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【箸やすめ】私とフランスのほどよい関係

口下手な私なんです。
よく話すよね、と言われたりもするんですが、言いたいことはほとんど言えてないんです。
でも、こんな私でも、ひとつだけ「わたし名言言った!?」と思えた瞬間がありました。

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私は20代のころ、フランスが好きで計4回渡仏しました。

1回目は旅行で
2回目と3回目は語学留学で
4回目は結婚式で(ポンデザールの上でドレス姿の写真を撮る東洋人…今となってはあり得ない恥ずかしさです)

フランス人が(特定のではありません)好きだったんです。
自由で軽やかで、付き合うと理屈っぽくて面倒くさいこともあるけれど、筋が通っていて、そしてどこかチャーミングな生き方に憧れていました。

当時の私はFIGAROを定期購読して、フランス人の彼氏が欲しくて国際交流カフェに通ったり笑、スピードラーニングで仏語の勉強をしたり、愛読書はボーヴォワールの「第二の性」、サルトルの「自由への道」だったりしました。(そう、ボーヴォワールとサルトルの関係性にも憧れていましたね)

そんな私が、2度目の留学時につぶやいたこと。

「わたし、パリに暮らしていなくて本当に良かった。もしもわたしがパリの人だったら、好きな時にパリに行くことができなくなっちゃうでしょ」

拙いフランス語で、なんとかつぶやいてみたのです。

これを聞いた語学学校の先生は、オーシブコ!アイシテルと日本語で言いながら、ぎゅーっと熱いハグをしてくれました。

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本当に大好きで大切なものって、側においておきたいし、できるなら私だけのものとして、触れていたいし眺めていたい。そんな気持ちになることもあります。

だけど、その本当に大好きなものとの距離が、あまりに近くなってしまったらどうでしょう。
たとえば、一心同体になってしまったら…。
そこに、好きとか、大事とか、そういう感覚って入り込めるのでしょうか。

一心同体だと、そういう感覚ってきっとなくなるんじゃないかなぁ。と私は思うんです。
求めなくてもそこにあるから、憧れることも、手を伸ばすこともしなくなってしまう。

たとえばそれが恋人同士だったら、
いつも抱きしめ合って、見つめ合ってばかりいたら、前を向いて歩きだせなくなるし、

仲良し親子だったら、
同じ家のなかに籠りきりだと、その居心地の良さから、世界に飛び出すチャンスを見失ってしまう。

恋人であれ、家族であれ、適度な距離感は大事だ。と思うのです。

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今では、20代の頃のように自由を貪れるような身ではありませんから、フランスとの関係はだいぶ疎遠になってしまいましたけれども。
それでも。
シャルル・ド・ゴール空港のガラス屋根の向こうに透けていた青すぎる青空を思い出すと、胸の奥がきゅっと切なく、甘やかな心地になるのです。

いつか、もう一度だけでいいから、一人きりでフランスに行きたい。夫も子供も、友人も親も、だれも連れてはいかない。私はフランスと秘密の会瀬がしたい。

せっかく、そこにいないのだから。
憧れ続けていてもいいじゃない。と思うのです。

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