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 ドイツの民話。
 グリム兄弟によって紹介され、1937年にディズニーがアニメ映画化したことで広く世界に知られるようになる。

 フェミニズムやポリティカル・コレクトネスの信者がバッシングの標的とするジャンルの1つに「昔話」がある。
 そのこと自体が、彼らが普段広告などに言い掛かりをつけるときの定番のいいわけ「【公共の場にふさわしくない】のが問題」が嘘であることを意味している。昔話は、そもそも人々の私的な空間で語り伝えられてきたものだ。
 つまり公共の場になかったとしても、彼らは別の理由をつけて襲い掛かるだけなのである。

堺市女性団体連絡協議会の「点検」

 1989年、堺市女性団体連絡協議会は【童話・絵本研究会】なるものを起ち上げ、118作の童話や絵本の差別性について一斉点検を行った。
 この中に『白雪姫』も含まれていて「色白の女性を賛美しており、美の基準の押し付けであり、黒人差別につながる」とのことである。

『政治的に正しいおとぎ話』での改変

 日本語訳が1995年に出た『政治的に正しいおとぎ話』は、昔話をあえて「政治的に正しく」書き換えてみせることでポリティカル・コレクトネスを皮肉った本である。白雪姫も「白雪姫と7人の小柄な人たち」として収録されており、その冒頭は次のようになっている。

 昔々、若い王女がいました。
 彼女の姿を見て不快に思う人はいませんし、だれよりも気持ちのいい性格の王女だということは、みんなが認めていました。
「白雪」というニックネームがついていましたが、この表現には、白い色こそ感じのいい魅力的な色で、黒い色は感じが悪くて魅力的ではない、と連想させてしまう差別的な考えがひそんでいます。
 白雪姫はごく幼い時期から、こうした有色人種差別的な考えかたのネタにされていたわけです。彼女がそれを知らなかったのは、幸運でした。

ジェームズ・フィン・ガーナー著、デーブ・スペクター、田口左紀子訳『政治的に正しいおとぎ話』DHC社

牟田和恵の珍論

 2017年、大阪大学教授の【社会学】者・牟田和恵は、当時の「電車で眠る女性にキスした男が逮捕された」というニュース記事を引いて、白雪姫や眠り姫などの「王子のキスで姫が目覚める」というおとぎ話が性暴力を許している、とツイッターで発言した。
 ……そもそも現実では逮捕されているのだから、別に誰も「許して」はいないのだが。
 そして批判を受けた牟田氏は自己弁護の論説内で煽りを試みた。

 批判でもっとも多かったのは『おとぎ話をそんな風に解釈するなんて頭がおかしいのでは』、『現実とフィクションの区別がついていないのか』、『夢を壊すな』等々のたぐい。
  この手の方々には、文学批評というジャンルをご紹介したい。

おとぎ話と性暴力---王子様のキスは準強制わいせつ!

 そもそも白雪姫が王子のキスで目覚めたというのはディズニーのアニメ版で改変された展開なので、「文学」批評の対象ではないと思うのだが。

 グリム童話の初版本では「棺を運ばされた王子の召使が腹立ちまぎれに白雪姫の背中を殴り、喉につかえていたリンゴの芯が飛び出した」というものだ。「文学」批評を自称するなら少なくとも原典を参照して頂きたいものである。

 アニメだけ観て原作を勘違いしたまま語るのは恥ずかしい。オタクならみんな知っている。

「萌え絵絵本」批判

 また2018年には「萌え絵を児童向け絵本に使うのは是か非か」などという、是に決まっている馬鹿馬鹿しい議論が話題を呼び、河出書房新社の「せかいめいさくアニメえほん」シリーズが特に槍玉に挙げられた。
 このとき例示されたものにも当然『しらゆきひめ』は含まれていた。


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