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[無料]妊婦さんに対しての鍼灸基礎治療 妊娠初期〜後期編

妊娠中の患者さんを見る機会も多いと思うのですが、私も一端の経産婦として言わせていただきましょう。


妊娠中ってめっちゃめちゃ辛い。(出産・産後も同様だけど)


これ何の拷問??なめとんか???
と 毎日何かしら心身の不定愁訴と子供を抱えながら生きるんですが、何か罪でも犯したんか?と思うくらいヘビーです。
自分の場合はこういう職種だからこそ余計症状に対して敏感になっているのでなんなら500倍くらいのストレスがかかっている。


そういうことを引いてもこのツラさ

激ヤバなのである。


初めて一連を経験して感じた感想は「まあよくこんなの耐えた上で命削って出産した挙句、即 寝ることもままならず子育てに入る」という労働基準法ならひっかかりまくっているヤバさに、正直めちゃ引いている という体感なので(勿論子供が欲いと希望したから皆さんやってるんだと思いますが)
特に男性治療家の方は妊娠出産を残念ながら体験する事ができないからこそ
マジになって受け止めてほしいのでござる。
(あと、お前ら母乳出す以外のことは全部やれ野郎ども、という感想もありますが本編から脱線するので残念ながら割愛)


さて、それではここからが本題です!


■妊婦さんに対しての基本治療


1.妊娠初期

定義として受精後から4ヶ月くらい(0〜13週)の期間までが妊娠初期ですが、この頃は時期にもよりますが患者さん自身が妊娠に気づいていない場合で治療をすることも少なくないと思います。
気をつけて診ておくことに越したことはありません。
個人的には特に妊娠初期から正産期手前までは妊娠時の禁忌穴(三陰交・肩井・合谷など)をあんまり使用したくないですが
主訴が肩凝りや婦人科疾患などでもともと通院していた場合 その穴を使わない事はないと思うので、少しでもいつもと違う症状の訴えや会話の中で違和感があった場合はリスクを避けるという意味でも鑑別していきましょう。(デリケートな事なので聞く時は慎重に)

この時期はまだ比較的腹部は目立たない方が多いので、姿勢が辛くなければ伏臥位での背部の施術が行えます。
主訴への処方穴の他、妊娠時のケア穴で言うと
肝兪・脾兪・胃兪・三焦兪・腎兪・気海兪・大腸兪・関元兪・志室・腰眼など
(いずれも大体2〜3cmくらいまでの刺入)の処方がおすすめです。

腹部への鍼は行ったとしても切皮かほんの少しだけの刺入にして大きく刺激を入れないようにしましょう。(中脘より下は特に)

その他、曲池・内関・足三里・三陰交など良いですが
三陰交に関しては鍼をする場合、刺激過多にならないように細い鍼の使用、鍼をいじらない、刺入も切皮か数ミリ程度を心がけます。


2.禁忌穴

鍼灸師なら誰でも知っている妊娠時禁忌穴といえば
合谷・三陰交・肩井・石門 はマストですね。

以上の4穴はそもそも古典に思いっきり
“おいマジでやめとけよ“
って…堕胎穴 という物騒な名前まで付けて…こわ…

なので基本的に使用しないのが通常ではあるのですが、
三陰交は子宮を♪イイカンジ♪に調整してくれる作用もあります。

なので結論から述べますと、
“刺激量が適切であればそこまで怖がらなくて良い
でもちゃんと慎重にやんないと普通にリスクあるし普通に危ない“

起伏の激しい言い方になりましたが、子宮を持ってる身の体感として
三陰交は刺激が浅めだと調整や鎮痛、刺激が強いと子宮収縮・排出
という個人的実感です。

ほんの一例ですが、例えば生理痛予防や生理前に状態整えたいという時は0〜1番鍼で軽めに・浅めに打つか、めんどくさい時は円皮鍼を置くだけ。
生理初日・二日目、ガッツリ経血出しちゃるわい!の時は1〜2番鍼で雀啄キメて子宮をギョ〜ンギョン動かしています。

