ひとときのよはく

おもいついたことをかく

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ママに寄せる詩

もういないひとのにおいはずっと思い出せない いまいるひとのなつかしさはずっとずっと遠く 遥か彼方へ飛び立ったシラサギのように 霧たちのぼる山のふもとみたいに 泣きじゃくる代わりにみんなで笑うふりをして過ごした ひとりが泣き出してしまったら崩れてしまうドミノみたいに もうすぐ会えなくなることを知らない子どもたち ベッドの端に座り足をぶらんぶらんとゆらしている 暇を持て余してスイカバーを食べて 肌がすべらかでまだ温かかった むくんだ足も生きていたからだった たましいがあるのと

    • 旅のきおく

       年の瀬から旅をしている。ここはどこでもない、どこかの島。だれも知らないまま、少しだけの情報交換。野良犬が4匹、一緒にいるところを何度か見かけた。発泡スチロールのふたに重なるように丸くなるねこたち。猫の多い島だ。いや。野良犬が暮らしにくい世界ということだろう。  食べなれない料理を選んで食べると、新しい風景が見える、とだれかが言った。透明で、なぜだかふしぎに青い海。波は何度打ち寄せただろうか。白い泡。だれも知らないことが、そのままのかたちでここにはある。ウミウシのランデブー

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      • 誕生

        あやふやで なにも 知らないのに なにも こわくない まっさらな ひとみ あやふやで やわらかい あしあとのない 雪原 すべてを ゆだねて しはいする あやふやで いいにおい 十月 うみのなか シーラカンス かわらないまま あやふやなままで

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        • だれかが待っている

          ぼくのネムリブカ 目を覚まし おおきいほうへ 魔法みたいな 硝子のかけらが ゆっくりと 夜の淵に 到着する きみのブーゲンビリア 呼吸をする かなしくないほうへ 水の音 なつかしいにおい 扉が開く 森 だれかが待っている だれかが待っている

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          ほくろ

          きみが 死んじゃってからも ぼくは今日も 変わらず 毎日を いたずらに過ごしている 季節がめぐって 花は咲くけど もう きみはいなくなっちゃった 春の日差しの ふとんのなかで くすりの種類が わからなくなって 不安げなきみ スイートピー ぼくが ずっとそばにいるからって 大丈夫だよって 言ってあげたらよかった どんどんやせていく きみだったけど 右手は変わらず ふっくらしていて そのことが ぼくを安心させた ぼくのすきな ほくろのある右手 たましい

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          草いきれ

          白いひかり ベッドの沈みかた あの日とおなじ におい ふたつの肌 牧場では 風がなにかを ささやくけれど それはだれにも 届かない ねむい陽射し だれかの呼ぶ声 いつかとおなじ 草いきれ 赤いポスト ラブラドールレトリバー 風がなにかを ささやくけれど それはだれにも 届かない それはだれにも 届かない

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          こわい夢

          こわい夢をみた といって 泣く きみの 背中に てのひらを おなかに ホットミルクを こわい夢をみた といって 泣く きみの 昨日に オルゴールを 明日に 口笛を こわい夢をみた といって 泣く きみの あるく道に 花かごを 走る呼吸に ハイタッチを こわい夢をみた といって 泣く きみ

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          蝶々のうた

          目をふせた きみのまつげ さわることのできない とおい とおい 街あかり ちいさな声 けやきの木が 青青としていたころ とおい とおい 蝶々のうた

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          山羊

          きみが死んじゃったから ぼくは泣けない からだが浮かんでも たましいは見えない あっというま ここではない場所へ 目が合った さむがりの山羊がほほえむ そっと口笛 髪をなでてみて かわいた冬の風が ぬれたほほにつめたいね 銀色の刺繍のハンカチが ふわりと舞って 綿毛のような はかなさが きみを包んだだろう? もう一度 もう一度だけ 髪をなでてみて 髪をなでてみて

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          ワンピース

          会ったことのない ひとに 手をふることが できないように もう会えないひとが かなしい歌を うたわないように 胎内でおよぐ いきものが まだ 空気を吸わないように ゆめを みてる くりかえす 波の音に 麻地のワンピースが なびく もう かなしくない ゆめを みてる

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          ブランコ

          窓辺の椅子で うたたねしたら だれもいないプールに行こうよ きっと落ち葉がうかんでる とっておきの貸切さ 泳ぎつかれたら タオルにくるまって ホットミルクをいれてあげるよ まあるくとかしたはちみつは 眠い眠いにおいがする おひるねの時間よって 言われても ぼくらは 聞く耳もたないで 納屋のむこうのクスノキの ブランコゆらして歌ってる かなしみはいつもそばにいる かなしみはいつもそばにいる ブランコゆらして歌ってる

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          しちならべ

          ひとかかえもある 大きなグラスに 水をそそいで ゆっくりと飲む ひとかかえもある 大きな木に 寄りかかっては きみを待つ ひとかかえもある 大きな犬と 踊りつかれて 眠ってる ひとかかえもある 大きなかなしみと トランプして 遊んでる しちならべして 遊んでる しちならべして 遊んでる

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          ビスケット

          きみのすきなビスケットを ぼくが食べちゃったから きみはもういない きみのすきな犬を ぼくが追い出しちゃったから きみはもういない ぼくのすきなきみを 泣かせちゃったから ぼくはもう どこへも行けない ぼくはもう どこへも行けない

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          すり硝子

          波打ちぎわをあるく あなたの足跡を サンダル片手に なぞるように 風が歌い 波と笑う どこにもない世界が そこにあった だれでもないきみが ここにいた すり硝子みたい いまはもう ぼやけて見えないな いまはもう ぼやけて見えないな

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          紫苑

          ゆくあてのない 旅をゆく 紫苑がひらいて ぼくと同じよなこころの きみが手をふった ゆくあてのない 旅をゆく 髪かざりがゆれて きみの背中を見つめて ちいさく目をふせた きみが手をふった

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          月桃

          風がやむころには あなたはきっといない 月桃の葉がゆれるたび あなたを思い出す わたしのこころはひと回り小さく じっと息をひそめる けものみたいに

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