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売れるネーミング、残るネーミング

2021年初noteです。
今年もよろしくお願い申し上げます。

いっこうに見つからない移転先に新年早々からの時短営業要請、人と羊も一旦お休みをいただくなどまだまだ不透明な見通しですが、皆様と一緒に1年乗り越えられればと思います。

昨年は1年間で51杯の新作らーめんを出しました。
だいたい週1ペース。そのうち1ヶ月は休みで半年は週1のみ営業だったので、実質的には週1以上のペースで新作を出していたことになります。

以下、開店から昨年末までの前商品名(商品名の後の数字は出した回数)


振り返ってみると、時期が進むに連れてネーミングもこなれてきたといいますか、説明調から抽象的な品名になってきたのがわかりました。

2月、3月は
「ひつじのつけアマトリチャーナ」
「アイリッシュシチューの羊咖喱そば」
「ラムレバーのつけめん」
「味噌煮込み羊中華」
など、タイトルだけでおおよそ味の想像がつくものが多かったのが、5月頃から
「羊太夫」
「ティムール担々麺」
「デコのつけめん」
「眼鏡そば」
など、タイトルだけではどんな味なのかさっぱり想像がつかない(自分でも)ものが主流になりました。


これは自然にそうなったわけではなく、実は意識的に説明調にならないよう、短いフレーズになるよう名付けていった結果です。

説明調の商品名は解説を読まずともだいたいの味の想像がつくので大多数のお客様にとっては親切で安心感が持てるのでしょう。
説明調と抽象的なメニューの2つが列んでいたら間違いなく説明調のほうが売れます。

ものすごく極端な例ですが2年ほど前、京都の木屋町にある「(屋号、看板はございません)」という本当に屋号も看板もない店をオマージュしたつけめんを作り、商品名もリスペクトを込めて「(あつもり、少なめはございません)」にして出したところさっぱり売れず(名前がわかりにくいぶん解説文はしっかり書きましたが)、翌日「京都風濃厚魚介つけめん」に変えたところ瞬殺で売り切れた苦い経験があります。

説明調のほうが売れやすいのにそうしないのは、どういうものか想像がつかないワクワク感を大事にしたいからです。
説明調タイトルが醸し出す安心感は退屈感、抽象的タイトルの不安感はワクワク感とそれぞれ隣り合わせになっています。
安心感のなさから避ける人を逃してでもワクワク感や新しさを求める人に届けたい。そうすることで確実にフィットする人に、より刺激的に新しい味を楽しんでもらえると考えています。

また説明調は注文前のその時はわかりやすいのですが、ワンフレーズではないぶん記憶に残りにくいとも言えます。
例えば「魚介と地鶏の醤油らぁ麺」だと「鶏と煮干しのしょうゆらーめん」として記憶されたりとか。また特別な食材を用いない限り他店との差別化もやりづらい。
でも「眼鏡そば」「羊太夫」なら一発で記憶に残るのではと見込みました。

説明調より想像調のほうが記憶に残るのは他の料理を例にすればわかりやすいかと思います。

「パルミジャーノクリームと生卵のパスタ」よりも「カルボナーラ」、
「豆腐と挽肉の辛味噌煮」よりも「麻婆豆腐」、
「野菜とひじきの揚げ豆腐」より「がんもどき」、
というように内容のわかりやすさよりもワンフレーズで想像力に委ねるほうが圧倒的に記憶に残ります。

和菓子なんか説明調はほぼないですよね。
「大福」「赤福」「八ツ橋」…どれもタイトルから全く想像つかない上に別に大きくも赤くも橋っぽくもない。

つまり、説明調は短期的には売れますが長期的に見れば抽象的な品名のほうが記憶に残り、歴史に残ると言えます。

人と羊も新しい味を追究して新しい味を求める方々に提供し、記憶に残してもらえるような商品を作っていきたいので、わかりづらいかもしれませんが今後も抽象的な商品名を続けていく所存です。

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さて昨年は今までになく世界が目まぐるしく変わった1年でした。
2月頃には全く想像つかなかった展開となり、私達の生活も大きく変わり続けています。

刻一刻と変わり続ける現代ではもはや年単位で計画を立てることがナンセンスであるのかもしれません。

ですからもっと変化に対応できるよう頭を柔軟にし、1年ごとに目標を立てるのはやめる。

これが私の今年の目標です。

店主の勉強代になります。何かしらのカタチで還元できると思いますので魔が差したらサポートおねがいします。