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【2019女子ハンドボール世界選手権大会垂れ幕】

 2019年11月30日~12月15日にかけて熊本県7か所で開催されたスポーツ大会で、現地である熊本市役所周辺に掲示されていた垂れ幕。全35種類で様々なキャッチフレーズがプリントされていた。
 ところが下記画像で引用リツイートされている呟きからバッシングが拡大(元のツイートは既に削除されている)し、問題視された2種類の垂れ幕が撤去された。

 東スポWebの記事によると、ネット上では『信じられないほどひどい』『このキャッチコピーはダメでしょう』『マジでキモい。選手に申し訳ないと思わないのか』などと厳しい意見が書き込まれた」という。

 ところが、実際には垂れ幕製作に関わった熊本国際スポーツ大会推進事務局広報課の女性課長を筆頭に、担当者も半数ほどが女性、チェックした日本ハンドボール協会側のスタッフにも女性がいたにもかかわらず、特に「下品」などのダメ出しは出なかったという。安定の【作者は女性】パターンだったわけだ。

 しかし、なぜ女性がこのようなものに寛容だったのか。
 彼女らがフェミニストの言うような【名誉男性】だったからか。あるいは担当した人々がそれぞれ「他の人がやってくれる」といい加減にやってしまった、いわゆる多重チェックの弊害事例なのだろうか?

 そうではない。
 実はいずれの垂れ幕も、性的でもなんでもなかったからだ。

 これは心理学で言うところの文脈効果の模範事例なのである。

 文脈効果とは、同じ文章や音、画像などが、背景によって別の意味やイメージで捉えられてしまうというものだ。
 心理学の教科書ではよく挙げられる事例を見てみよう。次の文字を音読してもらいたい。

 「エー、ビー、シー」と読めたはずだ。続いてこちらを読んで欲しい。

「じゅうに、じゅうさん、じゅうよん」となっただろう。
 ところが実は真ん中の文字は、どちらの図でも同じである。

 しかし「エー、じゅうさん、シー」と読んだり、「じゅうに、ビー、じゅうよん」などと読んだ人はいなかったはずだ。
 これが文脈効果だ。「テクニシャン、そろってます」「ハードプレイがお好きなあなたに」が性的な意味を帯びているように見えたのも、これと同じだ。ツイートや記事の文章がそのように誘導していたから、そう見えたのである。

「ハードプレイ」という語も「テクニシャン」という語も、通常はスポーツ用語として何の違和感もない。
 他の垂れ幕に使われている語彙を見てみても「ディフェンス練習が、ほぼ、ぶつかり稽古」「選手より、戦士です」「時速100キロを、6mからぶん投げます」などと、他のスポーツに例えたり、ハンドボールが意外に激しいスポーツであることをアピールする言葉選びをしていることが分かる。

 画像1枚目の右下と左下にあるのが問題となったフレーズだ。
 順番に読んでいったら性的とすら思わない。もちろん、問題視された2枚が別にセットになっていたわけでもない。

 元のツイートでも、別にもともとこの2枚がくっつけて掲示されていたわけではなかった。離れたところにあったものを、ツイート主が別々に撮影して1つのツイートに貼り直したのである。さらに記事に取り上げられ、その記事に「女性蔑視」などのタイトルが付くことによって読者に先入観を与え、ことさらに女性に関係のある、性的な意味をフレーズであるかのような「文脈効果」を与えてしまったわけである。

参考リンク・資料:

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