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「うつくしい人」


今回は今年初の読書記録。
色々読み進めてはいるものの、1番最初に読了したのはこちらの本でした。

西加奈子さんの「うつくしい人」




出会いは図書館。

西加奈子さんの小説をまだ読んだことがなかったので、借りてみようかなあと思った際に目に止まった本。
あらすじを見て心が惹かれました。

他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのはノーデリカシーなバーテン坂崎とドイツ人マティアス。ある夜、三人はホテルの図書館で写真を探すことに。片っ端から本をめくるうち、百合は自分の縮んだ心がゆっくりとほどけていくのを感じていた-。



ずっとおんなじ離島が舞台。

最初は重苦しくなんだか楽しくなさそうに見えていたのに、途中からどんどん色鮮やかに軽やかに穏やかに美しく変化していく。

それは、その景色を見ている主人公の気持ちが変わっていくから。少しづつ少しづつ憑き物がとれていくように軽くなっていく様は、やはり見ていて気持ちがいい。

自分に興味が無い「誰か」の存在で自分を知る。
後半はすうと涙が静かに流れることが多かった。


自分の認めたくなかったことに気付き向き合うのは、本当にしんどいことで、だけどそれをしない限り前には進めなくて、改めてちゃんと向き合おうと思わせてくれた。

題名の「うつくしい人」の意味も中盤から終盤にかけて変わっていく(ように感じる)。
印象に残った文章たちを書き残します。

だから、誰の目も気にせずに、自由に、行動している人を、私は本当に羨ましいと思うんです。どこかで馬鹿にしてる、というか、どうしてそんな無軌道に行動出来るのって、呆れるところもある、むしろ大嫌いなんですけど、でも、やっぱり、憧れがあるんです、きっと。なんていうか、とてもそういう人って、とても、美しく見える時って、あるでしょう?
吸収すること、身につけることだけが、人間にとって尊い行為なのではない。何かをかなぐり捨て、忘れていくことも、大切なのだ。

扉の横にある鏡で、下まぶたについたマスカラを拭う。身支度なんて、それだけで十分だった。
私は誰かの美しい人だ。私が誰かを美しいと思っている限り。







最後に、いちばん響いたあとがきについて少し。

実はこの本は、著者の西加奈子さんが精神的にしんどかった時期に書いたものだそう。
そんな自分を救うために筆を取り、百合が生まれた。そして小説と同じように「誰か」がきっかけで長いトンネルを抜け出るのに気づく。

有名な人でも自分と同じく長いトンネルをさまようことがあるのだと知ると安心します。


今出会えてよかった本。


それでは、今日はこの辺で。
おやすみなさい。

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