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中央突破(全シュート解説):2022 J2 第38節 アルビレックス新潟×大宮アルディージャ

残留争いをしているとは思えない大宮の戦術と個人の質の高さに試合は拮抗していたが秋山のエモーショナルなゴールで見事に勝利して昇格まであと2勝に迫った俺たちの新潟。

秋山は今シーズンの途中までは新潟の選手としてのキャリアがこのまま終わってしまうのではないかと思っていた時期が長かっただけに選手もサポーターもクラブスタッフも全員が嬉しさ爆発である。

己のスタイルを信じて走り続けてきた秋山、ここに来て一気に才能が開花しいるのを目撃できたのは間違いなく今シーズンのハイライトのひとつとなる。

そんな秋山のゴールは中央突破で大宮の硬い守備を打ち破ったものになるが、そんな中央突破についてちょっと解説してみようかと思う。

ゴールが一番決まる確率が高いのはゴール前中央

当たり前の話である。

この試合のシュート分布。

そんな当たり前の話ではあるがビルドアップからフィニッシュまで全部中央から突き破るチームは存在しない。少年サッカーで神童がキーパー含めて8人抜きとかはあるかもしれない。

実際の話として、この試合の新潟のスタッツとしては左サイドが56%で中央はたったの19%となっており中央突破とは一体何なのかと言いたくなるが新潟の場合は「フィニッシュする場合にはゴール前中央から殴れ!」が松橋力蔵イズムになるし中央での殴り方の傾向としてDAZN実況解説インタビュワーが連呼していたダイアゴナルランの存在感。

この試合、大宮の屈強な442ブロックに対して新潟のビルドアップは高(ヤン)と島田にボールを出し入れしながら時々伊藤が降ってくるでしょうみたいな感じで442ブロックの中央にボールを置いて守備を中央に寄せてから空いたサイドのスペースをコミト(小見&三戸)の突撃でボールを前進させつつアタッキングサードという流れになる。あとは後ろで回して守備を引き出しておいてからの洗練された裏ポンとかサイドチェンジとかも織り交ぜたり。いつもの新潟である。

中央→外のビルドアップでボールを運ぶ新潟。いかにしてコミトにフリーでボールを渡すかという組み立てになる。この試合では小見サイド56%という脅威の数字に。

従って中央突破と言いつつもビルドアップは圧倒的に外ということをスタッツもきちんと語っている。それでも中央突破の印象が強く残る力蔵スタイル。

それではこの試合のシュートパターンを確認していこう。

前半5:30のゴメスミドル

壁が薄くて最終ラインとキーパーの間に広大なスペースがあるので決まればラッキーだしキーパーやポストが弾いたこぼれ球をコミトに押し込んでもらってもいいみたいな思い切りの良いシュート。

それでも枠には飛ばして欲しいが壁が薄いという状況から判断した結果だろうか。シュート後に弾かれることを予想した飛び込みを誰もしていないところを見るとゴメスが独断でファイヤーしただけの可能性大。

思い切りの良い島田ミドル。キーパーの前にボールが弾かれれば押し込むチャンスもある。

前半10:15の三戸コンパクトキックとダイアゴナル

三戸がピッチど真ん中から元気にドリブルで突っ込むと中央集約超ブロックを敷くしかない大宮。それに連動して小見島田谷口の3人がダイアゴナルラン(斜め走りすることで守備を戸惑わせる)で最終ライン裏を狙う。

結果的には三戸が振りの見えないキックでシュートを打つもののディフレクションで以上。パス供給先として3人も選択肢があったので冷静にスルーパスが欲しかったところだが三戸のシュートモーションを見るとどうしても何かに期待してしまう。

ダイアゴナルランで3人が一気にライン裏を狙う。守備を強制的に固まらせることができる。

前半11:00の谷口ヘッド

いわゆるデザインされたコーナーキック。デザインも守備の外しも伊藤のキックも完璧だっただけにこれは決めておきたかった。谷口のジャンプは高かったが頭に当てたボールの軌道も高かった。

最後方から守備の死角を突いて飛び込んでくる谷口。

前半12:05の伊藤ミドル

結果としては守備に当たってディフレクション。ゴメスミドルと同じ形だが伊藤のこのシーンではシュートモーションと同時に谷口と三戸がゴール前に詰める動きを見せていた。谷口はどちらかといえばスルーパスに合わせるイメージだろうか。

