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[DX事例55]AIで食品加工・生産技術力を向上し、人々の豊かな食生活と健康に貢献したい!_株式会社ニチレイ

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は加工食品業界からです。ニチレイフーズなどの加工食品会社を傘下に持つ株式会社ニチレイの食品加工・生産のDXです。


多品種少量生産の食品工場の生産計画をAIが自動立案!ニチレイのDX事例

ニチレイは食にまつわる様々な事業を行っており、大きく「加工食品事業」「低音物流事業」「水産・畜産事業」「バイオサイエンス事業」とあります。

食品業界において、代替肉などの新興勢力の参入や個人の嗜好に合わせた多品種少量生産のニーズは依然として高まっており、現場の負担が増えてきている状態です。今回は生産現場の効率化や人手不足対応のDX事例をご紹介します。


①生産品目や納期を情報をもとにAIが自動で生産計画を立案「最適生産・要員計画自動立案システム」
冒頭でも記載しましたが食品加工における生産工場は、多品種少量生産に対応するため製品別の工場や複数の生産ライン、多種多様な材料の組み合わせで生産されています。そのため、工場の生産計画を考えることが大変難しい業務となっていました。これ以外にも、原材料の手配や要員の配置計画、残業時間等の法令対応の考慮もあり、生産計画を作るのは熟練者の「勘と経験」を持ってしても限界がありました。

そこでニチレイフーズでは日立との共創を通じ、AIを活用した生産計画および要員計画の自動立案システム「最適生産・要員計画自動立案システム」を開発しました。

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ニチレイフーズ「ニチレイフーズと日立が協創 AI技術を活用した、食品工場の「最適生産・要員計画自動立案システム」本格稼働へ 熟練者の計画立案を再現・進化させ、需要変化に即応する生産体制の構築と働き方改革をめざす」より抜粋


最適生産・要員計画自動立案システムでは、「生産ラインや生産費目」「納期やコスト」「作業者のスキルや勤務シフト」「法改正等のデータ」をインプットすることでAIによる最適な生産計画と要員計画を作り出すことができます。パターンとしては16兆通りもある組み合わせの中から自動立案するとのことで、従来より作業者の負担が10分の1に削減でき、余剰在庫の削減も実現することができたとのことです。


②AIが生産工場における目視の点検業務を自動化「原材料自動選別技術」「賞味期限読取AIソリューション」
こちらでは2つの事例を紹介します。ニチレイフーズでは工場内の目視点検業務(どうしても人でないとできないものの、作業自体は定型作業)の効率化を行っています。今回の取り組みでは2018年似開発した「鶏肉などの原材料の異物の混入チェック」と「庫内の商品に印字された賞味期限の読取りとシステムへの入力作業」を自動化しています。

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上.株式会社ニチレイ「ニチレイグループ統合レポート2020」
下.株式会社ニチレイロジグループ「タブレット検品に賞味期限読取AIソリューションを導入」より抜粋

上図の写真である「原材料自動選別技術」では、金属探知、X線、赤外線チェックなどの選別チェックをしていますが、それらの検査では判別がしづらい血合いや、羽などの異物チェックをAIが実行します。開発当時の性能は、従来比で1.5倍の異物の除去率、処理スピードも約4倍となりました。

また、下の写真である「賞味期限読取りソリューション」では、商品の品質管理工場のために目視による賞味期限のチェックとシステム入力を行っていましたが、この作業をAIが自動スキャンをします。読取り精度は93%、読取時間も2秒という高速処理で十分実用に耐えるとのことです。

どちらも「ITやシステムでは精度が悪く、人がどうしても行わないと行けないが手間がかかる定型作業」でしたが、こちらをAIが代行することで作業効率化するとともに、人手不足の解消にも繋がりました。


DXと経営戦略の関連性について

ニチレイは長期経営目標「2030年の姿」の実現に向け、ニチレイグループが取り組むべき重要事項(マテリアリティ)を策定しています。

その中の一つに「食品加工・生産技術力の強化と低音物流サービスの高度化」を挙げており、今回のDX事例と関連しています。

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株式会社ニチレイ「ニチレイグループ統合レポート2020」より抜粋

顧客だけでなく、社会全体としても豊かな食生活に対するニーズはますます高まり、多様化しています。ニチレイはこれまでに培ってきた生産技術力やノウハウを使うだけではなく、AI・IoT・自動運転・ロボットなど新たな技術力を身に着けようとしています。

これらIT技術活用の目的は生産性向上を図るだけではありません。ニチレイは新しい価値の想像や環境社会の課題解決を実現する鍵は人材にあるとしており、従業員一人ひとりが働きがいを持って業務に専念できる環境を作りだそうとしています。

ニチレイは新しい技術を取り入れながら同社の目指す2030年の姿「人々の豊かな食生活と健康に貢献する」という目標を達成するため、活動を続けています。


まとめ

いかがでしたでしょうか? DX事例では紹介していませんでしたが、ニチレイは冷蔵倉庫内の荷物運搬を行うフォークリフトの無人運転の実証実験も進めています。タブレット内で無人フォークリフトの操作ができるということで、寒い倉庫内の作業も減らすことができて従業員への労働安全衛生の向上を図るという狙いがあるそうです。

今回は、以前ドンキの記事で書いた熟練従業員の「勘と経験」による業務をAIに代替させる話と似ていたと思います。現在のIT技術は高度化していますが、依然として「どうしても人がやらないといけない業務」はあります
いつも決まった作業をする定型作業だが、人でないと判断が難しいため有人で行っている業務というものがAIで代替できるようになってきました。もちろん熟練者の精度に及ばない場合もありますが、人手不足の現在において「どうしても人がやらないといけない業務」を減らすことができるのは大きなメリットだと思います。

IT技術を活用すれば、今まで人が行っていた”作業系”の業務を自動化して、手の空いた人材は会社の成長のために”考える”業務に配置転換していくことも可能でしょう。皆さんの会社も自動化しづらい業務を自動化するための方法としてIT技術が使えないか探してみてくださいね♪
タナショー


参考にさせていただいた情報
株式会社ニチレイHP
https://www.nichirei.co.jp
株式会社ニチレイ「ニチレイグループ統合レポート2020」
https://www.nichirei.co.jp/sites/default/files/inline-images/ir/integrated/pdf/ngir2020_all.pdf
株式会社ニチレイフーズ「ニチレイフーズと日立が協創 AI技術を活用した、食品工場の「最適生産・要員計画自動立案システム」本格稼働へ 熟練者の計画立案を再現・進化させ、需要変化に即応する生産体制の構築と働き方改革をめざす」
https://www.nichireifoods.co.jp/news/2020/info_id8338/
株式会社ニチレイフーズ「人工知能を使用した原料選別技術を共同開発~冷凍食品の原料品質が飛躍的に向上~」
https://www.nichireifoods.co.jp/news/2018/info_id5715/
株式会社ニチレイロジグループ「タブレット検品に賞味期限読取AIソリューションを導入」
https://www.nichirei-logi.co.jp/news/2020/20200713.html
日本経済新聞「ニチレイ、16兆のデータ駆使 5分で冷食の生産計画」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC14CCA0U1A710C2000000/

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