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ChatGPT登場後のレポート課題

また更新までずいぶん時間が経ってしまいました。

私が更新をお休みしている間にも、読者の方々からお声がけ頂くこともありました。大変嬉しく御礼申し上げます。

さて、ChatGPTが登場してからしばらく経ちましたが、これによる教育・研究への影響ははかり知れないものがあります。私が同僚から聞くだけでも、5月に終わったセメスター1の課題で、明らかにChatGPTを使って書いたと思われる著しい数のレポートの提出が報告されました。これはもちろん世界中で見られた現象だと思います。私自身、ChatGPTに色々と質問を投げかけてみましたが、回答には正しい部分も間違っている部分もありました。ですので、その分野の専門家である私たちにとって、間違った内容である事を指摘するのは大変ではありません。ただ、それが「ChatGPTを使って書いたものであることが疑わしい」ため、不正行為にあたるかもしれない、という報告をする→担当の教員が学生に確認する→もし不正行為があったと認められた場合には、然るべき処分をする、という一連のプロセスが非常に時間がかかりますし、我々の時間も気力も消耗するのです。

私が第1セメスターで担当していた科目の課題は、その性質上、ChatGPTを使って作成できるものではないため、問題はありませんでした。しかし、第2セメスターで担当する科目に関しては、ChatGPTを使う学生が現れるかもしれないというリスクがあったため、今年からその科目の課題を大幅に変えました。具体的にどう変えたかと言うと、学生にレポートを提出させますが、そのレポートについて、私と学生とで1対1で議論するという形式にしました。こうすると、学生がどの程度理解してレポートを書いたか、あるいは自分で書いたかが分かりますし、私が読んで分かりにくかった点や、さらに深掘りして欲しかった部分を学生に確認して、議論の時に、学生が補足する機会を与えることができました。これは、うまくいったと思います。学生も、それなりに準備をしますし、書くことが得意ではない学生は、議論で補足できますし、その逆の場合もあるからです。私にとっては、学生がどの程度講義の内容を理解しているかを見極める非常に良い機会となりました。また、この機会を利用して、学生に講義の感想を聞くこともできます。また、学生が、講義以外の大学生活のことで悩んでいることがあれば、話してくれる例もありました。

ただ、このやり方はメリットは大きいのですが、デメリットとして、時間がかかると言うことがあります。例えば、60人履修している科目の場合、学生1人当たり10分の議論をしたとしても、600分(10時間)かかります。10時間続けて議論できる日は無いので、何回かに分けましたが、これはとても集中力が必要な作業でした。また、このやり方は、制限時間厳守にする必要があります。議論が盛り上がって、もう少し深掘りして議論したいと思ったとしても、10分以上かけることはできません。他の学生に不公平になってしまうからです。

今、世界中で今後のAIの取り扱いについて議論がなされていますが、教育・研究分野でも、これからまだまだ議論が必要です。私も、自分自身でもっとAIのことを勉強して、ポジティブに教育・研究に活かせられればと思います。


今年もたくさん学生と学びました(Photo:Hitomi Nakanishi)

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