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今日は学費のお話をしてみたいと思います。
日本の大学とオーストラリアを含めた欧米系の大学の学費の差がどんどん広がってきています。こうした中、東京大学が「授業料の値上げを検討する」と報道して、大きな波紋を呼びました。これに関して、つい先日、東大側が検討状況についてホームページで説明をしています。

日本の国立大学の授業料は、​​​​省令で年53万5800円を標準額とし、2割高い64万2960円までの増額を認めています(日本経済新聞、2024年3月4日付 記事)。この、日経新聞の記事は、この4月から自由化し、留学生向けの学費は上限を撤廃すると伝えています。日本では国内学生と留学生の費用がほぼ同水準ですが、世界各国の大学では、国内学生と留学生の学費には大きな差があります。
「経済協力開発機構(OECD)によると、国内学生との授業料の差は米国約1.5倍、カナダは約2倍。機能的な学生寮や留学生支援の専門スタッフなどを整え、授業料が高くても優秀な学生を集めている。」
これは、当大学でもこの通りです。当大学では、国内の学生は、その学生の家庭状況などにより違いますが、年間100万円はかからない程度だと思います(そして、国の支援制度があります)。ただ、留学生は、例えば建築コースだと、2024年の学費は$36,800 per year(今日の為替レートで約380万円)です。これでも、オーストラリアはアメリカやイギリスに比べると安いと言われています。

そういえばイェール大の成田先生がこんなツイートをされていましたね・・・

私が客員研究員をしているイギリスのUniversity College London もこんなものだと思います(来月行くので聞いておきます)

そして、留学ですから、寮費や生活費も当然学費にプラスの費用としてかかってきますし、生活コストは日本より高いです。概算で言うと、オーストラリアの大学への留学には年間約600万円はかかると思ってちょうど良いかと思います(海外留学保険料は除く)。これが、学部で3−4年、修士まで入れるとプラス2年ですし、学費は年々増加傾向にあります。また、医療系のコースですと、学費はさらに高くなります。

日本のトップの大学で、年間約54万円というのは本当に安すぎるのです。質の良い教育が誰でも受けられる世界が最も望ましいことですが、現代は大学も資本主義に組み込まれています。それ故、教育にはお金がかかります。良い施設の維持、教育コンテンツの開発及び教育インフラの維持、優秀な講師陣・スタッフを揃えるのには、それなりの費用がかかりますし、大学も経営は決して楽な訳ではありません。そして、教員の給料も日本の大学と欧米系の大学ではどんどん格差が広がっています。教員も、それぞれの事情がありますから、報酬面でも条件の良いところからオファーがくれば、そこを選ぶ人の方が大半です。

日本の大学は、少子化、良質な教員・研究者の獲得問題など、多くの課題を抱えています。授業料の改定は、質の高い教育・研究を維持するためには、やむを得ないことのように思えますし、何よりも、この低水準の費用がこれまで据え置かれてきたこと自体が、世界的には異例です。経済的に困難な学生さんたちの支援は必須ですが、払える方々には相応の額を払っていただき、質を高めていくことにシフトしなければいけない時期だと思います。

*トップの写真は当大学のキャンパスにいるカンガルーです。留学すれば、それぞれの土地の風土の違いも自然に学べます。

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