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サイドチェンジ:2022 J2 第6節 アルビレックス新潟×ザスパクサツ群馬

ハセタクのラストパスも谷口のシュートも素晴らしいが、このプレイの素晴らしさはなんと言ってもセンターバック田上のサイドチェンジ・フィード。

この鮮やかなフィードは利き足とは逆の左足で蹴っているというところも芸術点が非常に高い!

ということでサイドチェンジについて解説。

442ブロック対策としてのサイドチェンジ

この試合における群馬の守備は442ブロックとなっており、442ブロックを攻略する手段としてサイドチェンジを利用した新潟。そしてサイドチェンジが最大限に効果を発揮した試合。

そのサイドチェンジを遂行するために起用したのがセンターバックの田上大地と右サイドバックの長谷川巧。この2人のキーマンあってのサイドチェンジ戦術。

田上はフィードが蹴れるセンターバックとして、ハセタクは縦のスペースに素早く飛び込む槍のサイドバックとしての役割を持つ。この二人が組み合わさることで化学反応が起きた。

さて、なぜに442ブロックに対してサイドチェンジが有効かという話をしなければならないが、442ブロックはコンパクトにゾーンで守って中央にボールを置かせずサイドに追い込んでハントするというのが基本になる。

このような守備を行うと、結果として442のブロック幅ではピッチの横幅全部をカバーしきれないので、ボールが右に行けばブロック全体を右にスライドしなくてはいけないし、ボールが左に行けば全体を左に移動させるしかない。

そして、移動する際にブロックの形を維持して網目を崩さないようにしないと中央を通されて大ピンチとなるのが442であり、このような442ブロックの特性を逆手に取った攻略方法がサイドチェンジとなる。

新潟は群馬を完全にスカウティングしていたようで、群馬は近年主流のプレスではなくブロックを組んでくると読み切った上で予想通りの展開に持ち込んだ新潟。

ボールと人の配置によって逆サイドに広大なスペースが生まれる442ブロック。

前半は新潟のスカウティングと戦術とそれを遂行するアルビ戦士たちに手も足も出ない群馬という構図のワンサイドゲームとなっていたが、ハーフタイムで大槻監督が見事に修正してボランチを経由して新潟守備を中央に寄せておいてから右サイドの25番小島行きというビルドアップを駆使することで新潟の守備を無力化するなどして終わってみれば3-2という試合結果。

この試合は本当に戦術の刺し合いというナイスゲームで、新潟視点では勝利という結果まで付いてきて非常に満足度の高い試合となったのでビッグスワンで現地観戦したサポーターの皆さんも良い休日を過ごせたのではないでしょうか。

田上大地というフットボーラー

この試合のマン・オブ・ザ・マッチは田上になる。

田上は今季初スタメンだった訳だが、彼は開幕から試合に出れない日々を過ごしていただけではなく昨シーズンまでアルベルト監督のもとで普通ではないサイドバックとしての適性をひたすらに積み上げてきた男でもある。

そんな田上が松橋新監督になって命じられたのは新潟に移籍してきた以来のセンターバックへの再コンバート。今まで積み重ねてきたサイドバックとしてのキャリアを活かせなくなってしまう。

DAZN解説の梅山さんも言っていたように、普通に考えればモチベーション・コントロールや試合に出れない悔しさという感情的な理由によって鈍る試合感覚など、ネガティブな要因でパフォーマンスが上がらないということは少なくない。

がしかし、田上は今シーズンも彼の中の行動原理を何一つ変えず、地道にセンターバックとしてのトレーニングを積み上げてきて臨んだ今回の試合。結果として試合感覚が鈍るどころか安定を飛び越えたハイパフォーマンスを披露してくれた。

普段、試合に出ていない選手が結果を出すことによって、多くの試合に出ている選手を引き上げることもできると思います。普段出ていない選手もトレーニングをしっかり積んでいれば、必ず結果がついてくるということは少なからず証明できたと思う。

https://www.jleague.jp/match/j2/2022/032616/live/#player

足下が上手くてビルドアップも出来てフィードも蹴れてセットプレイも強い田上大地。リーグにおけるオンリーワンの選手であることを決定づけた今回の群馬戦。

アルビレックス新潟での飛躍にこれからも目が離せません。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。