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朗読

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#小説

よっぱらい

よっぱらっている。目がとろんとしていて、平衡感覚がなくなり、頭の中がほわほわとして、実に楽しいような、ファンタジーのような、全てが現実なのに嘘のような感じすらしてくる。
今日は友だちと飲んだ。しこたま飲んだ酒なんて弱いんだから、飲まないほうが良いに決まっているのに、心は飲みたいと叫んでいた。だから心に従うことにした。たとえ後悔したとしても、正直ではいられる。何よりも自分自身に嘘を着きたくなかった。

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眠い

眠い。まぶたが重い。うつらうつらする。このまぶたの重さには、恐らく、丸く、軽やかで、それでいてずっしりと重いものが乗っているのだろう。それはまるでそう、あの白くてやわっこい、マシュマロの様なものだ。そしてまぶたがそっと閉じられると、ころりと転がって、日が陰り月の夜になるのと同じくらい自然に、口の中にストンと落ちる。

そして落ちた甘やかなそれを、体は喜々として受け入れて、舌の腹で遊びながらゆっくり

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バス

曇り空。バスの中から空を見上げる。どんより。
真横を車が通り過ぎる。自転車も。道が混んでいて、歩いている人々がゆったりとバスを追い越していく。
真上から振ってくるクーラーの風が、涼しい。
バスに乗った事を後悔し始める。歩いたほうが早かったかもしれない。けれど、楽ができる。そのかわり、時間には遅れる。いや、既に遅れている。約束を破ることに、最近、躊躇いがない。
今日みたいに毎日曇りだったら、外へ出る

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夏の日の男二人

7月半ば、LINEのチャットに友達からコメントが来た。家に寄ってもいいかといった内容だった。彼はテスト期間で、気分転換に来たいんだろう。僕も丁度家にいるし、とは言っても、学校をサボって行っていないだけなのだが。恐らく、彼はそれを知っている。僕のことを心配してくれているのかもしれない。唯、僕の所が来やすいだけなのかもしれない。何であろうと、別段彼がこちらに来ることは嫌なことではなかった。

何時でも

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