ママに寄せる詩
もういないひとのにおいはずっと思い出せない
いまいるひとのなつかしさはずっとずっと遠く
遥か彼方へ飛び立ったシラサギのように
霧たちのぼる山のふもとみたいに
泣きじゃくる代わりにみんなで笑うふりをして過ごした
ひとりが泣き出してしまったら崩れてしまうドミノみたいに
もうすぐ会えなくなることを知らない子どもたち
ベッドの端に座り足をぶらんぶらんとゆらしている
暇を持て余してスイカバーを食べて
肌がすべらかでまだ温かかった
むくんだ足も生きていたからだった
たましいがあるのとないのでこんなに違うなら
わたしのたましいは何色なんだろう
彼女のたましいはどんなかたち
うごかないからだの横で畳のふちの模様を見てる
歌声はなく、ただなんとなく鳴らすクラシックギター
葬儀場がいっぱいだからまだしばらくおうちにいられるよ
つめたいものを敷きつめていちばんしずかな夏
なににもきづかないふりをしてセミの声が響き渡る
そんなに繊細に感じていたら生きてゆかれないよって
だけど、だけどそれこそが、君の持っているもの
ぼくがまぶしくみていたもの
ぼくがまぶしくみていたもの
一言も残さずに特徴のある手書きの文字覚えてる
電話の声が妹にそっくりだってみんなが言うからさ
落ち着いたころに留守電を聞かせてあげるって友だちが
最後に見た桜をじょうずに撮れないやって自撮りして
車いすを押すのきらいじゃなかったよ
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