伊藤のミドルに合わせてゴール前に詰める谷口と三戸。こぼれ球を絶対押し込む強い気持ち。

前半15:30の小見ミドル

ゴメス伊藤と同じ形。硬いブロックに対してミドルを打つとブロックは前に出てくるしかないのでダイアゴナルな裏抜けが活きる仕組み。このシーンの特徴は小見ミドルの前に効果抜群だったゴメスのオフ・ザ・ボールになる。

小見がペナルティエリア前で十分なスペースとボールを持っている場面、当然守備側としては詰めてアタックかステイしてブロックかの二択を迫られる。守備のセオリーとしては詰めるだとは思うが最終ラインが安易に詰めると空いたスペースにダイアゴナルランというのをこの試合で繰り返している新潟である。この場面でもその形で守備をうまく崩していた。

小見がボール保持している状況で左サイドをゴメスが駆け抜ける。ゴメスが駆け抜けると守備はゴメスに寄らざるを得ないので結果として小見のマークが外れる。そりゃダメだよな!となるが大宮は守備が整理されているのですぐに小見に対して別の守備要員がカバーに入る。そうすると今度はまた違うところにスペースが生まれて以下エンドレスになるはずなのだが小見の選択肢(ドリブルでターン)がよろしくなくてエンドレスとはいかなくなる。

大宮の守備がキッチリと島田と伊藤へのパスコースを消していたというのもあるが中央に伊藤がフリーでスタンバっていたので伊藤に預けてコントロールショットとかの世界もあったはず。ボール保有者が小見ではなく秋山だったらという平行世界を見てみたいシーンだった。

小見の攻撃力をサポートするゴメスのオフ・ザ・ボール。守備を動かして空いたスペースにダイアゴナルで飛び込む島田。

前半17:20の谷口海キャノン未遂

このシーンは後方から中央中央中央で繋いだパスになる。トライアングルで崩して繋ぐ新潟にとっては珍しい形かもしれない。この日の大宮の守備強度は高かったしこのシーンのブロックも非常にコンパクトだったのでレアな崩しだったのではないだろうか。三戸の捌きが非常に怪しかったがあれだけ狭いスペースを中央から崩したのはグレートだし伊藤のボールの受け方と捌き方が抜群すぎて惚れる。これはグティ涼太郎。

守備の背後をステルスランする伊藤。そこから繰り出される絶品のアウトサイドキックでのパス。

前半23:25のフットサルアタック

裏ポンからのセカンドボールを拾って中央→外経由から一気にボールを運んでの波状攻撃。このシーンは図で見るよりも映像で見た方がインパクト絶大なので動画で見てほしい。1:30あたりからが該当シーンになる。

三戸藤原伊藤の小さな巨人トリオが表現するアートなフットボール。美しすぎる。

後半71:10の秋山ゲットゴール超突撃

見ればわかるさ。

秋山に始まりま秋山で終わる。前半の谷口キャノン未遂の中央突破もそうだが中央レーンだけで突破してゴールを決めるというのは本来難易度が高いはずなのである。それを鮮やか(鈴木孝司の兄貴は泥臭い)に決め切ってしまう俺達の新潟が誇らしい。

このゴール、伊藤は普通にランしてくる秋山にボール渡せばいいだろうにあえてのグティパスを選択するところもポイントが高いし来ることがわかっていて迷いなしにレイオフする鈴木孝司の兄貴も凄いし微妙に距離が離れたボールに対して瞬時にアジャスト&コントロールする三戸も凄いしレイオフした後にちゃんとゴールに向かってベクトルを向ける鈴木孝司の兄貴が凄いアゲインだしシュート撃ちたいけど両脇にブロックいるし外したら超盛り下がるから鈴木孝司の兄貴にボール渡しておこか?みたいなゴメスの優しいパスも偉いし「このパスには全新潟の魂が… これは5年間の全てなんだ… あとは頼むぜヒーロー… ヒーローキー…」という感じで潰れていった鈴木孝司の兄貴が凄い大賞2022だし全員の想いを昇格というゴールに送り届けた秋山がマジで偉い。ここまで蛹だった秋山が見事に羽ばたいた。バタフライ・ヒーロー秋山裕紀の爆誕。

昇格まで残り2勝。次節新潟が勝って岡山が引き分け以下なら昇格決定と条件が揃ってきました。これは昇格と浮かれるしかないでしょう!

