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教科で探究学習をする!

総合的な探究の時間が始まり、各学校、学校独自にまた、業者の力を借りながら探究学習を進めていると思います。地域や企業の力を借りながらプロジェクト型の探究学習を行うことの意味を感じている人も多いと思います。

しかし、総探を社会とつなぎ普段は経験できないことを経験させるために行うことはおそらく探究の目的の第一段階にしかすぎません。

総探の目標
自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していく
(平成30年7月総合的な探究の時間指導要領より)

この壮大な目標を達成するためには、総探だけでは到底難しい内容になっています。総探だけの時間で探究学習のやり方から、実際プロジェクトを具体的に進めるのは難しいです。

ではどうするか。できるところからという発想も悪くはないのですが、これからは教科での学習を一部探究型の学習に変えてみるというのは1つの手だと思います。その理由は2つあります。
①生徒や先生が探究学習について学び、探究学習とはどういうものだという時間を作ることができるから
②探究的な学びは知識技能だけでは得ることのできない発展的な理解へとつながり教科の目標も達成できるから

それでは、教科で探究学習を行おうと思うとぶつかる壁があります。
それは、「どうやってやるの?」です。

そこで、今回はこの教科で探究学習をするにあたり、授業のデザインの基本と数学探究の事例を1つ挙げたいと思っています。これは一例であって、こうすべきというものではありません。ぜひ参考にしてもらえればと考えています。

そもそもとして、学校に合った教え方や内容が必要になるので、探究学習をすることで万事オッケーということはないと思います。ご自分の学校ではどうしたらいいのかを考えながらデザインをしてください。

教科における探究学習の基本


習得→理解→活用→意味づけ→探究→行動

教科で探究をするときの流れ
習得→理解→活用→意味づけ→探究→行動
これは、「習得>活用>探究」(※)を発展させたものです。
(※詳しい説明は溝上先生のサイトをリンクしておきます。)
これはとれも便利で有効な流れになるのでぜひ覚えてください。

習得→理解→活用→意味づけ→探究→行動
探究学習を実践するにあたって、私たちは「習得→活用→探究」という基本的な流れをたどります。しかし、この流れをさらに深く掘り下げてみると、各段階の間には重要なプロセスが存在しています。「習得」と「活用」の間には「理解」が、「活用」と「探究」の間には「意味づけ」が位置し、そして「探究」の果てには「行動」が待っています。

はじめに、「習得」の段階です。これは知識や技能を身につけることを意味します。考えを巡らせるためには、まずは基本的な知識や技能が不可欠です。これらがなければ、創造的な思考や周辺的なアイデアに到達することは難しいでしょう。知識や技能を習得することは、探究学習を進める上での第一歩であり、忘れたとしても思い出すことができるようにする必要があります。

次に、「理解」のプロセスです。習得した知識や技能をただ覚えるだけでなく、それが持つ性質や変形の可能性、異なる視点からの見え方を深く理解することが求められます。この深い「理解」を通じて、知識や技能をさまざまな状況に応用できるようになります。これが「活用」へとつながるわけです。

活用した知識や技能を持って新たな問いに挑むのが「探究」の段階です。探究は、単に既存の知識を適用することではなく、それを基に新しいアイデアを生み出し、未知の問題に対して解決策を見つけ出す過程です。ここで重要になるのが、「意味づけ」のプロセスです。活用した結果を自分なりに解釈し、それが自分や社会にどのような影響を与えるのか、どのような価値があるのかを考えることです。この意味づけを通じて、探究学習を進めることで、学んだことがより深く自分のものになり、さらには新たな行動を起こす原動力となります。

「行動」は探究学習の究極の成果です。ここでは、学んだことを実社会で生かすことが求められます。新しい知識や技能、洞察を活用して、実際に何かを創造したり、問題を解決したりします。行動を起こすことで、学びはさらに深まり、自分自身の成長につながるとともに、社会にも貢献することができます。

この「習得→理解→活用→意味づけ→探究→行動」という流れは、従来の学習モデルを大きく進化させたものです。学習者が受動的に知識を吸収するのではなく、能動的に知識を探究し、実生活に適用することを促します。このプロセスを通じて、学習者は単に知識を習得するだけでなく、その知識を使って世界を理解し、より良い未来を創造するための力を養います。

このような探究学習のデザインは、教育現場において学習者のモチベーションを高め、深い学びへと導くために極めて重要です。教師はこのプロセスをサポートし、学習者が各段階を有意義に進められるように指導することが求められます。そのためには、教師自身が探究学習のプロセスを理解し、学習者一人ひとりの興味やニーズに応じて、柔軟に指導計画を調整する能力が必要になります。

探究学習は、知識の習得から始まり、最終的にはその知識を社会に還元する行動につながるプロセスです。この流れを通じて、学習者は自己実現を果たし、同時に社会の発展に貢献することができるのです。

授業例:半導体と数学

授業計画概要

授業計画概要
第1-3コマ: 基礎知識の構築

  • 第1コマ: 半導体の基礎と歴史

    • 半導体の定義、種類、歴史的発展。

    • 必要な数学の演習を行う。

  • 第2コマ: 数学の基礎

    • 半導体に関連する数学の基礎概念(例: 微分方程式、確率論)の紹介。

    • 情報Iとの連携で、データの解析やグラフの作成方法を学習。

  • 第3コマ: 半導体の物理

    • 半導体がどのように機能するか(例: p-n接合、トランジスタの原理)。

    • 数学を用いて半導体の動作原理を説明。

第4-6コマ: 応用と実践

  • 第4コマ: 半導体デバイスと応用

    • 半導体が使われる主なデバイス(CPU、メモリ、センサー)。

    • 日本語で研究論文や記事の要約。

  • 第5コマ: 数学と半導体設計

    • 半導体設計における数学の応用(例: シミュレーション、モデリング)。

  • 第6コマ: ソフトウェアと半導体

    • 半導体テストで使用されるソフトウェアツールの紹介。

    • 情報Iでプログラミングの基本を学習し、簡単なシミュレーションを作成。

第7-9コマ: 探究活動の準備

  • 第7-9コマ: 探究テーマの選定と計画

    • 学生はグループに分かれ、半導体に関する探究テーマを選定。

    • 研究計画の作成、必要な数学や科学の理論の再確認。

    • 日本語や英語での資料収集や情報交換。

第10-12コマ: 探究活動と発表

  • 第10-11コマ: 探究活動

    • 実験、シミュレーション、データ分析等、選んだテーマに沿った活動。

    • 活動中、数学や情報Iの知識を活用して問題を解決。

  • 第12コマ: 成果発表

    • グループごとに研究成果を発表。

    • 英語と国語のスキルを活用して、研究内容をわかりやすく伝える。

これは、地元にある大きな半導体工場の方と授業を計画することが前提です。必要な部分は対面やオンラインで話をしてもらい、内容の理解と授業の展開を行います。必要な部分は大学の先生の監修なども仰ぎながら授業を作っていきます。同じ教科の先生や他教科(特に英語、国語、情報)の先生とどのような授業をしていくか対話をしながら考えていく必要があります。毎時間リフレクションをすることで、学習者自身の授業内容の定着だけでなく、授業者の授業改善もできると思います。予定していた内容の通りに進むことはあまりないかもしれません。柔軟に対応しながら授業を進めていくことが必要だと思います。

以上、教科で探究学習を行う際のヒントになればと思います。

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