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ドラッグストア店内にAIカメラを張り巡らせ顧客動線を完全把握!?〜DX事例2_サツドラHD〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。
このnoteでは経営者にITを身近に感じてもらうための記事や、IT活用のヒント、経営者へのお役に立ちそうな記事をお届けしていきます。

DXの事例第2弾は、北海道を拠点に約200店舗のドラッグストアを展開、北海道で使えるポイントカード「EZOCA」やPOS、AI事業などの複数グループ会社を展開する「サツドラホールディングス株式会社(サツドラHD)」のAIカメラを活用したDXについてです。

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AIカメラでドラッグストア店舗をWeb化?DXの内容

売り場面積36坪。東京都内のスーパー並みのドラッグストアー店内に約100台のAIカメラが張り巡らされている。2018年10月のサツドラ(サッポロドラッグストアー)月寒西1条店を皮切りに、2019年9月までに3店舗展開している、AIカメラを使った店舗となります。

AIカメラを使うことで、店舗の売上または運営にどんなメリットがあるのでしょうか?それはAIカメラで顧客の属性や動線を把握するという、いわゆる「店舗のWeb化」です。
Web上では会員登録やCookieなどの技術を使って、「どんな性別・年齢の人」が「どれくらいの頻度」で「どの商品を買ったか」などの顧客情報*が分かりますが、それと同じようにリアル店内での顧客の動きを全て見える化したのが今回のAIカメラを使ったDX施策なのです。
*ここでいう顧客情報とは、個人情報を含まないレベルの顧客属性情報です。顧客が使用しているデバイスのプライバシー設定などで取得できない場合もあります。

今回の施策によるメリットです。
①POSやポイントカードでは読み解けなかった顧客比率を解明し店舗施策を改善
店内はサツドラHDが共通ポイントカード「EZOCA」が利用できます。従来はEZOCAの利用情報から店内顧客の男女比率が3対7ということが分かったため、女性向けの品揃えを重視してきました。しかし、AIカメラによる男女比を見たところ実は男女比率は5対5と同じ比率であることを突き止めました。男性はEZOCAをあまり利用しなかったのでこの傾向が見抜けなかったのですが、今後は男性向けの品揃えも充実するよう方針転換をしました。
このようにAIカメラの導入により、実際の顧客属性に応じた店舗施策を推進することが可能となりました。

②顧客の動線を完全把握
店内に張り巡らされたAIカメラを駆使することで、顧客動線を把握できたり、手に取った商品を戻したか実際に購入したか(カゴに入れたか)なども把握できるようになりました。これにより動線を稼げる店舗レイアウトや商品の配置などを試行錯誤して最適な解を求める、いわゆる「ABテスト」と呼ばれるテスト手法がリアル店舗で実施できるようになりました。

③スタッフ就労状況チェックなどの業務効率モニタリング
AIカメラの判定は、顧客だけでなくスタッフの判定も可能です。そのため、スタッフの品出し状況や顧客との案内などのモニタリングができるようになり、品出しなどに時間がかかりすぎて接客ができていないなど、スタッフ人数が適正かどうかの判断などもできるようになりました。

01.AIカメラのメリット


(注意)
AIカメラですが、先ほどのWebの解説でもありましたが、AIカメラは個人情報を取得しないように細心の注意が払われています。
AIカメラ内で画像認識を行い、年齢や性別などの画像判定を実施。カメラで撮影した顔ではなく、これらの判定結果の情報のみをクラウドシステムに送信する仕組みとしているので、個人をできるかぎり特定しない形でデータを蓄える配慮をしています。


サツドラHDのミッション・ビジョンとAIカメラの整合性について

前回の洋服の青山のDX記事でもやりましたが、今回もサツドラHDのミッション・ビジョンとAIカメラによるDX試作の整合性について見ていきましょう。

02.ミッションビジョンとの整合性

2019年5月の決算説明会にて、2016年度〜2020年度の中期経営計画の成長戦略に「デジタルトランスフォーメーションの推進」が追加されており、ここでの施策としてAIカメラによるDXを大々的に公表しています。サツドラHDの代表取締役社長である富山浩樹氏自身がDX推進の先頭に立ち、IT活用による「小売業のあり方・仕組みのアップデート」に向け、精力的に動いているのが各種記事や書籍から読み取れます。

また、ミッション・ビジョンとAIカメラによる具体的なつながりは薄いのですが、ビジョンにある「地域コネクティッドビジネス」を実現するための要素技術として、AIカメラソリューションや自社サービスであるEZOCA、POSシステム等を組み合わせたプラットフォーム化を進めています。
サツドラHDは2020年5月期において、コロナ禍による直撃を受けやすい小売業にもかかわらずDX含めた各種テコ入れにより、売上含めた利益項目全てにおいて増収増益を達成しています。


まとめ

今回の取り組みによるAS-ISとTO-BEを見ていきましょう。

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今回のDXの取り組みにより、リアル店舗における「サンプリングではない生データ」としての顧客属性や動向をリアルタイムで把握することができるようになりました。Web上で行っていたABテストなどの手法をリアル店舗にも適用することで「店舗のWeb化」、「見える化」というものを実現することができ、真に顧客が求めているサービスやニーズを掴みやすくなりました。
また、AIカメラを顧客ではなく、店舗スタッフのモニタリングにも使うことで店舗運営のマネジメントの最適化、店舗スタッフも必要最低限に抑えられることから、DXの一番のメリットであるレバレッジの効いた企業規模の拡大も実施しやすい状態であるといえます。

(補足)
AIカメラソリューションの取り組みですが、最近では入り口付近にAIカメラとモニタを用意し、AIカメラによるマスク判定・体温測定を行うことでマスク着用を促したり、着用チェックを自動で行うなどの面白いサービス提供もしています。これにより、コロナ対応による人的コスト負担を極力抑えることが可能です。IT活用は無限大ですね♩

以上、サツドラHDの「AIカメラ」についてのDX事例紹介でした。次回も楽しみにしていただければと思います。

タナショー


参考にさせていただいた情報
サツドラホールディング株式会社
https://satudora-hd.co.jp
サツドラホールディング株式会社「2019年5月期決算説明会」
http://daiwair.webcdn.stream.ne.jp/www11/daiwair/qlviewer/pdf/1907163544jy04ksnbd8.pdf
サツドラHDグループ会社 AIカメラソリューション「AWL」
https://awl.co.jp/services/
note記事「「AIカメラでファクトベースでのマーケティングを実現」サツドラホールディングス富山浩樹氏×西内啓対談 Vol.3」
https://blog.dtvcl.com/n/n3a6ff973d058
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