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DXなしに「モノ」から「コト」への変革はシンドい?〜DXの必要性〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。
このnoteでは経営者にITを身近に感じてもらうための記事や、IT活用のヒント、経営者へのお役に立ちそうな記事をお届けしていきます。

今回からDXについての記事を書いていきます。色々書けそうですが、ひとまず2部作(または3部作)でお送りしていきます。今回はなぜDXが必要かについてお話していきます。

DXとは何か?

DXはデジタルトランスフォーメーション、「デジタルによる変革」と訳されますが、そもそもDXとは何なのか?という問いに対して様々な考えがあります。

まずは提唱者ならびに簡単な歴史を追っていきましょう。
①2004年:エリック・ストルターマン(ウメオ大学)
デジタル・テクノロジーの発展によって、社会や経営の仕組み、人々の価値観やライフ・スタイルが大きく変化し、社会システムの改善や生活の質の向上がすすむという「社会現象」を指した概念として提唱されました。
②2010年以降:ガートナー/マイケル・ウイード(IMD教授)
デジタル・テクノロジーの進展により、産業構造や競争原理が変化し、適応できなければ事業継続が困難であると警鐘。自社のビジネス・モデル、組織や体制の再定義を行い、「企業の文化や体質を変革する」手段としてDXの必要性を説いた。
③2018年:経済産業省「DXレポート」
老朽化したレガシー・システムや硬直化した組織、経営意識といった「変革の足かせとなる課題を克服する活動」としてDXの必要性を説いています。※これらの課題を払拭しなければ、変革は難しいという問題提起も含む。

01.DXとは

これらの変遷から、DXは企業経営を存続させるために急ぎ取り組まなければならない必須課題のように読み取れますが、果たして本当に喫緊で取り組む必要性があるのでしょうか?DXのように大きな概念というのはとにかく「ふわっ」としているので何となく分かったような気になってしまいがちです。

改めてDXとは何なのか?なぜ必要なのか?という問いですが、様々な回答や必要性を説いてある書籍やサイトはたくさんあるのですが、今回の記事はそれらに触れず、タイトルのように「モノ」から「コト」への変革はシンドいのでDXを実施するのがオススメ、という観点で説明していきたいと思います。


「モノ」から「コト」へ サービス主体のビジネスモデルへの転換は「顧客目線」がキーワード

主に製造業などで使われますが、製造した製品を販売して料金を稼ぐのではなく、製品を通して得られる「サービス」を提供し、サービス利用料金を稼ぐビジネスモデルを「サービタイゼーション」と表現したりします。

製造業に限らず、この「サービスを提供すること」の重要性は理解いただけるかと思います。消費者はモノを買ことではなく、そのモノを使って体験したことに価値を感じる、という考えです。この考えが現在の製品開発・サービス開発を考える上で極めて重要な要素となっており、あらゆる領域で顧客目線での対応が求められていきます。

02.サブスク3つのポイント


顧客が求める価値を「サービスを通して得られる良質な経験」と定め、その価値を高めるために顧客と共創していく概念を「サービス・ドミナント・ロジック」といいます。(反対に従来の考えがグッズ・ドミナント・ロジック)
では、サービス・ドミナント・ロジックを実現するためには、どんな対応・体制にしていけばいいでしょうか?
分かりやすい形で例えますが、従来の製品を売る場合、「製品を作る」「販売する」「製品寿命が来るまでに次の製品を開発する」という比較的長期スパンのサイクルとなりますが、サービス・ドミナント・ロジックはサービス主体のビジネスモデルなので、サービスの価値を高めるために提供期間中にサービス改善を何度も繰り返していくことが求められます。

03.モデルの転換

サービスを改善するということは、サービス自体の再設計や再開発が必要になるということであり、それに併せてマーケティング対応やサポート体制も変化していくことが必要になります。これを見ると、従来の方式を一変して、いきなりサービス主体のビジネスモデルに事業転換するのはとてもシンドいことだと思いませんか?なぜなら社員がついていけません。


