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【幸色のワンルーム】

 2017年からツイッター投稿の形で始まった(のちpixivコミックに移行)「はくり」氏による漫画作品。虐待を受けた少女「幸」と「お兄さん」の、誘拐と称する同居・逃避行を描く内容で、2018年にテレビドラマ化された。

 これが実在の事件をモデルにしたもので、被害者への【セカンドレイプ】である、との風評を【太田啓子】やネット上のフェミニストらによって立てられ、ドラマ版の関東地方での放映が中止になる被害があった(関東広域圏ではAbemaTVによる配信となった)。
 なお朝日放送テレビの山本晋也社長は「企画の段階から批判があることは分かっていた。社内で議論を重ね、中身を精査し、当社の基準に照らし合わせた上で制作、放送を決定した」「このドラマは放送するべきと思っている」と敢然と答え、放送を決行した。

 フェミニスト達のいう「実在の事件をモチーフとしている」というのは全くの言い掛かりで、なにひとつ根拠がないものであった。
「似ている」「モチーフだ」などと候補に挙がった事件は座間9遺体事件、新潟女児殺害事件、慶応大生レイプ事件、朝霞少女誘拐監禁事件など。どの事件がモデルかすら全く統一感がない
 そして本当にどれひとつとしてまるで似ていないのである

 ちなみに太田啓子は朝霞説なのだが、これも全く似ていない。強いて言えば少女が被害者だと言う程度である。
 にもかかわらずインタビューで「加害者や一部の人が事件に抱いたであろう妄想を作品にした」「実在の被害者に対する中傷そのもの」なる、それこそ妄想・中傷をぶつけている。このインタビューは、後述のテレビ朝日によるドラマ版放送中止によって一般からの批判が殺到したため、弁護的に設けられたもの。もちろん、太田氏の発言に根拠は皆無である。

「現実の殺人事件、強盗事件の犯人は『これは人を殺す行為だ』『これは強盗だ』ということを通常は認識しているでしょう。その上で『こんなひどいやつは殺されて当然なんだ』『金に困っていたんだから仕方なかったんだ』『あいつは金持ちなんだから、これくらいとられてもどうってことないはずだ』などと、その行為を正当化したり軽く考えようとするようなことはあるかもしれませんが、行為そのものが『人を殺す行為だ』とか『無理矢理財産を奪う行為だ』という認識は普通はしているはずです」
(中略)
しかし一方で、誘拐犯はというと、「例えば、朝霞市での事件や新潟で女児を9年監禁していた事件などでは、犯人は『仲の良い友達として暮らしていた』『自分と一緒にいることを嫌がっていたはずはない』などという趣旨の供述をします。罪を軽くしたくて嘘を強弁しているというより、行為自体への認知が歪んでおり、本気でそのように思い込んでいるのではないでしょうか。強盗や殺人と違い、そもそも自分の行為が、被害者の意思に反する誘拐であること自体、認識していないことが往々にあります。行為自体への認知に歪みがあることが、よく見られるという点……それが、『殺人や強盗』と『誘拐』の重要な違いです」。

Cyzo woman「『幸色のワンルーム』放送中止に批判の嵐……弁護士・太田啓子氏が『誘拐肯定』の意味を語る」

 太田啓子は法律上、誘拐は本人の同意があろうが誘拐だというのを知らないのだろうか。そんなはずはない。いくらフェミニストといっても彼女は仮にも弁護士である。
 『幸色のワンルーム』の作中ではこれが正しく認識されており、犯人である「お兄さん」と被誘拐者である「幸」の両方が「これは誘拐である」とはっきり認知していた描写がある。そのうえで、作品中の幸は凄惨な元の環境から逃れて「お兄さん」と行動を共にしているのである。
 したがって同意が描かれているからといって別に「誘拐でないかのように」描かれているわけではない。太田氏は読者と、インタビュアーの無知に(おそらく故意に)意図的につけこんで、「同意がある誘拐」が描かれているだけで「誘拐でないかのように認識している作品」とミスリーディングしている。

 しかし風評被害が拡大したため、2018年6月にテレビ朝日はドラマ版の放送を取りやめた。
 ドラマを制作した朝日放送グループホールディングス(別会社)の山本社長は「企画の段階から批判があることは分かっていた。社内で議論を重ね、中身を精査し、当社の基準に照らし合わせた上で制作、放送を決定した」とし、「このドラマは番組販売であり、番組を購入するテレビ朝日さんの判断について、特にコメントする立場ではありません」と述べた。
 
 関西圏での放送およびネット配信は無事行われた。
 しかし別に、このドラマのせいで関西では誘拐が増えたとか、正当化する風潮ができたなどという話は、未だに影も形もないのである。

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