オープンチャットでのリアルタイム解説

試合開始前

高木デン不在でも安心感のあるスタメンと控えです。

伊藤トップ下なので超絶スルーパスで多くの観客が入るであろうスワンを沸かせて欲しいですね。

イッペイが控えに入っていますので三戸松田シマブクらとの違いを確認することはできますでしょうか。

大宮は442予想ですが相馬監督なら442以外はあり得ないでしょう。町田のアイデンティティを作ったのも相馬監督ではないでしょうか。そのくらいガチの442という印象がありますが大宮の順位からするとそんなに上手くいってないのかもしれません。

とりあえずは442がプレスなのかリトリートなのかが開始15分のチェックポイントになります。

新潟のサッカーと442は相性が良いので気持ちよくホームでの勝利に期待しましょう。

442ブロックを破壊する新潟のビルドアップを解説したnoteになります。

前半終了時

大宮の442はミドルブロックでした。

大宮の狙いとしては新潟のビルドアップで絶対にヤンにボールを入れさせないという意識で前の2人を絞りつつ2列目が島田を牽制するというのが基本になります。

このシフトを攻略するために新潟はヤンと島田の位置を変えてヤンにボールを持ってもらう方法を取りますが大宮2列目の牽制が厳しくてヤンがボールを受けることができません。新潟は中央というよりはヤンにボールを入れたい意識が強いでしょうか。

うまくいかない新潟は伊藤を、1列落として235のような形でビルドアップを試みて、これには一定の効果がありました。

この形から伊藤を起点に小見にボールを預けたり谷口に打ち込んだりして押し込みます。

押し込んだあとはセカンドボール回収ショーで押し込み続けて途中ポゼッションが83%というなかなか見ない数字も出ました。

とはいえ、セカンドボール回収をミスると一気にカウンターを受けてしまいまして、2〜3回非常にまずいカウンターを受けていました。

大宮もこれは狙っている形だと思いますので後半は河田も出てくるでしょうしセカンド回収失敗からのカウンターにはしっかりとした対応をしてもらいたいです。

岡山は快勝を決めていますのでこちらも快勝と行きたいですが、この大宮は十分に強いですね。

とにかくセカンド回収失敗からのカウンターだけは喰らわないようにしなくてはいけません。

試合終了後

凌ぎきりました。ゴールシーンはエモくて素晴らしいゴールでした。マイケルと孝司のエアバトル勝率高かったですね。今日の勝利は2人の活躍無くして有り得なかったと思います。

後半は大宮が気持ち前目の守備で押し込む形が多かったですね。

大宮は戦術も整理されていますし選手のスペックも十分で残留争いしているのが良くわからないですね。岩手なんかは戦術もスペックも当然だなぁという感じでしたが。

イッペイ投入後の70分過ぎくらいでしょうか、鈴木真ん中のイッペイ右IHと三戸IHで伊藤トップ下みたいな形の時間がありました。もしかしたらこの終盤に来て新潟式235トランスフォームという戦術が今後出てきたりするんでしょうか。

残り2勝、松橋監督も言うことは変わりませんと言っていますので何も変わらずにこのまま連勝を続けて昇格と優勝まで走り抜いてもらいましょう。

(カウンターを受けるボールロストについて)全部のシーンを覚えている訳ではないのですが、シュートは中央からというのはあるのかもしれません。個人的にはイッペイが最後にパスを選択したのが印象的でした。

ボールロストについては後半大宮の質が上がって奪われる回数が多くなった印象はあります。

前半の大宮なら回収保持できていたシーンで奪われてしまうという場面がそのような印象を与えたのかもしれません。後半の大宮の修正力はなかなかのものでした。

松田はプレイスタイルが迷走している感はありますね。

あんまり明確な回答じゃなくて申し訳ないのですが、「大宮がアジャストしてきて奪われる回数が増えた」というなが私なりの見方になります。

(藤原が中央エリアでプレイする場面について)今日の藤原はかなり中央でプレイしていましたね。タックルで溢れたボールを拾ったりスクリーン掛けて拾ってもらったりという協力プレイが印象的でした。

左の小見にはボールが良く集まっていて試合終了後のスタッツは左57%という圧倒的な数字です。今シーズンの残り試合で更に化けるのではないでしょうか。

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。