける努力をする。おいしさの理由につながる羊飼いさんの想いをお伝えしていく。
私たちのこれからの仕事に、羊飼いさんとお会いした視察での体験をしっかりと生かしていきます。
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▶︎「ひつじアンダーグラウンド」は、神戸で飲食店を展開する株式会社ファイブスクエアの運営するお店です。系列店舗のnoteも、ぜひご覧ください!
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