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映画を英語でレビュー#39 きっと、うまくいく 3 Idiots (2009)

インド発の絶対絶対人生に1度は見るべき名作

原題の意味は「3人のバカ」

タイトルにもある「3人のバカ」とは、ファルハーン、ラージュー、ランチョー。彼らは大学で出会ってから大親友になりました。この3人について紹介します。

ファルハーン
男の子として生まれたファルハーンは、生まれた瞬間から父親に、エンジニアになるという使命を与えられます。しかし、彼が本当になりたいのはカメラマン。でも父親はそんな夢を応援するはずもなく、エンジニアになるための教育を徹底し、その結果ファルハーンは、晴れて(?)インド屈指の難関工科大学ICEに入学します。

ラージュー
彼はファルハーンとは違い、本当にエンジニアになりたくてICEに入学しましたが、いつも何かに怯え、何でも神頼みにすがる学生。
実家はとても貧しく、落第する余裕がないため、テスト前は特に神頼み。

ランチョー
好奇心の塊で、教科書通りの勉強というよりは、学んだことを生かして、そこから実験をしてさらに学びを深めることが大好き。この3人の中で一番勉強を楽しんでいる。
教科書通りの勉強をせず、また、教科書通りの勉強に対して疑問を持っているため、頻繁に教授、そして学長のヴィールーと揉めている。
テストは毎回成績トップ。

この映画は、ランチョーを中心に教育の在り方について、私たちに疑問を投げかけてきます。

映画の冒頭、インドの教育に関する社会問題を象徴する事件が発生します。
大学の授業のやり方にいつも疑問を抱え、教授、学長に嫌われているランチョーですが、彼のような学生がもう一人いました。
彼の名は、ジョイ・ロボ。4年生のジョイ・ロボは課題の提出が遅れたために、落第してしまいます。エンジニアが大好きなジョイ・ロボは、勉強のプレッシャーに追い詰められて、自殺してしまいます。

インドでは才能あふれる学生が、「点数を取るための勉強」のプレッシャーに押しつぶされて自殺してしまうということが多発している、とランチョーは学長に訴えます。
何のために勉強するのか?
テストでいい点を取って良い大学に行って、そこでさらに良い点を取って
良い会社に入るため?

勉強=テストで良い点を取ること

それで良いのか?

この映画はこの疑問をずっと観客に投げかけてきます。

この映画が面白いのは、教育問題と学生の自殺というかなり重いテーマを取り扱っているにもかかわらず、とても見やすい、という所。

なぜ見やすいのか?

それは、この映画がインド映画、という所がポイントだと思います。
私はあまりインド映画は見たことがないのですが、インド映画の印象といえば、ダンスと歌が多用されていることです。

この映画も例にもれず、何度も歌やダンスのシーンが現れます。

でも、ミュージカル映画は苦手、、、と思う人もいるかもしれませんが、
心配無用です!

この映画はミュージカルみたいに、歌でセリフを表現するのではなく、どちらかというと、歌とダンスが、映画のブレイク(休憩)みたいに感じるので、重いテーマでも、心が軽くなる、という不思議な作品なのです。

見やすい理由のもう一つは、喜怒哀楽がとても分かりやすく描かれているところです。笑わせるシーン、悲しむシーン、怒りのシーン、それらが非常にわかりやすいので、考察が苦手、という人でも、十分に楽しめる映画です。
そして、分かりやすい反面、この映画の登場人物に完全な悪、というキャラクターはいません。一見、完全悪に見える学長でさえも、観客が同情してしまう、そんな深いキャラクター設定もまた、この映画の魅力の一つだと思います。


どの年代の人にも刺さる映画


この映画は約3時間と「タイタニック」並みの長さです。
最初私はこの長さ故に、見るのをずっと躊躇していました。
この映画は、映画好きの間では結構有名な作品なのですが、私みたいに長さがネックになって見ていない人もいると思います。

ですが!もし3時間という長さが理由で見ていないのであれば、ぜひ、ぜひ、ぜひ!この映画を一度見てほしいです。

「教育」がテーマなので、現役学生の方にはもちろんですが、もう学校を卒業して社会人になった人、今子育て真っ盛りの人、様々な世代の方々の心に刺さるものがきっとあると思います。

そのくらいこの映画が伝えようとしているテーマは普遍的なものだと思います。

人生生きていれば何とかなる!

この映画では、ジョイ・ロボだけでなく、もう一人、とある学生が自殺を試みるシーンがあります。

ちなみにその学生は親友のおかげで一命をとりとめ、立派に社会人となります。自殺を試みたとき、その学生は八方塞がりな状態になり、自分が死ぬことでしか、問題を解決することはできないと思い込んでいました。

学生にとって、親、友人、学校の成績というのは、自分の世界の全てであるように感じることがあると思います。一つの道が閉ざされたら、全てが終わりのように感じる気持ち、感じたことがある人もいるのではないでしょうか?
私は、今でもそうなる時があります。もう学生ではないですが、日々の生活に追われ、自分の心の声を無視することに慣れてしまった結果、今自分がいる世界が全てのように感じ、その世界に生きがいを見つけられなくなって、もう死んでしまいたい、と思ったことが何度かありました。そのたびに私は家族や友達に支えられ、少しずつ自分と向き合えるようになってきました。周りの人からしたら、私はきっとすごく恵まれていて幸せに見えていたかもしれません。でも、その人の苦しみ、というのは、その人本人にしか分からないものだと思います。だからこそ、苦しんでいる人をむやみに励ますのではなく、「話を聞く、様子を見る」ということがとても大事だと思います。

この映画で自殺未遂した学生は、家族、友達の支えを得て、初めて自分と向き合い、外の世界へ踏み出すことが出来ました。

そして社会人になった彼は、学生の頃とは全く違い、とても生き生きとしています。

All is well!

ランチョーの口癖の一つに、「Aal izz well.」というのがあります。
これは、英語で All is well.つまり、「何も問題ない。すべては順調だ。」という意味です。

このAll is well.はこの映画のkey phraseだと思います。

皆さんも、辛いときや、何となく前に進めていない、と感じるとき、

All is wel!!!

と口ずさんでみてはいかがでしょうか?
きっと心が軽くなると思います。


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