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「顧客データ」ではなく「個客」のデータ分析から、一人ひとりに合ったユーザ体験を提供したい!〜DX事例35_サントリーホールディングス株式会社〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は飲料水です。アルコール飲料や清涼飲料水の販売を行っており、個人的にとても好きなコーポレートメッセージ「水と生きる」が代表的な、サントリーホールディングス株式会社のDXです。


「顧客」ではなく「個客」の価値を最大化するためのデータ活用とは

サントリーは山崎、白州などの有名ウィスキーを代表とするアルコール飲料や、特茶、黒烏龍茶などの健康茶を代表とする清涼飲料水が有名です。
そんなサントリーですが近年は国内の飲料市場が頭打ちであること、全国隅々まで自動販売機の販売チャネルがあるものの、その販売も伸び悩んでいる課題がありました。
そんなサントリーはお客様を理解し、一人ひとりに合ったサービスを提供するために、消費者の購買情報、行動情報などの「個客情報」というデータ収集・データ活用に力を入れるとして、下記の取り組みを開始しています。


①POSとAIカメラによるドラッグストア内の”個客行動”をデジタル化

以前の記事で紹介しました株式会社トライアルと共同で行っているプロジェクト「REAIL」という取組みとなります。

コロナ禍の影響によりアルコールの販売も変化が起きており、意外なことに前年度比で売上が伸長しているのはドラッグストアでの販売だそうです。そこでサントリーはドラッグストア「トライアル」において、サントリーのアルコール販売情報を積極的に収集しはじめています。トライアルの店内にはAIカメラが設置されており、顧客の動線やどの商品を手にとったか、ショッピングカートに入れたかなどの情報が取得できます。

更にショッピングカートはカート内の商品を認識し、レジを通さず決済もできるという「スマートショッピングカート」となります。このスマートショッピングカートでは、ポイントカードをスキャンすることで顧客IDを紐付けた状態でのPOS情報(ID-POS)も活用できるため、「誰が、いつ、どこで、何を手にとったか、そして購入したか(それとも購入を辞めて商品を戻したか)」という詳細な情報が得られます。

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株式会社トライアル「メディア向け資料 トライアルのスマートショッピングカート、リテールAIカメラ」より抜粋


ここまではトライアル店内から得られる情報ですが、サントリーは更に独自のシステムを開発し、詳細なデータ分析を行っています。「サントリーリンク」と名付けられたシステムでは、特徴的な機能として2つの分析機能があります。

サントリーリンクで可能なデータ分析
「売上分解表」:購入者の店舗会員・非会員の割合や客単価等を製品・店舗毎に因数分解された表を確認することが出来る。
「購入者の居住地分布図」:店舗と商品を指定すると、購入した顧客がどこに住んでいるのか、顧客単価をヒートマップのように色で表現したマップが見れる。

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これらのデータ分析を活用して、店舗によく来店する顧客層に合わせた商品のラインナップや、在庫管理などを展開することで自社の商品の販売促進に役立てることができます。


②企業の従業員の健康増進を目的としたアプリ「サントリープラス」

こちらの取り組みは以前紹介したタニタの「タニタ健康プログラム」と近しい内容となります。サントリーは医療費増大という企業課題に対して、未病の段階から健康習慣を身に着け予防につなげる取り組みとして「サントリープラス」という健康支援サービスを開始しています。

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サントリーホールディングス株式会社「サントリープラス」より抜粋


スマホアプリ「サントリープラス」をインストールすると、「朝起きて水を一杯飲む」「ゆっくりスクワット」などの無理なく続けられる、かつ低ハードルな健康タスクが表示され、達成したらポイントを貯めることができます。

このポイントは、サントリーの専用自販機(グリーンプラス対応自販機)にて、トクホ飲料に交換することもできます。このグリーンプラス対応自販機は法人企業内に設置するだけでなく、全国の自販機に順次展開予定とのことです。

基本利用料は無料ということで、アプリから提案される健康タスクのように、手軽に利用でき、かつ自動販売機とも連携して自社の飲料水を飲んでもらう機会を増やせる内容となっています。


まとめ

いつも載せている「DXと経営戦略の関連性」については、サントリーの決算資料等でDXに関する記述が乏しかったので割愛させていただきます。

サントリーのDXに関する記事で、「サントリーはモノづくりだけではなく、コトづくりもできる会社だ」という内容がありました。サントリーといえば従来の濃いハイボールに対して、炭酸水の割合を増やしアルコール度数を抑えた「飲みやすいハイボール」を流行らせたり、ハイボールとからあげの組み合わせを「ハイカラ」という名称でCMを出したりしました。
サントリーは時代のニーズに合わせた商品開発や、アルコールの新しい楽しみ方や体験を表現するのが上手いですよね。

モノからコトへ変革する場合、ユーザに対していかに心地よい体験(UX)を提供することが重要になると思います。UXを作り出すには、今回の事例のように顧客に関するデータを詳細に分析する必要がありますが、データ分析は「事前にどのデータを集めるかの検討」や、「データ基盤の構築」など手間やコストがかかりやすい領域です。

企業活動で得られる情報なら何でも集めるのではなく、顧客のニーズを見つけ出すために真に重要な情報は何かをまず検討しておくことが大事だと思います♪
タナショー


参考にさせていただいた情報
サントリーホールディングス株式会社HP
https://www.suntory.co.jp/?ke=hd
サントリーホールディングス株式会社「サントリープラス」
https://www.suntory.co.jp/softdrink/suntoryplus/
サントリーホールディングス株式会社「グリーンプラス」
https://www.suntory.co.jp/softdrink/vendor/greenplus/index.html
日経XTREND「サントリー食品「SUNTORY+」開発の裏側 DXは手段でしかない」
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00388/00008/
IoT「サントリー、個客理解を進めるDX事例を紹介 ーリテールAIセミナー2020 レポート2」
https://iotnews.jp/archives/155022
MONOist「ID-POSだけでは見えなかった「顧客の考え」、サントリー酒類がAIカメラで実現したいこと」
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2009/01/news029.html
MONOist「生き残る鍵は「個客理解」、サントリーが考えるwithコロナ時代のマーケティング」
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2006/10/news050.html

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