サービス主体のビジネスモデルへの転換に社員がついていけない。だからこそIT活用(=DXの必要性)

前章の続きとなりますが、サービス主体のビジネスモデルに転換すると、継続的かつ短期間でのサービス改善を求められるため、それに付随して社員の作業量が増えてしまいます。また、サービス主体のビジネスモデルに転換してしまうと、KPIがサービス品質やユーザの声を重要視したものに変わっていきますので、経営者としてもクレーム対応やニーズに即応した改善サイクルの短縮を強く求めてしまいがちです。
最初は気合で何とか対応していた社員も、サービス改善のサイクルの繰り返しや、サービス規模が拡大していく中で、いつかは疲れ果て、ついていけなくなります。

そこでITの活用です。IT活用で上記の課題を解決しましょう。
①繰り返しの作業や、簡単な作業をITに置き換える
②簡単な判断を必要とする作業をITに置き換える
③人の作業がどうしても必要な業務は、ITに置き換えられるように業務自体を変える。無駄な作業がなくなるように業務プロセスを見直す

ここまではIT活用の身近な例で、例えばSaas製品を導入すれば実現するレベルでもあります。更に踏み込んでみましょう。
①人が介在する業務の徹底的な排除
例:対面での販売からWeb上での販売中心に切り替える。マーケティングもシナリオを自動実行すれば完結するようなシステムを組み上げ、導入する。これらの対応でマーケティング業務は、「シナリオ実行状況の監視」「シナリオのメンテナンス」は人間が行うが、それ以外は全てITで自動完結させる。
②データ活用によるニーズ把握とサービス価値の向上
以前の記事でデータ分析基盤の事例を紹介しましたが、超大規模データを採取・活用することにより、例えば今日時点の売れ行きやニーズを瞬時に把握してサービス内容をクイックに変更したり、顧客の特性に併せたレコメンドをリアルタイムで表示することも可能となり、サービス価値の増強ができます。ここも、人の作業が極力介在しないように意識することが重要。
③作業のなくなった人の配置転換、組織体制の変更、人事評価の変更
ここまで業務を大幅に変更していくと、作業のなくなった人材が少なからず発生しますので配置転換や、組織体制の変更を行っていきます。主にサービスの運用状況をチェックしたり、サービス価値を向上するための新たな活動に割り当てることが望ましいでしょう。また人事評価についても従来の販売実績などから、サービスの質や顧客体験などの定量的に表せないものを軸に評価していくことになりますので、評価方法の見直しも必要になっていきます。

04.変遷

まとめ

このように最適なサービス提供を実現するために、「IT活用だけでなく」人も組織さえも変えていくことがDXの本質だと私は思っています。もちろん実現には多くのデメリットもあり困難な道のりなのですが、実現が叶えばサービスの継続改善だけでなく、サービス内容を短期間で大幅に変更できたり、現在の人的コストのままサービス規模を拡大(スケーリング)しやすいという大きなメリットがあります。
つまり、DXに取り組むことでレバレッジの効いた成長が可能な「強い組織(=仕組み)」を創ることができます。ますます多様化、競争激化する市場を勝ち残っていくために、きちんとした目的を持ってDXを実行していくことの意義がここにあると思っています。


今回は以上となります。いかがでしたでしょうか?
長編になってしまいましたが、次回も楽しみにしていただければ嬉しいです♪


参考にさせていただいた情報
トレノケート「最新ITトレンド丸わかり 2020年版 〜DX時代のビジネス〜」
https://www.trainocate.co.jp/elearning/elearning_details.aspx?code=ENX0194G
斎藤昌義「図解 コレ1枚でわかる最新ITトレンド」
内山悟志「これからのDX<デジタルトランスフォーメーション>」
日経ETECH「攻めと守りで変革を実現 DX最前線」

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