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コーナーキック:2022 J2 第9節 アルビレックス新潟×栃木SC

完璧にデザインされたコーナーキック。まさにセットプレイ。松橋監督も狙いどおりとのコメント。

最初の点は、セットプレーのコーチがデザインしたとおりの形だったことも非常に良かった。(松橋監督)

https://www.jleague.jp/match/j2/2022/041012/live/#coach

CKへの入り方は練習どおりですが、どこで合わせるかは、来たところで判断しました。練習では、守備側もみんなやることが分かっている状態でやっていたのでうまくいかなかったけれど、本番では相手は自分たちが何をするか分かっていなかったので、フリーになれて決められました。(イッペイ・シノヅカ)

https://www.jleague.jp/match/j2/2022/041012/live/#player

ということで、この試合で様々なパターンが確認できたコーナーキックについて解説する。

デザインされたコーナーキック

新潟は基本的には手の込んだコーナーキックを仕込んでくる。この仕込みは相手がマンツーマン守備であることが前提となっている。

相手がマンツーマンで付いてくるということは自分の位置に守備も付くということになるので、意図的に守備の位置をコントロールすることができる。コントロールすることができれば意図的にスペースを生み出すこともできる。

新潟のコーナーキックはインスイングのボールが多い。左コーナーなら右利きの高木や伊藤が、右コーナーなら島田が蹴る。

開幕当初のヤン1人のアンカー方式から島田とヤンのボランチ2人体制に変わったのはコーナーキック要員としての島田が必要という理由も大きいはず。

最終的にはゴールを奪えれば良いのでどのプレイを選択するのかは予めサインやらなにやらで決まってくるとは思うがゴールのプロセスとしては、「Aの場所に低くて速いインスイングのボールを蹴り込んでちょっとでも触ればゴール」「BとCの場所からマークを外すようにスペースに飛び込んでフリーの状態でゴール」となる。

個別に見ていこう。

まずはAのパターン。低くて速くいインスイングのボールをAの場所に蹴り込むとキーパーのポジション的にキーパーがボールに一切関与できなくなる。ボールとキーパーの間に選手が入ったらキーパーにできることは何もない。キーパーが何もできなければ悠々とゴールできるという理屈。

当然守備側もこの形を警戒するので、ニアポストにポジショニングする選手には複数人数を付けて完全にブロックする。こうなると攻撃側はこのパターンでゴールを奪うためには針の穴を通すようなキックが必要になるので、この形からゴールが生まれたら非常に難易度の高いプレイをやったと理解しても良い。

次にBとCのパターン。基本的にゴールより離れた場所に立って守備をゴールから遠ざける。新潟のコーナーキックの特徴として、密集を2箇所に作るところにある。

密集Bにはマイケル・田上・谷口という身長の高い選手を配置して、密集Cにはイッペイ・ヤン・藤原を配置する。

守備側としては高身長の選手に合わせるハイクロスを警戒するので、密集Bの選手がゴールに向かって走り込むと守備も付いて行かざるを得ない。

こうすると密集Bの場所がそのままフリーのスペースになるので、そのスペースに密集Cから選手が飛び出してキックもその場所に蹴ればフリーでシュートが撃てるというデザイン。

この時、簡単に「フリーのスペースに選手が飛び出して」と言うものの、今回最もデザインされていたのがこのプレイであり、フリーでシュートを撃ったイッペイがフリーになった必然がそこにある。

相手の守備はマンツーマンなので当然イッペイに付いていくことになるのだが、高木が蹴る直前までイッペイはジリジリとゴール方向に守備を押し込む形でポジションを修正し、蹴った直前に一気に外に膨らむ形で走り込む動きをしている。

これだけでも十分に効果的だが、突然の動きに反応しきれない守備に対して更に藤原がスクリーンアウト(体で相手の動線を止めるプレイ)っぽいことをやってイッペイの動きをサポートする。

イッペイの走り込みをサポートする藤原のスクリーンアウト。

サッカーのルールを厳格に適用するとスクリーンアウトは進路妨害(オブストラクション)で間接フリーキックの反則となるのだが、そこはサッカーという競技において曖昧になることが非常に多いというかオブストラクションって何?みたいなことばかりだ。以下は競技規則2021/22からの抜粋。

身体的接触なしで相手競技者の進行を妨げる
相手競技者の進行を妨げるとは、ボールが両競技者のプレーできる範囲内にもないとき、相手競技者の進路に入り込み、その進行を妨げる、ブロックする、スピードを落とさせる、進行方向の変更を余儀なくさせることである。

https://www.jfa.jp/laws/soccer/2021_22/

(改めて読んだら身体的接触があればオブストラクションにならなかったりするのか?教えて有識者!)

ちなみにスクリーンアウトはバスケットボールの基本的なプレイでバスケットボールを戦術的に面白くしているプレイだったりする。

このようにデザインされた先制ゴール。

もうひとつ新潟(に限らず他のチームもだけど)がやるコーナーキックのパターンとして中央密集型がある。これはよりシンプルでトレイン型と呼ばれる縦一直線に並ぶなどの派生もあるが、基本的には誰がどこに飛び込んでボールがどこに蹴り込まれるか分からないというやり方になる。

誰がとこに飛び込んでくるか分からない中央密集型。

中央密集型の場合、密集の中心にいる選手にマークを付かせないというのが大事になり、飛び出してくる中央の選手を誰がケアするのかという対策をしておかないと守備側は混乱のうちに失点となる。中央から飛び出す選手に複数人が意識を奪われると、今度は本命の高身長選手のヘディングズドン!を喰らう。

というのが新潟のコーナーキックの基本になってくるが、このようなデザインされたプレイもコーナーキックゾーン守備の前では無力となる。

コーナーキックのデザインを無力化するゾーン守備

コーナーキックゾーン守備は人に付かずにグリッドでブロックを作るので、意識は人ではなくボールになる。極端に捉えれば人の動きは全無視して飛んでくるボールだけを弾き返すことに注力すれば良いし、それができるフィジカル優位なチームはゾーン守備が合理的だったりする。フィジカルで優位を持っていた栃木はマンツーマンではなくゾーン守備の方が合理的だったように思う。

ゾーン守備をやられるとそもそも守備の人が動かないのでデザインが無意味になる。このような状況が発生するかしないか、発生させるかさせないかというのが情報戦になってくるし、監督の読みが当たった外れたの世界になってくる。

ボールを弾くことに注力するCKゾーン守備。

新潟コーナーキックキラーのように思えるCKゾーン守備だが、新潟には新加入のフィジカル強者であるゲデスの存在がある。ゲデスの高さがあればCKゾーン守備の上からズドン!ということもできるので、この辺りも踏まえて選手起用に注目すると面白いのではないでしょうか。

新潟のコーナーキックに注目です。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。