作庭私論 「旅の中」 ④
情熱の塊
「おったおったあ、早よう棒もって来い。」
朝メシ前から裏の田んぼの畔で叫んでるのは、広島県福山市の清山園の親方です。
「おう、赤じゃ。」
それはマムシです。
顔中くしゃくしゃにして笑う姿はまるでガキ大将そのものです。ゲテモノ好きの親父さん、それを焼酎に漬けて飲むのです。
作業小屋の中には、セットウやコヤスケ、コンプレッサーにフイゴなどの硬派な庭の道具に混じって並んでいるのが、マムシのはいったペットボトル。
その中に水が少し入っていて、彼らはそこで二週間ほど水浴びをさせられ、酒風呂行きとなります。当然水浴び中は元気です。
カマ首を上げカチコンッ!ペットボトルの内壁に体当たりをします。
「よう見てみい、かわいかろうこの目。」
「?・・・・・・」
関西から西へ向かうときは、大抵お世話になります。
寄るたびに息子さんとは技の試し斬り、いや試し合いをします。親父さんにはいつも情熱を分けてもらいます。
とにかく力強い方で、マキ割りをしている姿など見ると「やられる!」と本当に殺気を感じます。石を割る、マキを割る、一発でキメる。その集中力に周りの空気と一緒に吸い込まれそうになるのです。
それは庭づくりの現場でも同じで、大きな物から細かい部分まで、そのスピードのメリハリとなって庭の中へふりかぶってくるのです。
私もそんなふうに庭がつくれるようになりたいです。
つづく
次回『旅の中』⑤は、九円の因縁
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