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作庭私論 「旅の中」 ④

これは2008年・平成20年9月1日発行 庭 No.183 建築資料出版社で取り上げて頂き、作庭私論のコーナーで書き留めた、自論というよりも自身を組み上げてきた成り立ちのようなものを書き綴ったものです。
それをnoteに分割して引用します。一部固有名詞など隠す場合があります。

情熱の塊

「おったおったあ、早よう棒もって来い。」

朝メシ前から裏の田んぼの畔で叫んでるのは、広島県福山市の清山園の親方です。
「おう、赤じゃ。」
それはマムシです。
顔中くしゃくしゃにして笑う姿はまるでガキ大将そのものです。ゲテモノ好きの親父さん、それを焼酎に漬けて飲むのです。
作業小屋の中には、セットウやコヤスケ、コンプレッサーにフイゴなどの硬派な庭の道具に混じって並んでいるのが、マムシのはいったペットボトル。
その中に水が少し入っていて、彼らはそこで二週間ほど水浴びをさせられ、酒風呂行きとなります。当然水浴び中は元気です。
カマ首を上げカチコンッ!ペットボトルの内壁に体当たりをします。

「よう見てみい、かわいかろうこの目。」
「?・・・・・・」

関西から西へ向かうときは、大抵お世話になります。
寄るたびに息子さんとは技の試し斬り、いや試し合いをします。親父さんにはいつも情熱を分けてもらいます。

とにかく力強い方で、マキ割りをしている姿など見ると「やられる!」と本当に殺気を感じます。石を割る、マキを割る、一発でキメる。その集中力に周りの空気と一緒に吸い込まれそうになるのです。

それは庭づくりの現場でも同じで、大きな物から細かい部分まで、そのスピードのメリハリとなって庭の中へふりかぶってくるのです。
私もそんなふうに庭がつくれるようになりたいです。


つづく

次回『旅の中』⑤は、九円の因縁


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