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【性的対象化】
※【性的客体化】【性的物象化】【性的モノ化】からも転送されています。
フェミニズム用語。
「性的客体化」「性的モノ化」まれに「性的物象化」などの訳語もあるが、すべて“sexual objectification”という同じ英語の訳で、objectに客体・対象・物体などの意味があることからこのような表記揺れが存在する。
第二波フェミニズムの中心的なキーワードではあるのだが、実は最初から曖昧で「ポルノや買春を扱ったフェミニストの議論に混乱を引き起こしている」言葉である。
まして現代のフェミニストが表現物のバッシングに用いる場合「なんとなくエッチぽい、男が喜びそう」なものをなんとなく非難めいた言葉で言う程度の意味合いしかなく、実質的には【性的搾取】や【性的消費】などとなんら変わりの無い無価値なバズワードになってしまっている。
さて、マーサ・ヌスバウムはこの言葉について7つの要素があると述べている。
1.道具性(instrumentality)。ある対象をある目的のための手段あるいは道具として使う。
2 .自律性の否定(denial of autonomy)。その対象が自律的であること、自己決定能力を持
つことを否定する。
3 .不活性(inertness)。対象に自発的な行為者性(agency)や能動性(activity)を認めない。
4 .代替可能性(fungibility)。(a)同じタイプの別のもの、あるいは(b)別のタイプのもの、と交換可能であるとみなす。
5 .毀損許容性(violability)。対象を境界をもった(身体的・心理的)統一性(boundaryintegrity)を持たないものとみなし、したがって壊したり、侵入してもよいものとみなす。
6 .所有可能性(ownership)。他者によってなんらかのしかたで所有され、売買されうるも
のとみなす。
7 .主観の否定(denial of subjectivity)。対象の主観的な経験や感情に配慮する必要がないと考える。
当然のことならば、ヌスバウムはこれらを「女の子の絵が描いてある。絵は『道具として』扱える。従って1.道具性に該当し、性的モノ化である」というような馬鹿げた意味で言っているのではない(現代では本当にこんな主張をする馬鹿なフェミニストが大勢実在してしまっている)。それでは女性に限らず写真や絵などのメディアに掲載された時点で、女性であろうがなかろうがあらゆる人が「客体化」「対象化」「モノ化」されてしまうことになり、女性差別でもなんでもなくなってしまうからだ。演説するドナルド・トランプ米大統領の写真を掲載した新聞は、それだけでトランプ大統領の「モノ化」であろうか? と考えれば、そのような解釈がいかに馬鹿馬鹿しいか分かる。
そうではなくポルノグラフィやそれに類する表現物において、「女性は男の道具に過ぎない(1.道具性)」「女に自己決定の能力なんてない(2.自律性の否定)」「女には自発性も能動性もない(3.不活性)」「どの女も同じだ、誰でもいい(4.代替可能性)」「女性を傷つけても構わない(5.毀損可能性)」「女は男の所有物(6.所有可能性)」「女の気持ちになど配慮しなくていい(7.主観の否定)」といった、これら「女性とは○○だ」という一般的メッセージを伝えているとき、それを性的客体化(対象化・モノ化)と呼ぶと説いているのである。
男性雑誌『プレイボーイ』のピンナップの視線は道徳的に問題があるとされる。ヌスバウムが典型的な『プレイボーイ』的女性描写と見るのは次のようなものである。
女優のニコレット・シェルダンがテニスをしている写真。スカートがまくれあがり、黒いパンティが見えている。「オレたちがテニスが好きな理由」というキャプション。
『プレイボーイ』の視点は、女性をその人格・出自・内面性から切りはなし、快楽のための手段としてのみ扱っており、道徳的に問題のある「モノ化」の典型である。このような写真やキャプションは、「この女がどんな女で、なにをしていようとも、性的な快楽の対象なのだ」というメッセージを伝えているという。『プレイボーイ』は女性を代替可能で商品化されるものとして描いており、女性を自己表現や感情から切り離してしまう。
したがって魅力的な女性のイラストを用いていることは問題ではなく、その内容が「女は道具に過ぎない」「女性を傷付けたっていい」などのメッセージを発しているかであり、以下ツイートなどは当然失当である。
ごく一部の層にとってのみ好感高く「普通」に見えるものを公共的に発信という誤りをまた犯している…。これ、一般的、国際的には女子高生の性的客体化を奨励しているように取られかねないよ。 https://t.co/A4RHPWCihk
— おきさやか(Sayaka OKI) (@okisayaka) August 23, 2020
日本のジェンダー【社会学】者である東北学院大学准教授の小宮友根は、ヌスバウムとともにキャサリン・マッキノンらの発言をこのように紹介している。
たとえばポルノグラフィ批判で有名なキャサリン・マッキノンとアンドレア・ドウォーキンが繰り返し主張していたのは、ポルノは「わいせつ(性欲を刺激するもの)」だから悪いのではない、ということでした。マッキノンたちのポルノグラフィの定義には、女性が「人間性を奪われ」「辱めや苦痛を快楽とし」「性暴力によって快感をおぼえ」「特定の身体部部位に還元される」ような「性的な客体として提示されている」という項目が含まれています。要するに、女性を「性的な客体」として提示することが悪いと考えられているのです。
表現規制反対派にとって実に都合がいいことに、「人間性を奪う」「辱めや苦痛」「性暴力」……フェミニストが攻撃する公的ポスターなどの表現物のほとんどに、およそ似つかわしくない言葉が並んでいる。【駅乃みちか】がいつ人間性を奪われたのだろうか? 【茜さや】氏が広告のどこで辱めや苦痛を受けたのだろうか? 【宇崎ちゃん献血ポスター事件】に性暴力描写があるだろうか? 【君野イマ・君野ミライ】が「還元され」た「特定の身体的部位」とは一体どこなのだろう?
もちろん、そんなものはない。
したがってこの小宮氏の論は「性的対象化」を口にしたフェミニストに突きつけると忽ち返事が返ってこなくなってしまい、非常に便利なのである。
対処例:
質問ですが、まさにその論考に
— HitoShinka -ヒトシンカ-@文筆業/『センサイクロペディア』編纂・『シンカ論』連載中 (@hitoshinka) August 24, 2020
「性的客体化」には、人間性を奪う・辱めや苦痛・性暴力・特定の身体部位への還元といった要素が含まれる
と書かれているのですが、それらは君野イマ&ミライのどこにあるのですか。@okisayaka https://t.co/zr56BcfuxK pic.twitter.com/3ZSnVZxjX3
すみません。
— HitoShinka -ヒトシンカ-@文筆業/『センサイクロペディア』編纂・『シンカ論』連載中 (@hitoshinka) February 25, 2020
ジェンダー社会学者の小宮友根@frroots大先生によると、性的客体とやらには女性の「人間性を奪う」「苦痛や辱め」「性暴力」などの要素があるはずなのですが、それは件のポスターのどこに存在するのでしょうか?@shirayuki1030 https://t.co/9nDGhd8j08 pic.twitter.com/1gBZDtE5Lm
参考リンク・資料:
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