妊娠中は子宮収縮させたくないので三陰交などが禁忌穴になると思うのですが
そもそも三陰交に強刺激を加える時って、婦人科疾患が主訴の場合が多いと思います。
女性患者さんが妊娠の有無が不明な状況において基本配穴で三陰交に鍼を打ったとしても、強刺激を与える事は通常であれば無いと思うのでそこまで怖がる必要はないかなと思います。
ただし妊娠がわかっていて悪阻の治療で補脾したい時など(←結構多いケース)三陰交を使用したい場合は0番〜0以下の鍼、もしくは温灸に留めて必要最小限の刺激量から加えてみていきましょう。(使用の際はちゃんと説明しましょう)

刺激量って本当に人によって 全然違うので、基準も無ければその見極めや施術を言葉や文章にするのは難しいです。
私は結構 主訴に関わらずどの新患さんにも緊張します。刺激量わかんないし。どういう主訴とかどういう人とかもわかんないし。
基本的な事にはなりますがめちゃ四診します。(特に問診)
リスクヘッジとして必要最低量から徐々に適量まで上げていくのはおすすめです。


3.安定期〜後期

だいぶお腹も大きくなってくると伏臥位ができなくなるので側臥位で背部などの治療を行っていきます。
一般的にはつわりが落ち着く方が多く、主訴が肩こり・腰痛・むくみなどに変化していくことも多いと思います。

背部では上記で挙げた配穴を継続して用いて構いません。
ただ刺入深度などに気をつけたいので体格等によりけりですが、腰部であれば直刺で2cm前後までにとどめましょう。
また 妊娠中の腰痛の訴えはかなり多いと思います。
その患者さんの場合なぜ腰が痛くなったかの原因を突き止めたらアプローチしていけば良いのですが、必ず診てもらいたいのが臀部・大腿の硬さ張りです。
特にお尻の筋肉がガチガチになってる事が少なくないと思います。
月経前・月経中でも同様に言えるのですが、月経や妊娠期間の時期は臀部の筋肉が締まりに締まりまくります。
指圧していて「なにこれ〜指入んね〜〜(筋肉に)」と笑う事星の数の如し。
また大腿も同様で、この部位の場合は前後左右に張りが出ていたりもあれば、脾経・肝経、内転筋群の内側にだけ反応が出ているなど様々です。

仙腸関節炎に関しては全体のアライメントは勿論、頚椎あたりから下の脊椎を診た方がいいし、下肢前・後面(特に後面)の内側に変な硬結があったりするのでこちらも1つアプローチするポイントになると思います。
ただし仙骨孔付近の経穴は刺激量など注意しながら行いましょう。

何を隠そう自分も尻カタになるタイプなので とにかくお尻は適宜しっかり診て解しましょう。ちなみに私の知り合いの先生は腰痛時の臀部のアプローチだけで60分は使うと言っていました。すごっ。


余談ですが、9ヶ月前後の時の仰臥位のお腹の重さったらないんですわ。
1番楽であるはずの仰向けに殺されそうになるのも めっちゃストレスなのわかれ!!こういう事にもいちいちストレス感じてんだから優しくしろ!オイ!ふざけるな!!
…………ということで 治療時の側臥位の時の頭の枕は高め、抱き枕は直径の大きい円柱型で、膝置きがあるとなお良しです。
よく素性を隠して色んな治療院に行くんですが、こういうベッド周りの気遣いでその治療院の全体レベルがわかるようになってくる…不思議なことに…。
貴方の治療院の設備はいかがですか?
基本ですが(今の時期は消毒も含め)洗濯もこまめにお願いします。妊娠中は特に鼻が利く方多いので。


いかがでしたか?
基本的な事ではありますが とても大事な部分です。
今一度基本を押さえながら妊婦さんのケアに努めましょう。

いただきましたサポートは感謝の舞を踊り祈ったのち、記事制作等に使用予定です。